世界の神話(25)フレイヤ

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北欧神話は13世紀にスノリ・ストルルソン(1179-1241)が「エッダ」・「イ ングリンガ・サガ」といった本にまとめてから広く知られるようになりました。
またスノリと同時代に「詩のエッダ」という本もまとめられており、その中の 特に「巫女の予言」はたいへん有名です。

北欧で信仰の中心となっていたのは、オージン・トール・フレイの三男神で、 特にノルウェーの王室はフレイの子孫(イングリング)ということになってい てます。

この「イングリング・サガ」によれば、北欧の神は元々エーシル(アサ神族) とヴァニール(ヴァナ神族)という二系統に分かれていたとされます。アサ神 族は最初コーカサス付近にいたのですが、ドン川周辺に進出したときにヴァナ 神族と衝突しました。長い戦いの末和平条約が結ばれ互いに人質を出し合うこ とになったのですが、この時アサ側からヴァナに出された人質がヘニールとミ ーミルで、ヴァナ側からアサに出された人質がニョルドとフレイ・フレイヤで あるとのことです。

このニョルドは時として男神・時として女神として現れる不思議な神ですが、 男神として別の女神との間にもうけたのがフレイ・フレイヤの兄妹であるとさ れます。そしてニョルドはアサ神族に来てから猟の女神スカディと結婚し、後 オージンの後を継いで王となり、ニョルドの後はフレイが王になります。ニョ ルドやフレイの治世下はたいへん平和な時代であったとされます。

さて、そのフレイヤですが、一般には愛の女神・美の女神・春の女神とされて おり、ギリシャ神話のアフロディーテに擬することもできます。また「女司祭」
の異名もあります。英語の金曜日(Friday)の語源はフレイヤであり、金曜日 はフレイヤの日です。また、ドイツ語のフラウ(女主人)という語もフレイヤ を語源としているとされます。

フレイヤは豊饒の女神でもあり、多産な豚は彼女の聖獣です。また彼女の乗る 車を引くのはセクシーな猫です。彼女は夜になると牝山羊に変身して牡山羊と 遊ぶとも言われます。彼女は魔女的な性格も持っており、もともとアサ神族と ヴァナ神族の争いを起こす原因になった女神グルヴァイグというのもフレイヤ の一つの姿なのではないか、という説もあります。

彼女の夫はオードといいますが、このオードは非常に旅が好きであちこち出歩 いていたため、しばしば彼女は夫の後を追ってヨーロッパ中をさまよっていた といいます。この時彼女が寂しさを覚えて流した涙は黄金になったとされ、こ のため黄金のことを「フレイヤの涙」ともいうそうです。

ある時フレイヤは旅の途中で4人の小人が住んでいる家に立ち寄りました。小 人たちはきれいな首飾りを作っていました。フレイヤはその美しさに心を奪わ れ、ぜひそれを譲ってほしいと言いました。が小人たちはこれは売り物ではあ りませんので、あげるわけにはいきませんと言います。そして女神さまが私た ちと寝てくださるというのでもあれば別でしょうけど、と付け加えました。フ レイヤは首飾り欲しさが勝って4人と寝床を共にしていいと言い出します。こ れには小人たちも負けて、首飾りを女神にプレゼントしました。この首飾りを 「ブリシングの首飾り」といいます。

ある時、トールの大事な鎚が巨人族に盗まれるという事件がありました。巨人 族は鎚を返せというのであればフレイヤを嫁に寄こせと行ってきましたが、こ れに対してフレイヤはあっさりと「いやだ」といいます。そこで困ったトール は自分がフレイヤに変装して巨人族のところに嫁入りしていきました。結婚式 の宴会が始まるとトールはついついいつもの癖が出て一人で鮭を8匹・酒を3 樽に牡牛を1頭たいらげてしまいました。これには巨人族の王がびっくりして、 「うちの花嫁はずいぶん食うんだな」といいます。それをきいた侍女・実は変 装したロキは「実はフレイヤ様はあなた様に恋いこがれて8日間も何も召し上 がってなかったのです」と取り繕いました。

すると巨人族の王は感激してフレイヤにキスしようとベールをあげましたが、 トールの鋭い視線にびっくりして飛びのきます。「うちの花嫁はなんて凄い目 をしているんだ」これに対してロキは「フレイヤ様はあなた様に恋こがれて8 日間も眠っていなかったのでございます」と言います。

すると巨人族の王はますます感激し、例の鎚を持ってこさせ、それで祝福をし ようとしました。が、鎚が持って来られるとトールはたちまちそれを取り上げ、 その鎚を振り回して巨人族を皆殺しにし、ロキと二人で揚々として引き上げて 来たのです。

フレイヤは後にオージンの妻フリーグの古名フリーアと名前がにている為混同 され、やがてフレイヤ自身がオージンの妻とみなされ、以前フリーグの属性と 考えられていたものが次第にフレイヤに浸食されていきました。

そもそもフレイヤにはオージンに関連する事項があるようで、オージンが本来 主宰しているワルキューレの乙女たちの半分はフレイヤの管理下にある、ある いはワルキューレの長がフレイヤであるともいわれます。またフレイヤの夫の オードというのもオージンと音が似ていて、オードとオージンは元々同じ神な のではないかという説もあるようです。

(1999-06-03)
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