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イメージの源泉(4-8)ヘラクレス(2)
written by Lumiere on 96/02/22 02:12
さて、前稿ではラインアップだけ紹介したヘラクレスの12の難事につい てそれぞれを簡単に説明しておきます。 (1)ネメアの獅子を殺すこと この怪獣は象ほどの大きさで歯は象牙のようで、爪は刀のように鋭く、 皮は槍でも矢でも通らないほど硬いものでした。獅子は夜になると村に 出没し、出会ったものは牛だろうと羊だろうと人間だろうと構わず貪り 食っていました。 ヘラクレスも最初矢を射ますが全然こたえません。そこで大槍を投げつ けますがやはりものともしません。獅子はどんどんヘラクレスの迫って 来たのでとうとう棍棒でなぐりつけますが駄目です。仕方無いのでヘラ クレスは獅子に組みついて強力な腕で獅子の首をひねりました。獅子の 爪がヘラクレスの肉を裂きますが構わずしめつけます。すると、いくら 皮が頑丈でもやはり普通の骨と筋でできている獅子の首はその神の領域 をも越えるような力には耐え切れず折れてしまいます。獅子が倒れると ヘラクレスはその爪を折って、それを使って獅子の皮をはいでしまいま した。 (2)ヒュドラを退治すること この蛇は百の首を持っていました。ヘラクレスが1本の首を切り落とす と、そこから新しい首が2本生えて来ます。そこでヘラクレスは甥のイ オラオスに手伝わせて、彼が首を切る度にその傷口を松明で焼かせまし た。するともう首は生えてきませんでした。最後にどうしても不死の首 が1本あったので、ヘラクレスはそれを岩で潰した上で、土の中に埋め てしまい、二度と出て来れないようにしました。 この難事に関してエウリュステウスは甥に手伝ってもらったから数に数 えないと宣言。当然ヘラクレスは激怒しました。 (3)ケリュネイアの鹿を捕らえること この鹿は非常に足の早い鹿で、アルテミスが自分の車を引かせている4 頭の鹿の兄弟でした。アルテミスが鹿をつかまえようとした時、この鹿 だけがどうしてもつかまらなかったのです。 ヘラクレスも何とかつかまえようと頑張るのですが、さすがのヘラクレ スもこの鹿のスピードにはてこずります。そこで仕方なく彼はアポロン の弓を借りて、その鹿の前足を射て動けなくした上で、できるだけその 他には傷つけずにとらえることに成功します。 のちにヘラクレスはこの鹿をアルテミスに献上し、鹿は彼女の車を引く 引く5頭目の鹿となりました。 (4)エリュマントスの野猪を捕らえること これも大きな猪でしたが、この猪を捕まえること自体にはそんなに苦労 しませんでした。ヘラクレスは猪を隠れ場所から追出し、その上に飛び のって組み伏せたのです。 しかしこの猪の所に行く途中、ちょっとした事件がありました。ヘラク レスはケンタウルス族のポロスにもてなされますが、ポロスと敵対して いたケンタウルスたちがそこに襲撃して来て、ヘラクレスも仲間かと思 って襲いかかります。この無謀な襲撃は当然逆襲されてケンタウルス達 はみんな倒されてしまいますが、この時ヘラクレスの射た流れ矢が彼の 師匠であるケイロンに当ってしまうのです。この結果ケイロンは死ぬこ とになりますが、その時プロメテウスを救います。この話は#189に書き ました。 (5)アウゲイアスの家畜小屋を掃除すること アウゲイアス王の家畜小屋には3000頭もの牛が飼われていましたが 30年間掃除をしたことがありませんでした。エウリュステウスの指示 はこのとんでもない家畜小屋を1日で掃除することでした。ヘラクレス はアウゲイアス王の所に行って家畜の1割をくれるなら掃除をする、と 申し出ます。王はどうせ無理だと思ったので軽く約束しました。 ところがヘラクレスは家畜小屋のそばを流れるアルペイオス川の流れを 変えて、川の水を小屋の中に導き、汚れを文字通り一掃してしまいます。 おかげでこの川の流れは今も狂ったままだとのことです。 ヘラクレスがやりとげたのを見てびっくりしたアウゲイアス王ですが、 この掃除についてはヘラクレスが掃除したのではなく、川が掃除したの ではないかと言って、家畜は与えませんでした。しかもエウリュステウ スにも、これは報酬目当てにしたのだから難事の数には入れないとまで 言われてしまいました。 (6)ステュンバリデスを退治すること これは鉄のような硬いくちばしをもった鳥たちで、それを全部退治する のが仕事でした。この鳥たちは何でも呑み込んでしまう沼地の丘に住ん でいて近寄れなかったので、ヘラクレスはヘパイストスから巨大なガラ ガラを借りてきてこれで鳥たちを起こします。 ついでヘラクレスは沼のふちに立ち、むねをはだけました。すると鳥は 1羽ずつヘラクレスの胸に突進してきて鉄のくちばしを彼の胸に立てま した。そこを彼はすかさず捕まえ、締め殺していきました。全部の鳥を 締め殺すまで彼の胸も相当の傷を受けましたが、何とか達成しました。 (7)クレタの牡牛を捕らえること この牛は昔エウロペを乗せて海を越えた牛であるとか、海の中から現れ た牛であるとか言われます。クレタ島のミノス王は、この牛をポセイド ンに捧げようとしましたが実際見てみるとあまりに美しかった為、これ を殺さずに牛の群れの中に入れ、代りに別の牛を捧げました。これにポ セイドンが怒って、牛を非常に獰猛にしたとされます。 ヘラクレスは最初ミノス王に、一緒につかまえよう、と持ちかけますが、 ミノス王は自分一人で捕まえるといいはるので、仕方なくヘラクレスは 一人で捕まえてエウリュステウスに見せたあと、もういちどこの牛を放 ちました。この牛はその後もあちこちの島に行き人々に迷惑を掛けたと いうことです。 (8)ディオメデスの人喰い馬を捕らえること ディオメデスはアレスの息子で、彼はこの馬をずいぶん可愛がり、反抗 した部下や怠け者の奴隷、敵の捕虜などを食べさせていました。ヘラク レスは彼のもとに行って最初馬をゆずってくれるように頼みますが、激 しく抵抗したため、ディオメデス自身を馬に食べさせ、それから馬を連 れかえったのです。 なお、この人喰い馬はエウリュステウスのもとを振り切って山に逃げ込 みますが、あっけなく野獣に殺されてしまいました。 (9)アマゾンの女王ヒッポリテの帯を手に入れること ヘラクレスは最初ヒッポリテの許を訪れ、おだやかに帯をゆずって欲し いと頼みます。彼女はヘラクレスを歓迎するとともにこれに承知するの ですが、この時ヘラが余計なことをします。彼女の部下たちにヘラクレ スが女王をさらっていこうとしていると告げ回るのです。突然兵に取り 囲まれたヘラクレスは当然彼女らをけちらしますが、ヒッポリテが謀っ たと思い込み、彼女を殺して帯を奪い取り帰って行きます。 (10)ヘスペリテスの園の黄金のりんごを手にいれること この黄金のりんごは元々ゼウスのもので彼が愛人たちに時々あげていた ものでしたが、それを怒ったヘラが誰も近付けないような所に移してし まったのです。ヘスペリテスの園はどこにあるかも分かりませんでした。 ヘラクレスは最初に海の神ネレウスを締め上げてその場所を聞き出しま す。無理矢理白状させられたネレウスでしたが、ヘスペリテスの園は生 身の人間にはたどりつけない場所なのでその園でりんごを守っている娘 たちの父親のアトラスに頼むとよいと教えてくれます。 そこでヘラクレスは天空を支えているアトラスの所へ行き、彼に代って 一時天空を支えているからといって、りんごを取ってきてくれることを 頼みます。アトラスは承知し、ここで歴史上一度だけ彼はこの重要な仕 事の代役を得たのです。アトラスはすぐに娘たちの所へ行きりんごを取 ってきますが、できればこのままヘラクレスに天空を支えさせておこう とします。しかしヘラクレスも言葉巧みに彼を口説いて再びこの重たい 天空をアトラスの肩の上にのせるのです。 一説によるとヘラクレスは直接ヘスペリテスの園に行ったともされます。 そしてりんごを守っていたのはアトラスの娘たちではなく、ヘラが遣わ した怪獣ラドンでした。この怪獣は長さ1キロもある巨大な口を持って おり、するどい歯が並んでいてさすがのヘラクレスもたじろぎました。 彼は蜂蜜をラドンの口の中に放り込み、ラドンがそれを食べたのを確認 すると今度は蜂の巣を放り込みました。すると蜂たちは蜂蜜にひかれて ラドンの胃袋の中に入って行き、ラドンを内側から激しく刺しました。 これにはラドンも耐えられずに死んでしまったのです。そうしてヘラク レスは無事りんごをもぎとることができました。 (11)ゲリュオンの牛をとらえること この牛はごく普通の赤牛でしたが、ゲリュオンは3つ頭の怪物で、しか も2つ頭の犬に守らせていました。ヘラクレスは棍棒で犬を叩いて殺し 遠くからゲリュオンの3つの頭を矢で射抜いて殺して牛を獲得しました。 しかし、そこにあくまで邪魔をしようとするヘラが大量の虻を送り込ん で来たため、ヘラクレスはこれも退治しなければなりませんでした。 (12)地獄の番犬ケルベロスを連れてくること ヘラクレスの難事の中でも、ヒュドラ退治・黄金のりんごと並んで最も 大変だったのが、この仕事でしょう。生きている人間は普通地獄へは 行けないので、その道を見つけるのに苦労しますが、結局アテナの助け によって冥王ハーデスのもとへたどりつくことができます。ハーデスは いくらヘラクレスでもケルベロスにはかなわないだろうと思い、武器を 使わずに素手で捕まえれるものなら連れて行っても構わないと言います。 ところがヘラクレスはケルベロスをものともせずにその3つの首を締め あげて意気揚々と引き上げて行ったのです。これには連れて行かれた側 のハーデスも、連れて来られた側のエウリュステウスもびっくりし、ハ ーデスは身代金を払うからケルベロスを帰してくれと訴え、地獄に戻さ れることになりました。 なお、この時ヘラクレスはついでに地獄の住人となっていたテーセウス を解放します。