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英訳百人一首(02)春すぎて
written by そよ風 on 98/03/19 06:57
●春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山 /持統天皇 意味:春が過ぎて夏が来てしまったようだ。天の香具山に白い衣が干してある。 試訳:Spring passed and Summer comes, White dresses are dried At Saint Kaguyama. Empress Jito (Sarara) 『干す』という日本語は英語のdry,airの両方の意味があって、洗濯物を干す 場合はdry, 布団を干す場合はairなのです。この場合は一見airの方にも思え るのですが、後にあげる理由からdryの方を採用しました。 香具山(かぐやま)は高天原(たかまがはら)が地上に降りてきた山だと言われる 山で、そのため「天の(あまの)」という形容詞が特別に添付されます。そこで 英語ではそれをsaintで表現してみました。 持統天皇は天智天皇と蘇我石川麻呂の娘の間の子供で、天武天皇の后です。彼 女は非常にドラマチックな人生を歩んだ人で、よく言う人も悪く言う人も多い 人でしょう。本名は「さらら」という美しい名前です。 蘇我石川麻呂は、蘇我の一族ではありますが、天智天皇(中大兄皇子)と組ん で本家の蘇我毛人・入鹿親子を倒して政権の中枢に座ります(大化の改新)。 しかし後に天智天皇に疎まれて殺されてしまいました。それが、さらら姫5歳 の時のことです。 若くして叔父である大海人皇子と結婚しますが、やがて天智天皇が死の床に就 きますと、天智天皇は皇太子である弟の大海人皇子を殺して実の息子大友皇子 に後を継がせようとします。その危険を察した大海人皇子はさらら姫や少数の 側近とともに吉野に退いて難を逃れました。そして天智天皇が亡くなりますと 後継をめぐって、天下を2分する戦いが勃発。この戦い(壬申の乱)に勝って 大海人皇子は天皇(天武天皇)になり、強力な中央集権国家の建築に乗り出し ました。皇后となった、さらら姫は非常に政治的センスに恵まれた人で、夫の 政権運営にサブ的な働きをしてこれを支えました。 その天武天皇が亡くなった時、天皇には多数の皇子がいましたが皇后は自分が 産んだ子供である草壁皇子に後をつがせたいと考え、その最大のライバルであ った大津皇子を殺害します。ところが肝心の草壁皇子が若くして死去。彼女は 草壁皇子の子供である軽皇子(後の文武天皇)に後を継がせるために自ら天皇 として即位、自らは天皇の地位に執着していなかった高市皇子をサブとして、 天武天皇のやり残した国家事業を継続、古代日本国家の基盤を整備しました。 この歌は元々は『春すぎて夏来たるらし白栲の衣乾したり天の香具山』として 万葉集巻1に入っています。これが新古今集では冒頭の表現に改められており、 百人一首でもその形が採用されています。 この元の万葉集で「乾」という字が使用されているようですので、今回の試訳 ではairではなくdryの方を使用してみました。 それからこの万葉集原文の「栲」ですが、これはやはり「たえ」と読み、かじ の木などの繊維で作った布のことだそうです。意味としては白栲も白妙も同じ もののようです。