世界の神話(28) ゼウス

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ギリシャ神話におけるゼウスの物語は大きく2つに分けて考えることができ ます。彼がオリュンポスの主神になるまでの物語となった後の物語です。

まず主神になった後の物語ですが、ゼウスという神はまるで、とてつもなく 女癖の悪い男、という感じです。あちらの女をはらませ、こちらの女に手を 出し、彼の毒牙にかかった女性はダナエにイオにセメレにエウロペにレダに レトに、と数えていたらキリがありません。全く何て奴だと言いたくなる所 ですが....

しかしこれは色々な神が権威付けされる為に、或いは民族統合の過程で神様 同士が親戚であることにする為に、ゼウスの子供であることにされたことか ら、こういった話になってきたのではないかと思われます。

従って、そういった物語におけるゼウスというのはむしろ「天」の象徴とい うことになり、ゼウス自身の性格というのは極めて曖昧です。つまりゼウス という神は中核神としての役割が強く、あまり個性を持っていないようにも 思われます。

ではゼウスが神々の王となる過程にはどのようなことがあったのでしょうか。
その物語は普通ガイアから語り始められます。

ガイアは大地そのものであり、神々の母です。ガイアはカオスから生まれた もので、父も母もありません。彼女の兄弟にはエレボス(闇)と二ックス (夜)がいます。ちなみにエレボスとニックスは結婚してアイテル(光)と ヘメラ(昼)を産みます。

ガイアはまず一人で天であるウラノス、海であるポントスたちを産みます。
そして息子であるウラノスと結婚してオケアノスとテテェス、コイオスとボ イベ、ヒュメリオンとティア、そしてクロノスとレアを産みます。

オケアノスとテテェスは結婚してアジア(アジア大陸)やステュクス(三途 の川)を始めとする3000人の娘や、川の神アケロオスなどを産みました。
コイオスとボイベも結婚してアステリアやレトを産みました。ヒュメリオン とティアも結婚してエオス・ヘリオス・セレネの3人を産みます。

またガイアとウラノスの間には3人のキュクロプスと3人のヘカトンケイレ スも生まれました。キュクロプスは一つ目の巨人で雷と稲妻を持っていまし た。ヘカトンケイレスは百の腕と50の頭を持っていました。(後にゼウス が操る稲妻は実はキュクロプスのものである)

さて、天の神ウラノスは長い髭を持ち、高い山の上に座してよく瞑想をして いました。彼は夜ごと母であり妻であるガイアの元を訪問していましたが、 やがてガイアは彼の高慢な態度を嫌うようになってきました。そこで彼女は 息子たちに、誰か父を倒して新しい王にならないかと相談します。すると 一番下の息子クロノスが名乗り出て、母親から鎌をもらいます。

クロノスはウラノスが昼寝をしている所にしのびより、彼の陽根を鎌で切り 落としてしまいます。ウラノスはこの為力を失ってしまい、森へ去って行き ますが、その時クロノスにこう告げます。「お前は父の私を倒して王の地位 を奪い取った。やがてお前自身も同じ運命になるであろう」

なお、この切りとられた陽根は海に落ちて、その泡から美の女神アフロディ ーテが生まれます。また切られた時に大地にこぼれた血からは復讐の三女神 アレクトー・ティシポネ・メガイラが生まれました。

さて、クロノスは父に代って神々の王の地位に付き、姉のレアと結婚します が、ウラノスの最後の言葉が気にかかって仕方がありません。そこで彼は レアが産んだ子供を生まれるや否や呑み込んでしまいます。これを不服に思 ったレアは母のガイアに相談して知恵をさずけられ、闇夜に外で子供を産み、 大きな石を産着に包んで家に戻ります。クロノスはそれと気付かず石を呑み 込みます。

この難を逃れた子供がゼウスで、彼は成長するとレアと協力してクロノスを 倒す為に立ち上がります。彼はまずクロノスの背後にしのびよって、思いっ きり背中をつきとばします。すると彼の口からまず大きな石が飛びだし、更 に飲みこまれていたゼウスの兄や姉たちが飛び出しました。彼等は後に冥界 の王になるハデス、海の神になるポセイドン、大地の神となるデーメーテル、 かまどの神となるヘスティア、そしてゼウスの妻となるヘラの5人です。

ゼウスはこの兄姉たちとともにクロノスに挑みますが、クロノスも手強くな かなか倒せません。戦いは十年続いたと言われます。しかしやがてゼウスは 一つ目の巨人キュクロプスたちと、百の腕を持つヘカトンケイレスたちがク ロノスに幽閉されていたのを助け出して彼等の協力を得ることに成功します。
そしてキュクロプスたちにもらった雷の力でやっとクロノスを倒します。

こうしてゼウスは神々の王となり、姉のヘラと結婚し、オリンポスの主神と なるのです。一説によるとウラノスからクロノス、クロノスからゼウスとい うように子供が親を倒して王位を奪ったように、ゼウスもまた娘のアテナ (又の名はパラス,ローマ神話のミネルヴァ)に地位を脅かされたことがあ ったといいますが、ウラノスの姉テテュスの指示を受けたヘカトンケイレス が彼のそばを守護していた為、遂げることができなかったと言われます。

実際アテナの母はメティスですがメティスの産む子供はゼウスを倒して新し い王になるであろうという予言があったとされます。そこでゼウスはメティ スに子供が出来たことを知ると、メティスをまるごと呑み込んでしまいます が激しい頭痛に悩まされます。そこにゼウスとヘラの間の息子ヘパイストス (ローマ神話のヴァルカン)がやってきてゼウスの頭を石でなぐるとゼウス の頭が割れてアテナが飛び出したとされています。アテナはゼウスの頭から 飛び出したことから知恵の女神となったのです。

この歴代の王は惑星にも名前を残しています。天王星−ウラノス、土星−ク ロノス(ローマ神話のサトゥルヌス)、そして木星−ゼウス(ローマ神話の ジュピター)です。

(通常、ギリシャ神話のクロノスがローマ神話のサトゥルヌスに対応すると されているので、一応ここにはそうあげましたが、実際はこの二神は全く 別の神のようです。単にローマ神話とギリシャ神話における物語上の位置 が同じなだけで、クロノスは時の神、サトゥルヌスは農耕の神のようです。
アメリカのサターン型ロケットは土星の名前に由来します。クロノスCronos は R と L の違いはありますが、時計 Clock と語源が同じであるともい われています。)

(1999-06-17)
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