世界の神話(13) 大黒天

←↑→
さて、皆さんは七福神は言えますか?

恵比寿、大黒、毘沙門、弁天、布袋、福禄寿、寿老人 ですね。

この内、一般には大黒・毘沙門・弁天がインドの神、布袋・福禄寿・寿老人 が中国の神、恵比寿が日本の神ということになっています。しかし事情は必 ずしも明確ではありません。

そもそも福禄寿と寿老人は以前にも触れたように同じ神(南極老人星-カノー プス,アガスティヤ)の別名です。また、布袋は唯一実在の人物がモデルであ るとされますが、実際問題として誰なのかについては異説があります。弁天 はインドのサラスヴァティですが、ペルシャのアナーヒーター、日本の市杵 嶋姫神(宗像3女神の一人)などの要素が複雑に混じっています。毘沙門天は 別名を多聞天といって、その名前では仏教の四天王の一つとなっています。
恵比須については、これが何の神なのかについて、蛭子説が最も有力ですが 事代主神説、海幸彦説、などもあります。

さて、大黒ですが、これは基本的にはインド由来の大黒天(マハーカーラ, シヴァの分霊)であるとされています。これは文字通り、暗黒の中に住み死 を司る恐怖の神です。

大黒天に関する記述は孔雀王経や仁王経に見られます。それによれば、この 神は不老不死の秘薬を持っており、自分の血肉を与えるとそれに応じてその 秘薬を分け与えてくれるという神です。しかしその神に対峙した時に、恐れ たりあるいはだまそうとしたりすれば、たちどころにその者の生命を奪って しまう真に恐怖の神でした。

ところがこの神は仏教の伝搬の途中で色々と性格が変わって行きます。まず 一つの系統では大黒天はいつの間にか戦闘神になってしまいました。また別 の系統ではなぜか厨房の神になっていました。この二つの系統の大黒が中国 で合流し、そして日本に渡って来たわけですが、日本に来た時に日本での大 黒信仰に重大な影響を与える混線が発生しました。それは日本に古くからい る「だいこくさま」大国主命との混線です。

基本的に現在の「だいこく様」に関する信仰は、本来の大黒天に対するもの と、大国主命に対するものとが合体してできていると言ってよいと思います。
この合体は基本的には発音が同じ「だいこく」であることから起きました。
しかし性格や神の背景についても、いろいろと共通の要素もあります。

大黒はシヴァの分霊ですが、シヴァで重要な要素の一つは性神としての性格 です。しかし大国主命にもやはり性神としての性格があります。その一端は 大物主(大きな陰茎を持つ?)とか大穴牟遅(多くの膣−妻−を持つ?)と いう別名にも表れているという主張もあります。

それを如実に表しているのが備前焼の大黒像です。この大黒は頭巾をかぶっ て米俵の上に立っていて、大黒というより大国という感じなのですが、これ を後ろから見ると男性性器に見えます。つまり頭巾が亀頭、米俵が睾丸に見 えるように出来ています。また、そもそも大黒の持つ袋は子宮の象徴と考え ることができ、打出の小槌は陰茎です。つまり、大黒の姿はそのまま男女の 和合を表現しており、生殖つまり豊饒を祈願する形を取っているのです。こ れは農耕民族にとっては重要な願いでした。

また、インドでは正統な主神ヴィシュヌに対して、非正統派の主神がシヴァ ということもできます。シヴァは民衆に密着して信仰されている神です。日 本でも、正統な主神は伊勢の天照大神ですが、それに対する非正統派の主神 として出雲の大国主という対比ができていて、大黒は恵比須・大黒などと呼 ばれて、民衆の中で信仰されていますし、家庭でも神棚の横に分けて大黒様 の座があったりします。シヴァのインドにおける地位と大国主の日本におけ る地位というのは似たものです。故に両者は結びついたのかも知れません。

古来大黒天を彫る用材は取り壊した古い橋板の2枚目か3枚目を使うとよい という奇妙な言い伝えがありました。そこで大黒を彫ろうとするものは橋大 工の所に行って古い橋板の2枚目か3枚目を確保しておいてくれ、と頼む訳 ですが、橋はいったんバラバラにしてしまえば、どれが3枚目だったかなど ということはその場にいなかった者には分かりません。そこで生まれた川柳 が『橋大工、どれをくれても三枚目』というものです(^^;

ところで大黒様のお使いは鼠です。これは大黒様が豊饒の神ということで、 米を食べる鼠を管理していると言われています。或いはこれは鼠が多産であ るからかも知れません。またある説では、大黒はその名の通り、黒い色です ので、黒は中国の五行では北で、子の方角なので鼠が出てくるとも言います。

【大黒舞の口上】

御座った御座った  福の神を先に立てて 大黒殿が御座った 1は俵を踏んまえて 2にニッコリ笑って 3に酒を作って 4つ世の中良うして 5ついつもの如くに 6つ無病息災に 7つ何事も無うして 8つ屋敷を広め   9つ小蔵をぶっ建てて 十でとうとう納まった 大黒殿を見なさいな 見なさいな

(1999-05-04)
←↑→



(C)copyright ffortune.net 1995-2016 produced by ffortune and Lumi.
お問い合わせはこちらから