ヘラクレスそのものを素材に使ったものとしては、名前そのものがヘラクレ スをフランス語読みしたエルキュール・ポワロが活躍する、クリスティの 「ヘラクレスの冒険」(ハヤカワミステリー文庫)があります。ヘラクレスが 成し遂げた12の難事に合わせてポワロが12の難事件を解決していくという趣 向のものです。
また、ヘラクレスを題材にした三島由紀夫の「朱雀家の滅亡」もあります。
舞台は太平洋戦争末期の日本になっています。(えー、実は未読なのでこれ
以上解説できません)
ヘラクレス型の物語、つまり一人の主人公が何個か定められた課題に立ち向 かっていく、というタイプの物語としては、ヘラクレスの物語にインスパイ ヤされたものかどうかは別にして、モーリス・ルブランの八点鐘もあります。
青年貴族レニーヌ公爵がヒロインの若い女性オルタンスを助けて8ヶ月間に 8つの事件を解決していくもので、この作品ではアルセーヌ・ルパンの名前 は出てこないのですが、最後にルパンの乳母として有名なヴィクトワールが 出てきますので、それで主人公はやはりルパンであったことが分かる趣向に なっています。(というか、本当は作者はルパンではない人を主人公にした 作品を書きたかったのでしょうが、やはり読者の声に押されて、主人公は実 はルパンであったという落ちにしたのでしょう)
この作品ではHがアルファベットの8番目の文字で、また8という数字がフ
ランス語では huit と呼ばれる、というシンボリズムが使用されています。
Hという字母はフランス語では「アッシュ(hache)」というのですが、この
hache という言葉は「斧」を意味します。これもこの作品では意味深です。