世界の神話(11) 王女メデイアとアルゴー船(2)

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さて、アルゴー船の冒険の続きです。航海の途中では色々なことがありました。

ある所ではピネウスという王が怪物ハルピュイアに襲われていたのをカライス とゼテスの兄弟が助けました。

ある所では、二つの島が波にゆられてぶつかり合うところを通り抜ける必要が あり、一度鳩をとばして鳩が通り抜けたタイミングを見計らって船を通過させ ました。

またある所ではヘラクレスの連れの美青年(恋人でしょうか?)ヒュラスが立ち 寄った島のニンフに誘拐されてしまい、ヘラクレスは気が狂ったように暴れ回 って、下手すると他の乗員を殺してしまいかねない勢いでした。イアソンは必 死になってヘラクレスを説得してきっとヒュラスは帰って来ると言って島に残 るように勧め、彼等を置いたまま船を出しました。(つまりヘラクレスは今回 の冒険には結局役立たなかった)


やがて一行はコルキスに到着しました。コルキス王アイエテスは金羊毛の返還 を承諾しますが、その条件として、イアソンが青銅の足の火を吹く牡牛で大地 を耕し、龍の歯を蒔くことを要求します。この龍の歯は蒔くと兵隊が生えて来 て蒔いた人を襲うという代物でした。

若いイアソンは無謀にもこの条件を承諾しますが、船団を守っていたアフロデ ィーテは助力しようと、息子のエロス(ローマ神話のキューピッド)に命じて 愛の矢をアイエテス王の娘メデイアに打ち込ませ、メデイアがイアソンに恋を してしまうようにします。

メデイアは魔女でしたので、この困難な作業をやりとげる為の呪文を知ってい ました。恋した彼女はイアソンにそれを教え、彼はそのお蔭で仕事をやりとげ ます。更に彼女は金羊毛を守っている龍の所に行き、魔法の歌を歌って龍を眠 らせると、それを持ってイアソンの元に走りました。イアソンは彼女を連れて 船に乗り込み、一目散に故郷を目指しました。この時、メデイアの弟のアプシ ュルトスも彼女に従ってアルゴー船に乗り込みました。

アイエテスは娘が金羊毛を持って逃げたことを知ると追手を仕立て、自ら船に 乗り込んでアルゴー船を追います。すると恋に目がくらんでいるメデイアは弟 のアプシュルトスを殺してその体をバラバラにし、父の船の前に投げ捨てまし た。アイエテスは変わり果てた息子の姿に動転して、メデイアの乗る船を追う 気力を失ってしまうのです。


さて、イアソンが無事金羊毛を持ち帰えると、ペリアスは驚きながらも何とか 言い訳をしながら譲位の日を一日のばしにします。そんなある日、イアソンは 年老いた父アイソンのことで、新妻のメデイアに相談します。君の魔法で父の 寿命を伸ばすことはできないか、と。

メデイアは承知して、数々の薬草に牡鹿の肝臓・狼の腸・亀の甲羅・烏の頭・ や「名も知らぬもの」を釜でどろどろに煮て緑色の液体を作ります。そして、 アイソンの喉を裂いて血を全部出してしまい、代りにその液体を流し込んだの です。するとよぼよぼの老人だったアイソンはすっかり若返り、中年のような たくましさを取り戻しました。

この話をペリアスの娘が聞き付けました。そしてメデイアに頼みます。同じ魔 法でペリアスも若帰らせてくれ、と。メデイアはOKの返事をして、また同じ ように薬草を煮込み始めます。そして、娘にナイフを渡して、それでペリアス の喉を裂くように言うのです。

娘は怖くてとてもできません。メデイアが「喉を裂かなければ魔法は成就しな いではないか」と叱り付けると震えながら娘はナイフを父親に突き立てます。
血が大量に流れだし、メデイアは釜の中の液体を注ぎ込みます。しかし。

実は今回煮ていたものは何の効用も無いただの液体だったのです。ペリアスは 若帰るどころか、そのまま生き返ることはありませんでした。


こうしてペリアスが死んでしまった為、イアソンは無事王位につくことができ ました。ところがイアソンはコリントスの王女クレウーサを好きになり、彼女 を王妃に迎えると言い出します。

怒ったメデイアは、花嫁の衣装に毒を仕込んでクレウーサが死ぬように仕掛を した上でこの地を去り、勇者テセウスの父であるアイゲウス王と結婚します。

なお、メデイアとイアソンの間の子供テッサロスは後に立派な王となり、この 地方の名前「テッサリア」の元となりました。

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あまりたくさん異説を書くと、ただでさえややこしい筋が更に分からなくなる ので、異説はできるだけ控えているのですが、幾つかだけ書いておきます。

龍を眠らせたのはメデイアであるという説を取りましたが、メデイアから龍を 眠らせる薬をもらったイアソンであるという説もあります。また、イアソンは アイエテス王に最初から申し入れした説を取りましたが、最初は夜の闇にまぎ れてくすねようとしたという説もあります。またメデイアとイアソンの間の子 供はメデイアがこの国を去る時自分の手で殺したという説もあります。この説 はドラクロアの絵になっていますので、美術全集などで見た方もあるでしょう。
また、ヘレは王女としましたが王子との説もあります。

それからメデイアが薬草を似るシーンは、後にシェイクスピアがマクベスの中 で3人の魔女が薬草を煮るシーンに流用しました。これを更に手塚治虫はバン パイアでやはり魔女がロックに予言を与えるシーンに流用しました。

メデイアという人物に同情するか、恐怖を覚えるかは人によって違います。又 恐らく男性と女性でかなり比率が違うのではないかと思います。

(1999-04-23)
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