世界の神話(8) 金星の神

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さて、今日は金星の神について話します。これは世界的に非常に面白いシン ボリズムを構成しています。

メソポタミアでは金星の女神はイシュタル或いはイナンナと呼ばれていまし た。彼女はギルガメッシュの物語の所でも出てきましたね。基本的に彼女は キュベレーやアフロディーテ(ビーナス)やフレイヤらの源流と考えられま す。さて、そのイシュタルに「冥界下り」という物語があります。

それによるとイシュタルは「行かなければならない」と言って突如冥界への 道を進みます。イシュタルが何故冥界に行かなければならなかったのか理由 は述べられていません。

彼女は冥界の第一の門にたどり着きます。すると門番は通してもいいが、大 王冠を預からせてくれといいます。イシュタルは承知して頭に付けていた大 王冠を渡しました。

やがて第2の門に達します。すると門番は通してもいいが、耳飾りを預から せてくれといいます。イシュタルは承知して耳飾りを渡しました。

このあとイシュタルは第3の門では首環、第4の門では胸飾り、第5の門で は腰帯、第6の門では腕環と足環、第7の門では腰布を渡しました。結局彼 女は完全に裸になって、冥界の女王エレキシュガルの前に出ました。エレキ シュガルはイシュタルが来た理由を知っていたので、大変不機嫌でした。そ こで彼女はイシュタルが裸で自分の前に出るとは無礼だといって彼女の命を 奪ってしまいます。

ところがイシュタルは愛の女神ですので、彼女が死んでしまうと人間も動物 もみな愛し合わなくなり、家畜は殖えず、作物も実らなくなりました。困っ た天神エアは使者を派遣してエレキシュガルを説得、イシュタルを生き返ら せることに同意させます。エレキシュガルは彼女を蘇らせるのはいいが、代 わりに誰か冥界に連れてくるように要求しました。そこで使者が適当な人を 物色していた所、イシュタルの夫のドゥムジが、妻が死んだというのに喪に も服さず遊びほうけているのを見つけます。けしからん奴だというわけで、 ドゥムジをイシュタルの身代りに冥界に捕らえておくことにし、イシュタル は解放されます。

イシュタルは再び冥界の門を逆にたどって地上に戻りました。その時各々の 門の門番が、彼女の服を一つ一つ返してくれました。

そして、イシュタルが地上に戻ると再び人間や動物は愛し合って子供を産む ようになり、植物も実をつけるようになりました。一説ではイシュタルは完 全に解放されたのではなく、年に3ヶ月は冥界に戻って夫のドゥムジと交替 するのだといいます。そしてその間地上は冬になって、作物は実らないのだ という訳です。


さて、このイシュタルの冥界下りと共振するような話が幾つかあります。そ れは基本的に全て、このイシュタルの物語より後に成立したものです。

■ルシファーの地獄堕ち

ルシファーは神から人間に従属するように言われたのに反発して戦いを挑 み、破れて地獄に堕とされ、悪魔たちの王になったと言われます。彼は実 は太陽の天使・ミカエルと双子の兄弟である、というのも信じる人の多い 話です。このルシファーは金星の象徴であることも知られています。それ は夜が明けて朝になる時、最後までそれに抵抗して光を放っている星 −明けの明星−であるからです。その姿が神と戦うルシファーというイメ ージに似合っています。

しかし、このルシファーについては、神に負けたからではなく自ら何かの 使命を持って地獄に行き、その王になったのだという説もあります。ここ に「金星の神が地獄へ行く」というモチーフがあります。

■丑寅の金神

丑寅の金神といえば江戸時代までは非常に恐れられた、災いをもたらす神 と考えられていました。まさにこれは西洋のルシファーのイメージとだぶ っています。しかもこの神は「金神」という名前の通り、金星に関連した 神なのです。

ところがこの丑寅の金神について、江戸時代末期から明治初期にかけて、 一部の宗教家が、これは実は封印された古い神であり、その実体は国常立 神である、という説を唱えます。彼らは丑寅の金神は恐れるから災いをも たらすのであり、信仰すれば大きな幸福をもたらしてくれると主張しまし た。金星の神が封印された神。これもイシュタル・ルシファーと似たモチ ーフを構成しています。

(1999-04-13)
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