世界の神話(38) ヘラクレス(1)ヘラクレスの生涯

←↑→
推理小説の女王と言われるアガサ・クリスティーが生み出した探偵の中で最 も有名なものはエルキュール・ポワロです。この「エルキュール」という名 前については『ABC殺人事件』の中でネタ明かしがされていますが、実は 「ヘラクレス」から取られたものなのです。今回はこのヘラクレスについて 書いてみましょう。長くなりますので5回に分けてお送りします。

ヘラクレスはゼウスの子供ですが、母親はアルゴスの王女アルクメネです。
彼女は非常に貞操が堅かった為、ゼウスは彼女の夫アムピトリュオンの姿に 変身して彼女と交わり、ヘラクレスが生まれたとされます。彼女は翌日本当 の夫とも交わったので、彼女は父親の違う双子ヘラクレスとイピクレスを産 み落しました。

アルクメネが自分の子供を妊娠したことを知ったゼウスは喜んで今日まさに 生まれるという日に「今日生まれる私の血を引いた子供は偉大な王になるで あろう」と宣言します。がこれを憎々しく思ったヘラは出産の女神エイレイ テュイアに命じて、アルクメネの出産を遅らせる一方、その従兄弟の方を先 に生まれさせます。

このヘラの都合で7ヶ月で生まれてしまった子供が後ヘラクレスの12の難 事の指示をすることになるエウリュステウスです。彼の父はペルセウスの子 供のステネロスであり、彼もまたゼウスの血を引いていたのです。

さて、ヘラはヘラクレスから「偉大なる王」の運命をこのようにして取り上 げただけでは満足せずに、殺してしまおうとして、生後8ヶ月の時に彼の揺 り篭の側に蛇を送りますが、この力強い幼児は近付いて来た蛇を難無く締め 殺してしまいます。

ヘラクレスについて最もよく知られているのは、彼がなしとげた12の難事 です。本来は10個だったのですが、その内2つは難癖を付けられて数に入 れてもらえなかった為、12個になってしまいました。

この12の難事をする羽目になったのもヘラの陰謀で、ヘラがある時ヘラク レスを発狂させることに成功したことがありました。その時、様子がおかし いと思って彼のそばにやってきた、ヘラクレスと最初の妻メガラとの間に生 まれた三人の子供を自分に襲い掛かってくる敵と思って殺してしまったので す。それを見たメガラも驚きと悲しみのあまり死んでしまいました。

正気に戻ったヘラクレスは自分の罪の大きさに悲嘆にくれ、アポロン神殿に 行って、どうすればその罪をつぐなえるかの神託を受けました。その神託が 従兄弟のエウリュステウスの指示に従って、10の難事をなしとげることで した。

この難事は次のものです。

(1)ネメアの獅子を殺すこと (2)ヒュドラを退治すること (3)ケリュネイアの鹿を捕らえること (4)エリュマントスの野猪を捕らえること (5)アウゲイアスの家畜小屋を掃除すること (6)ステュンバリデスを退治すること (7)クレタの牡牛を捕らえること (8)ディオメデスの人喰い馬を捕らえること (9)アマゾンの女王ヒッポリテの帯を手に入れること (10)ヘスペリテスの園の黄金のりんごを手にいれること (11)ゲリュオンの牛をとらえること (12)地獄の番犬ケルベロスを連れてくること

この詳細については、次回以降に書きます。

12の難事をやりとげたヘラクレスはやがてデイアネイラと再婚し、二人の 間には息子のヒュロスが生まれました。

ある時、ヘラクレスはデイアネイラと旅をしていて川を渡りましたが、自分 は一人で渡れるので妻だけ渡し守のネッソスに託して、ヘラクレスは浅瀬の 方に行って渡り始めました。ところがネッソスは美しいデイアネイラを略奪 しようとします。妻の悲鳴に驚いたヘラクレスはかなり遠くの距離にいまし たが、すぐに弓矢をつがえて、矢を放ち、狙い違わずネッソスを射殺します。
この矢にはかつて彼が倒したヒュドラの血が塗ってありました。

矢に倒れたネッソスは自分を倒した矢が猛毒であったことを知ると、これで もしかしたらヘラクレスに復讐ができるかも知れないと考え、いまわの際に デイアネイラにこう告げます。「あなたの美しさにおぼれて悪いことをして しまった。せめてのお詫びに私の血を取っておいてくれ。もし将来あなたの 夫が他の女を好きになった時、その血を夫の着る服に塗ると、あなたの夫は あなたを愛する心を再び取り戻すであろう」 デイアネイラはヘラクレスが 浮気することはないだろうとは思ったものの、念のためその血をとっておき ます。

とろこがところが、ヘラクレスは実際にその後、イオレという娘を好きにな って夢中になり、妻を放っておくようになりました。そこでネッソスの言葉 を思い出したデイアネイラはネッソスの血をヘラクレスの服につけるのです が、その服を着たヘラクレスは皮も身もただれて死んでしまったのです。

あれほど強くて誰もかなわない存在であったヘラクレスを倒したのは皮肉に も彼の妻の嫉妬であり、それを起こさせた自分自身の浮気心でした。自分の 行為で夫が自分の所に戻ってくるどころか死んでしまったのを見てデイアネ イラはショックで倒れ、そのまま自殺してしまいます。

ヘラクレスの死を痛んだゼウスは彼を神の列に加えました。そしてヘラの娘 のヘベと結婚させます。ヘラもヘラクレスが自分の義理の息子になってしま うとそう邪険にもできないので、仕方なく彼にひどいことをするのをやめる ようになりました。

一方エウリュステウスはヘラクレスが死ぬと自分の地位をより安定にするた め、ヘラクレスの息子たちを不意打ちして殺そうとしますが、アルクメネに よって難を逃れ、ヒュロスが彼を逆襲して倒してしまいます。

(1999-08-25)
←↑→



(C)copyright ffortune.net 1995-2016 produced by ffortune and Lumi.
お問い合わせはこちらから