昔、伊弉諾神(いざなぎのかみ)が宮崎県の川の河口付近で禊(みそぎ)を した時に、左目を洗うと天照大神が、右目を洗うと月読神(つくよみのかみ)、 そして鼻を洗うと素戔嗚神(すさのおのかみ)が生まれました。この三神を 「三貴子」(さんきし)と言います。
天照大神は太陽の神様で高天原(たかまがはら)の主宰者。伊勢神宮にお祭
りされています。月読神は月の神様で、出羽三山などにお祭りされています。
素戔嗚神は根国(ねのくに)にいる神様で、京都の八坂神社などの祇園社や
関東の氷川神社などでお祭りされています。
天照大神の神話で有名なのは天岩戸(あまのいわと)神話でしょう。弟の素 戔嗚神があまりにも乱暴を働いたため、最初はそれをかばっていた天照大神 も最後はプッツンして、岩戸の中に閉じこもってしまいます。
太陽の神様が隠れてしまうと、世の中真っ暗闇になってしまいました。困っ た神様達は相談して、岩戸の前に大きな鏡を下げ、その前で宴会を開いて、 天宇受売神(あめのうずめのかみ)がセクシーなダンスをしました。それを 見た神様たちが大笑いした時、不審に思った天照大神が細く戸を開けて様子 をうかがいます。
「私が隠れて困っているかと思ったら宇受売は踊っているし、神々は笑って いる。これはどうしたことか?」と聞きます。すると神たちは「あなた様よ りもっと貴い神様がおいでになったので、みな歓迎しております」と言って、 鏡をその天照大神の方向に向けました。そこには当然天照大神の姿が映りま すが、細い隙間からはよく見えなかったので、よく見ようと、戸をもう少し 開けました。そこに手力男神(たぢからおのかみ)が手を入れて腕をつかみ ぐいと外へ引き出し、布刀玉神(ふとだまのかみ)が後ろに注連縄を張って 中に戻れないようにしてしまいました。かくして世界に光が蘇りました。
天照大神の性別に関しては、古事記は一切触れていませんが、日本書紀では ただ一ヶ所、素戔嗚神が天照大神に「如不與姉相見」(お姉さんと会いたい と思って)と言うところがあることから、女性神と見る見方が現代では優勢 です。ただし過去どちらなのか論争があったことでもあり、現代でも男性神 説を唱えられる方はあります。一応ここでは女性神説を採っておきます。
天照が女性神であるとすると、月読は男性神ですから、太陽と月の性別がギ リシャ神話とちょうど逆になります。ギリシャの場合は、太陽のアポロンが 男性で月のディアナ(ダイアナ・セレネ)が女性ですね。この辺りの比較と いうのもその民族の基本思考を見るようで面白いものです。