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時をかける少女
【今日のβサルベージ】
続いて尾道四部作の2作目「時をかける少女」(1983)。
「さびしんぼう」に映画の出来として92点を付けるとしたらこの作品は84点。
減点は主としてヒロインの演技力不足によるもので、映像の美しさはあまり
にも素晴らしい! 皮肉にもシリーズ中最高の出来かも知れません。特に
クライマックスの幻想的なシーンの連続はキューブリックの「2001年宇宙の
旅」の万華鏡的なクライマックスを思わせるすばらしさでした。
主演は原田知代。その幼なじみの役がこのシリーズ4作ともに出演している
尾美としのり。そこに絡んでくる、原田の事実上の相手役が高柳良一。原田
と高柳は角川映画のスターであり、そこに大林監督の秘蔵っ子である尾美が
入って全体を引き締める役をしています。
原田知代はこの作品の前年「伊賀忍法帖」の主役オーディションで角川春樹が
見つけた逸材でした。このオーディションで選ばれたのは渡辺典子なのですが、
角川は彼女に何か輝くものを感じ1982年にテレビシリーズの「セーラー服と
機関銃」「ねらわれた学園」に起用して彼女は一躍アイドルになります。映画
出演はこれが最初。頑張ってはいますが青田買い状況であることは否めません。
高柳良一は角川映画「ねらわれた学園」(1981)で薬師丸ひろ子の相手役として
オーディションで選ばれた人です。この「ねらわれた学園」では非常にいい
演技を見せたのですが、その後はあまりパッとせず「彼のオートバイ彼女の島」
(1986)を最後に引退してしまいました。その最後の作品もかなりの熱演。この
「時をかける少女」では未来人の役を演じていますが正直彼には期待していた
だけにこの映画を見た時は少しがっかりしました。ただその表情の少ない所が
逆に未来人役としては案外説得力のある状態になっているのは大林マジックか。
「時をかける少女」は筒井康隆の1967年の作品ですが、なんといっても1972年
にNHKの夕方6時の時間帯に「タイムトラベラー」の題名で放送されたもの
が名作として名高く、この放送の録画の一部を持っているファンの人が1998年
に発見されて現在DVD発売の予定も出ているようです。
「タイムトラベラー」は主演が島田淳子(現:浅野真弓,柳ジョージ夫人)・木下清、
ナレーションは城達也で、ラベンダーの香り、ケンソゴルの謎、といった道具
立てがSFファンの心をそそりました。
さて今回の「時をかける少女」はNHK版がSF色が強かったのに対して、
こちらはファンタジー色が強くなっています。特に尾道の坂の多い舞台背景
がうまくノスタルジックな雰囲気を出して、時計の針が回って飛んでくる所、
天使の人形のキス、崩れる瓦、などなど、本当にきれいです。
岸辺一徳、根岸季衣、などといった大林作品ではおなじみの人たちが脇を固め
ており、なんといってもラストの、子供と孫を自動車事故で失った老夫婦役の
上原謙・入江たか子の会話は涙無しでは聞けないほど美しい。不覚にもまた
泣いてしまいました。
この作品ではタイムトラベルに、その行き先の場所・時刻への意識集中が
必要であることを示唆しています。そういう考え方は1980年のジェーン・
シーモアとクリストファー・リーブが主演したアメリカ映画「ある日どこ
かで」でも出てきました。それ以前のタイムトラベルの表現には魔法的な
ものが多かっただけに、この時期の新しい傾向なのかも知れません。
(2001.09.02)
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