※「セキュリティ保護のため...」というメッセージが出る方・日本語が入力できない方へ
イメージの源泉(4-6)トロイ戦争(1)
written by Lumiere on 96/01/09 02:35
イメージの源泉 第四部 ギリシャの風 (6)トロイ戦争 トロイ戦争の物語はギリシャ神話の中でも最も長大な物語です。この物語を今 回紹介するにあたっては、細かい話をできるだけ省略して、全体の流れが見え るような形にまとめたいと思います。 この話の構成は基本的に次のようになります。 (1)不和のりんご (2)戦争の準備 (3)戦争の進行・・・・・・・・ホメロスの叙事詩「イリアス」 (4)トロイの木馬 (5)エレクトラの物語 (6)オデュッセウスの冒険・・・ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」 (7)アイネアスの物語・・・・・ウェルギリウスの叙事詩「アイネアス」 この各々について、できるだけ簡単に見て行くことにしましょう。 まず、物語の発端です。 アルゴ船の乗組員の一人であったペレウスはポセイドンの求婚をも退けた難攻 不落の海の女神テティスを口説き落し、結婚します。この結婚式の席には多く の神々が招かれ数々の贈物を与えました。鍛治の神ヘパイストスがこの時ペレ ウスに贈った甲冑はやがて二人の子供アキレスに伝えられます。 (このテティスは重要な神で、ゼウスはやがて彼女と結婚する為に王座を降り るという説があります) さて、このテティスとペレウスの結婚式の時、争い好きの乱暴な女神エリスが 式に招かれなかったことを怒り、式に押しかけて金のリンゴを食卓の上に放り 投げ、「一番美しい女神へ」と言い捨てて去ります。 このリンゴに飛びついたのは、ヘラ、アフロディーテ、アテナの3人でした。 3人は互いに自分が一番美しいと言って譲らず、どうしても決着が付かずゼウ スに裁定を仰ぎます。ゼウスはこんな争いに判断を下したら選ばなかった2人 にどんな目に合わせられるか分からないので自分では何も言わず、若いトロイ の王子パリスにその役目を命じます。 3人の女神はパリスに賄賂を示唆します。ヘラは力を、アテナは知恵を与える と言いますが、アフロディーテが「この世で一番美しい女を与える」と言った ため、パリスはアフロディーテが一番美しいという裁定を下します。 さて、この世で一番美しい女というのは実はスパルタ王メネラオスの妃ヘレネ でした。パリスはアフロディーテに連れられてスパルタへ行き、王妃を巧みに 誘惑して王宮から連れだし、自分の国トロイへ連れ帰ります。 ところで、ヘレネは絶世の美女でしたので結婚する前は大勢の求婚者がいまし た。オデュッセウスもその一人でしたが、彼はヘレネが結婚する相手を決める 直前に求婚者たち全員で、将来にわたっても彼女を守ろうという誓いをたてさ せていました。そこで妻が連れ去られたことを知ったメネラオスはかっての求 婚者たちに手紙を書き、あの時の誓いを守ってヘレネを助け出して欲しいと要 請しました。 ----------------------------------- しかしオデュッセウスはこの頃はもうヘレネのことなど、どうでもよくなって いたので、この要請に従わなくても済むうに使いの者が来ると狂人を装いまし た。しかしこれは見破られてしぶしぶ救出に行くことにしました。彼はこの戦 いに勇者アキレスを連れて行くように要請しました。 アキレスの母テティスは息子がこの戦いに行けば死んでしまうことを知ってい たため、アキレスを女装させて侍女の中に隠しました。しかしオデュッセウス は巧みに彼の女装を見破って遠征に参加するよう説得。アキレスも母の忠告を 無視してトロイに行くことにしました。 ギリシャ側の総大将はメネラオスの兄のアガメムノン、この他に上記オデュッ セウスとアキレス、それにアイネスやディオメデスがいました。トロイ側では トロイ王プリアモスは老齢でしたが、パリスの兄ヘクトルが総大将で、ほかに アイネアスやサルペードンがいました。 また、当然アフロディーテはトロイの味方でしたが、ヘラとアテナは当然ギリ シャ側の味方でした。ゼウスやアポロンは時にトロイを味方し、時にギリシャ を味方しました。戦闘の準備は約2年間もかかりましたが、その間に小さな事 件が起きました。 アガメムノンが狩りをしていて牡鹿を射たのですが、その牡鹿は月の女神アル テミスのものでした。アルテミスは怒ってギリシャ軍に疫病をはやらせました。 困って神託を仰ぐとアガメムノンの娘の内一番美しい娘を生贄に捧げるように とのことでした。疫病を鎮める為アガメムノンは泣く泣く長女のイピゲネイア をだまして祭壇へ連れて行き、喉を切り裂こうとします。その時アルテミスは 慈悲の心を起こし、彼女を牡鹿とすりかえて、タウリス島に連れて行き、自分 の神殿の巫女にしました。この話の続きは後で出て来ます。 ----------------------------------- いよいよギリシャとトロイの戦いが起きますが、この戦いは9年間続き、その 中に数々のエピソードがありました。その全容はホメロスの長編の叙事詩「イ リアス」で知ることができます。「イリアス」とはトロイの別名です。 戦況は一進一退で、なかなか決着が付きませんでした。ある時ギリシャ勢はト ロイの娘たちを数人とらえますが、アガメムノンがその中のクリュセースを、 アキレスがプリセイスを自分のものにします。ところがクリュセースはアポロ ンの巫女であった為、アポロンがこれを怒りギリシャ軍を妨害しました。そこ で、アキレスがアガメムノンにこの件はお前が悪いと言いクリュセースを解放 するよう言ったところ、アガメネノンは解放するからその代りにプリセイスを よこせと言います。アキレスは怒ってプリセイスをアガメムノンに渡しはした ものの、もう自分は帰ると言い出し、船の中に閉じ篭ってしまいます。そして 誰かが来て戦いに参加するように頼んでも聞き入れませんでした。 アキレスが参加しないと、ギリシャ側の劣勢はどうしようもない状態でした。 医師として随行していたマカオンまで、トロイに加勢していたアマゾンの女王 ペンテシレイアに殺されました。彼の死体をのせた車がアキレスの船の近くを 通った時、アキレスは親友のパトロクロスに、あの車で運ばれている老人は誰 か見てくるように頼みました。マカオンの死体を運んでいたのはネストルでし たが、彼はパトロクロスに戦況を訴え、アキレスを何とか説得して欲しいと頼 みました。パトロクロスも心を動かされ必死にアキレスを説き伏せます。そし てついにヘパイストスがアキレスの父ペレウスに与えた甲冑をパトロクロスが 着て、アキレスの軍勢を率いて戦うことを許可します。 パトロクロスの率いた一軍がやってくると、トロイの兵士たちはてっきりアキ レスがやってきたと思って総崩れになって逃げ出します。ここで戦況は逆転し たのです。パトロクロスは勢いに乗って進軍し、敵の勇者サルバードンも倒し ました。しかし大将のヘクトルとの一騎打ちになった時、きまぐれなアポロン がヘクトルを守護した為、ついに彼の前に倒れてしまいました。 パトロクロスが倒れて甲冑がヘクトルの手に入ったことを知ったテティスはヘ パイストスの許に急行し、事情を説明してアキレスの為に前のよりもっと丈夫 な甲冑を作ってくれるよう要請します。アキレスはその新しい甲冑を受け取る と、アガメムノンの所に行き、もう一度一緒に戦おうと申し入れ、アガメムノ ンもむろん承知して両者和解します。そしてギリシャ軍の総攻撃が始まります。 アキレスはトロイ王家の一人アイネアスと引き分けの大死闘を演じた後、いよ いよヘクトルと対決します。両者の戦いも激しいものでしたが、やがて自分の 方が力が下とさとったヘクトルは逃げ出します。しかしアテナが彼をあざむき 逃げずに最後までアキレスと戦わざるを得なくします。そしてヘクトルは自分 の運命を知りつつも最後の戦いを挑み、アキレスの前に倒れるのです。 この勝負でこの戦争の帰趨はほぼ決りました。 アキレスは勝利を喜び、ヘクトルの死体を戦車にしばって引きずり回します。 これを不憫に思ったトロイ王プリアモスはたった一人の従者だけを連れて、夜 ギリシヤの陣地を訪れ、アキレスの前に土下座してヘクトルの死体を返してく れるように懇願します。アキレスもこの老王の姿に涙を誘われ、息子の遺体を 返してやるのです。 ここでイリアスの物語は終わっています。稿を改めます。