return 誰がクックロビンを殺したのか
さて、単純に「やりましょう」といっても、なかなか取っかかりが
ないと始めつらいでしょうから、外国語の詩を少しずつ取り上げて
鑑賞してみるのもいいかと思います。今日はマザーグースの一節を
取り上げてみましょう。

  Who killed Cock Robin?    誰が駒鳥を殺したの?
  I, said the Sparrow,     私よ、と雀が言った
  With my bow and arrow,    私の弓矢で
  I killed Cock Robin.     駒鳥を殺したの。

この詩はまだまだ続くのですが、取り敢えず第一節だけ。英語の詩
では「韻を踏む」ということを非常に大事にします。上記の例では
1行目と4行目は同じ Robin ですし、2行目・3行目でも arrow
という音が繰り返し使われています。

この先頭のフレーズは「パタリロ!」のテーマ曲にも(間接的に..
....直接的には「ポーの一族」から)引用されているので、聞いた
ことのある方は多いでしょう(^^)

この詩は18世紀のウォルポール首相の失脚を歌ったものという俗
説があるのですが、実際には14世紀ころのものであろうと言われ
ています。15世紀に作られたグロスターの教会のステンドグラス
にもこの歌のモチーフが描かれています。

続きを見てみましょう。なお節の順序は本によって異同があるよう
です。以下はできるだけ話が連続するように配置してみました。

  Who saw him die?       誰が彼の死んだのを見たの?
  I, said the Fly,       私よ、と蠅(ハエ)が言った。
  With my little eye,      私の小さな目で
  I saw him die.        彼が死んだのを見たの。

  Who caught his blood?     誰が彼の血を取ったの?
  I, said the Fish,       私よ、と魚が言った。
  With my little dish,     私の小さな皿に
  I caught his blood.      彼の血を取ったの。

ここまでが事実関係の調査。この後はお葬式の準備に入ります。

  Who'll make his shroud?    誰が彼の死装束を作る?
  I, said the Beetle,      私が、と甲虫(カブトムシ)が言った。
  With my thread and needle,  私の糸と針を使って
  I'll make the shroud.     彼の死装束を作りましょう。

  Who'll be the parson?     誰が牧師をする?
  I, said the Rook,       私が、と烏(カラス)が言った。
  With my little book,     私の祈祷書を使って
  I'll be the parson.      牧師をしましょう。

  Who'll be the clerk?     誰が牧師助手をする?
  I, said the Lark,       私が、と雲雀(ヒバリ)が言った。
  If it's not in the dark    暗くなかったら
  I'll be the clerk.      私が牧師助手をしましょう。

  Who'll carry the link?    誰が松明を持つ?
  I, said the Linnet,      私が、と胸赤鶸(ムネアカヒワ)が言った。
  I'll fetch it in a minute,  すぐに取ってきて
  I'll carry the link.     私が松明を持ちましょう。

ここは雲雀が暗いのは嫌だと言ったので、たいまつが必要になりました。

  Who'll be the chief mourner? 誰が喪主をする?
  I, said the Dove,       私が、と鳩が言った。
  I mourn for my love,     私の恋人のために
  I'll be chief mourner.    私が喪主をしましょう。

つまり、鳩は駒鳥の恋人だったんでしょうね。

  Who'll dig his grave?     誰が墓を掘る?
  I, said the Owl,       私が、と梟(フクロウ)が言った。
  With my pick and shovel,   私のつるはしとシャベルで
  I'll dig his grave.      彼の墓を掘りましょう。

この一節がこの詩が14世紀起源であるといわれるゆえんです。
OwlとShovelでは全然韻を踏んでないみたいですが、14世紀に
はOwlはウール、shovelもシュールと発音していたらしいのです。

  Who'll carry the coffin?   誰が棺桶を持つ?
  I, said the Kite,       私が、と鳶(トンビ)が言った。
  If it's not through the night,夜通しでなければ
  I'll carry the coffin.    私が棺桶を持ちましょう。

  Who'll bear the pall?     誰が棺の覆布を持つ?
  We, said the Wren,      私たちが、と鷦(ミソサザイ)が言った。
  Both the cock and the hen,  雄と雌が二人で
  We'll bear the pall.     一緒に覆布を持ちましょう。

  Who'll sing a psalm?     誰が讃美歌を歌う?
  I, said the Thrush,      私が、と鶫(ツグミ)が言った。
  As she sat on a bush,     やぶの中に座って
  I'll sing a psalm.      讃美歌を歌いましょう。

  Who'll toll the bell?     誰が鐘を鳴らす?
  I, said the Bull,       私が、と鷽(ウソ)が言った。
  Because I can pull,      私が紐を引けるから
  I'll toll the bell.      鐘を鳴らしましょう。

  All the birds of the air   空の全ての鳥たちが
  Fell a-sighing and a-sobbing, ため息をつきすすり泣きをして
  When they heard the bell toll 鐘が鳴るのを聞いたのです
  For poor Cock Robin.     可哀想な駒鳥のために。

この詩もそうですが、マザーグースには「ロンドン橋落ちた」とか
「10人のインディアン」のように同じパターンで繰り返す詩が多数
含まれています。日本の手鞠歌なども同様ですが、子供たちが何かで
遊びながら歌っていたのでしょう。

なおこの詩には有名な北原白秋(1885-1942)の訳もあります。以下に
一部引用しましょう。

  「誰が殺した、駒鳥の雄を」
  「そぉれは私よ」雀がこう云った。
  「私の弓で、私の矢羽で、
   私が殺した、駒鳥の雄を」

  (中略)

  「誰が記す、戒名を記す」
  「そぉれは私よ」雲雀がそう云った。
  「明るいならば、暮れないならば、
   私が記そ、戒名を記そ」

  (中略)

  「誰がなるぞ、お坊さんになるぞ」
  「そぉれは私よ」白嘴鴉(シロハシガラス)がそう云った。
  「経本持って、小本を持って、
   私がなろぞ、お坊さんになろぞ」

  (中略)

  空の上からみんなの小鳥が
  ためいきついたり啜り泣きしたり
  みんなみんな聞いた、鳴り出す鐘を
  かわいそな駒鳥のお葬式(トムライ)の鐘を

いや、比べること自体が間違ってますが(^^;かないませんね(^^)


(1997.09.17)

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