世界の神話(9) 大国主神

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大国主神(おおくにぬしのかみ)は須佐之男神(すさのおのかみ)の六世の 孫で、出雲神話の主神です。今回は、この大国主命の若い頃の話にスポット を当てましょう。

なお、この神様は「大国主命」と呼ばれることが多いのですが、神様の名前 の後に神(かみ)を付けたり命(みこと)をつけたりするのは、その神をど うとらえるかによります。大国主神と書いた場合は神格、大国主命と書いた 場合は人格を問題にしていることになります。

それから、大国主神には多くの異名があります。大穴牟遅神(おおあなむち のかみ)、八千矛神(やちほこのかみ)、葦原色許男神(あしはらしこをの かみ)、宇都志国玉神(うつしくにたまのかみ)というのが古事記に見られ ます。日本書紀は国作大己貴神(くにつくりおおあなむちのかみ)、葦原醜 男(あしはらしこを)、八千戈神(やちほこのかみ)、大国玉神(おおくに たまのかみ)、顕国玉神(うつしくにたまのかみ)、大物主神といったもの を上げています。整理すると

・大国主神・・・・・・・・・・国を作った神としての尊称。
 ・大国玉神・顕国玉神 ・大己貴神(大穴牟遅神)・・・大国主神の若い頃の名前。つまり本名。
                性神としての側面を表すという説も。
                「大穴持ち」で妻が多数いるということ。
 ・八千矛神・・・・・・・・・・武神としての性格。
 ・葦原醜男(葦原色許男神)・・「しこを」は強い男の意味。
                相撲の四股・四股名の「しこ」も同様。
 ・大物主神・・・・・・・・・・通常、大国主神の別霊とされる荒ぶる神。
                実際は大和の三輪山の神。

通常、このように沢山の異名を持つ神というのは部族の統合などにより幾つ かの神格が合体してできた神なのですが、上記の並びを見ると、大物主神以 外は合体というよりも単に別の角度から見ただけのことで、基本的には一つ の神格「大己貴神」に統一されているように思います。但し古事記の文章を 見ていると、八千矛神に関する記述は少し異質で、この神格は後から合体し たものかも知れません。しかしやはり大国主神の基本神格は大己貴神から出 ているようですので、この後しばらくこの神のことを大己貴命と書きます。

さて、大己貴命には80人の兄弟がいました。ある時、この80人がみんな で稲羽の八上姫に求婚しようと言って出掛けた時、大己貴命はみんなの荷物 を持つ羽目になり、少しみんなからは遅れてふーふー言いながら付いて行っ ていました。

ここに一匹の白兎がいました。白兎は淤岐島(現在の白兎海岸の沖100mほど の所にある島)にいましたが、本土に渡ろうと思い海の和迩(ワニ説・サメ 説あり)をだまして「自分の部族と君達の部族とどちらが人数が多いか比べ てみたいから、ここから本土までずらっと並んでみてくれないか?」と言い ました。和迩は承知し、仲間を呼んで来て並びます。

白兎はその和迩たちの上を飛び歩きながら「1,2,...」と数えていき ましたが、もうあと1歩で本土に降りるというときに「だましたんだよー」
と言ってしまいます。するとその最後の和迩が白兎を捕まえて、衣服(皮か ?)をはいでしまいました。

そこへ大己貴命の兄弟たちが通り掛かりました。白兎が泣いているのを見る と兄弟たちは「海に使って風に当っているといいよ」と言います。そこで白 兎がそうしますと、ますます傷が痛んでたまらなくなりました。

そこにやって来たのが大己貴命でした。大己貴命は白兎から事情を聞くと 「河口に行って真水で体を洗い、蒲の花粉を撒いた上に寝転がりなさい」と 教えます。白兎がその通りにすると兎の体は元の通りになりました。
(因幡の白兎)

白兎は大己貴命に感謝して礼を述べるとともに「あなたの兄弟たちは八上姫 の心を射落すことはできないでしょう。姫はあなたのものになります」と予 言しました。そして八上姫はその予言通り、自分は大己貴命に嫁ぎたいと思 うと明言したのです。

これを面白くなく思った大己貴命の兄弟たちは大己貴命を殺そうとします。

まずは大己貴命に「今から猪を追って行くから、そちらで待ちかまえておい て捕まえてくれ」と言い、大きな石を真っ赤に焼いて転がします。その岩に 当って大己貴命はあっけなく死んでしまいますが、大己貴命の母が神産巣日 神に願い出た結果、蚶貝姫と蛤貝姫が遣わされ、大己貴命はこの姫たちの治 療で蘇生します。

大己貴命が生きているのを見て驚いた兄弟たちですが、次は山の中の大木に 楔を打ち込み、だまして大己貴命をその中に入れ、入った所で楔を引き抜い て閉じ込めてしまいました。大己貴命の母は大己貴命が戻ってこないので不 審に思って探し回り、この木を見つけて木を裂き、息子を救出します。そし て「このまではお前は兄弟たちに殺されてしまいます。紀の国の大家彦神の 所に行って相談しなさい」と言います。そこで大己貴命が大家彦神(=五十 猛神)の所に行くと、根の国の須佐之男神の所に行きなさいと行って道を教 え、追ってきた兄弟神たちは弓矢で射て追い返してしまいました。

さて、根の国に来た大己貴命は須佐之男神の娘の須世理姫と出会い、愛しあ ってしまいます。そして須世理姫は彼を父の須佐之男神の前に連れて行き、 私はこの人と結婚したいと言います。須佐之男神はそれではこの男に試練を 課し、それに堪えられたら結婚を認めようと言います。

大国主神はまず蛇のたくさんいる部屋に連れて行かれました。しかしこの時 須世理姫が秘かに1枚のヒレを渡して「蛇が来たらこのヒレを3度振りなさ い」と教えましたので、その通りにして難を逃れることができました。

翌日は今度はムカデと蜂のいる部屋に通されましたが、また須世理姫がムカ デと蜂を払うヒレを渡したので、無事に過ごすことができました。

そこで今度は須佐之男神は矢を1本野原に放って大己貴命に取って来るよう に命じ、大己貴命が拾いに行った所で回りに火を付けました。火に囲まれて 困っていると1匹の鼠が現れて「内はうつろで広い。外はすぼまっている」
と言いました。大己貴命は鼠の穴の中に隠れられることに気付き、穴を掘っ て下に隠れ、火が地面を通りすぎるのを待ちました。

大己貴命が無事戻って来たのを見た須佐之男神は、家の中に連れて戻り座っ てから、自分の頭のシラミを取ってくれと言いました。大己貴命が見ると頭 にはたくさんのムカデがいます。どうしたものかと思っていると須世理姫が ムクの実と赤土を渡しました。そこで大己貴命がムクの実を噛み砕き、赤土 を口に含んで吐き出しますと、須佐之男神は、ムカデを捕まえて自分の口で 噛み砕いてくれているのかと思い、可愛い奴だなと微笑んでそのまま眠って しまいました。

そこで大己貴命は眠ってしまった須佐之男神を家の柱に縛り付け、戸口には 大きな岩を置いた上で、須世理姫を連れて、根の国を逃げ出してしまいまし た。この時、須佐之男神が持っていた生太刀・生弓矢・天詔琴を持って行き ました。

ある程度行った所で天詔琴が木に触れてポロンと鳴りますと、この音で須佐 之男神は目を覚まし、家を引き倒して縄を解き、大己貴命たちを追いかけて 来ました。そして笑いながら大声でこう言いました「お前の持って行った生 太刀・生弓矢でお前は兄弟たちを倒すんだぞ。そしてお前はこの国の主(大 国主)となり、現し国魂(うつしくにのみたま)となって、須世理姫を妃に し、宇迦の山の麓に大きな宮殿を作って住むんだぞ」と。

こうして根の国から帰ってきた大己貴命は須佐之男神が言った通り、80人 の兄弟を打ち負かし、追放して国作りを始めたのです。なお、発端の八上姫 の方ですが、須世理姫に遠慮して、大己貴命との間に出来た子供を木の俣に はさんで因幡に引き篭りました。そこでこの子供を木俣神(=御井神:井泉 の神)と言います。

大国主神はこのわざわざ根の国から連れて来た正妻須世理姫との間には子供 を設けていないようです。しかし最初の妻の八上姫との間の木俣神の他、色 々な姫との間に17人の子がいたとされます。主な所では

・宗像の三女神の中の多紀理姫との間に高彦根神(賀茂大神)・高姫神 (下照姫神) ・神屋楯姫との間に事代主神(ことしろぬしのかみ) ・沼河姫との間に建御名方神(たけ・みなかたのかみ)

などです。なお、宇迦の山の麓の宮殿とは、一説によればこれが出雲大社で あるとしますが、出雲大社は後で出てくる国譲の代償と考えた方がスムーズ ですので、他に何かあったかも知れませんし、全く別の場所かも知れません。

なお、因幡の白兎の所で、白兎が渡ったとされる淤岐島を一部の解説書は 「隠岐か?」と書いていますが、隠岐では45kmもの彼方。こんな距離をワニ の上を飛びながら渡るというのはムチャです。やはりそのまま淤岐島でよい のではないかと思います。なお古事記のこの部分の本文は次の通りです。

菟答言、僕在淤岐嶋、雖欲度此地、無度因。故、欺海和迩。

それから一度に言うと混乱するので書かなかったのですが、大国主神という のは、一般名詞ではないかという説があります。つまり日本中のあちこちの 国に、その国の大国主つまりその土地の主神がいて、出雲の大国主はその代 表として描かれているのではないかという説です。注目に値する説だと思い ます。

なお、この神と仏教の大黒天に関する話もあるのですが、ここまで既に十分 長くなってしまいましたので、次の機会にします。

(1999-04-18)
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