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written by Lumiere on 96/03/07 06:53


この男になった娘の名前ですが、カイニスでした。男になった後はカイネウス
と名乗りました。アルゴ船の乗組員の中にもカイネウスという男がいましたが
彼女はその孫になります。アルゴ船のカイネウスの息子で、カイニスの父にな
る人物はエラトス或いはコロノスと呼ばれています。

彼女は男になった後、非常に乱暴なほどの勇士になり色々な戦いに参加します
が、ケンタウロス族との戦いの時、敗れて丸太棒の山の中に生き埋めにされて
息絶えます。彼が死んだ時、その丸太棒の山の所から一羽の鳥が飛び立ちまし
た。この鳥はフェニックスであったと言われています。彼の国の人が後で丸太
棒を取り除いて遺体を取り出しますと、彼の死体は再び女に戻っていました。

この物語に関しては心理学者の研究も数点あるようですが、死んだ時また女に
なっていたということから、彼女は「男として活躍した」勇ましい女だったの
ではないか、という分析もあるようです。

私の知る限りでは、女が男に変身する伝説というのは、コーカサスに1つとイ
ンドに1つありますが、どちらも非常に勇ましい娘で男として出仕していた所
を王女に見初められて、ぜひ婿にと言われて困っている時に、水に関わりのあ
る場所で男に転換しています。カイニスの場合も海の神ポセイドンの力で転換
しているわけで、「水」というものが性が変わる時に重要なファクターである
ことを示唆しています。なお、逆に男が女に変化する伝説というのはあまり聞
かないように思います。

なお、変身する話のもれが少しありましたので、ついでに補足しておきます。

★シュリンクス ニンフですが、パンに追いかけられ彼から逃れるために川辺
 で葦に姿を変えてしまいました。この葦でパンは笛(パン・フルート)を作
 りました。この笛は後にヘルメスが盗み出してアポロンに売ったとされます。

★ピテュス 同様です。パンに追いかけられたニンフですが、彼女は松に変身
 しました。

★カリスト カリストはアルテミスの配下のニンフでしたが、ゼウスとの間に
 子供を身篭り、アルカスという男の子を産みました。アルテミスの配下のニ
 ンフはアルテミスと同様処女を守らなければならない決りでしたので、アル
 テミスは彼女を罰として熊に変えてしまいました。やがてアルカスは成長し
 て立派な狩人になりました。ある時彼が森に入って行くと一頭の熊がいまし
 た。それは彼の母カリストの変身した姿だったのですが、カリストがわが子
 を懐かしんで声をあげてアルカスの方へ行こうとするとアルカスは熊が襲っ
 てくるものと思って弓矢をつがえました。これを見ていたゼウスは子が母を
 殺してはいけないと思い、二人をさらって天上に上げ、大熊座と小熊座にし
 たのです。

★ミダス 「王様の耳はロバの耳」の男。彼は異様なまでに金を欲しがり、自
 分の触るものを全て金に変えて欲しいと神に願い、それが聞き遂げられた。
 しかし彼はすぐに後悔すことになった。御飯を食べようとすると食べ物が唇
 に触れた瞬間金に変わってしまうので、何も食べられないのである。水を飲
 もうとしてもやはり水が金に変わってしまった。あまつさえ彼の娘が父を見
 つけて駆け寄って来て抱擁すると、彼は次の瞬間重い金の像を抱いていた。
 彼が泣きながらあの願いを取り消してくれと神に祈ると炎に包まれた怒りの
 顔のアポロンが現れ、それを取り消したが、彼の耳をロバの耳に変えた。彼
 はその耳を帽子で隠していた。しかし彼の髪を刈った床屋がその耳を見てし
 まい、王は床屋にこのことを絶対黙っているように命じた。しかし床屋はど
 うにも黙っていられないので、地面に穴を掘り、その穴の中に向って「王様
 の耳はロバの耳!」と叫んだ。これを聞いていた小鳥たちがその声を真似し
 いつしかその噂は国中に広がった。




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