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イメージの源泉(4-4)プロメテウスとパンド
written by Lumiere on 95/12/10 00:35
イメージの源泉 第四部 ギリシャの風 (4)プロメテウスとパンドラの箱 ギリシャ神話における人類創成の物語は地方によって様々ですが、後世の人は それを5つの種族に分類しています。それは黄金の種族・銀の種族・青銅の種 族・半神の種族・鉄の種族です。 黄金の種族はクロノスが王であった頃に神々によって作られたもので神々に似 て苦労や悩みなどはなく老いもなくて死ぬ時は眠るように安らかに死んで行っ たといいます。彼らはゼウスの時代になると良き精霊たちとなり、姿は見せな いものの新しい世代の人間たちを守る役割を負うことになったとされます。 次に銀の種族はやはり神々によって作られたものですが、愚かな心を持ち寿命 も短く、神を敬うこともしなかった為、ゼウスが滅ぼしてしまい、今は冥界の 亡霊となっているとされます。 次に青銅の種族はウラノスがペニスを切られた時にその血が大地に触れてそれ により大地が生み出したメリアイ(とねりこ)を祖先とするもので、金属の心 を持ち、穀物などは食べない強い種族でした。彼らは強靭な肉体で争いばかり していたので、いつか勝手に自分達で滅んで行きました。 次の半神の種族というのはヘシオドスが主張している存在ですが、立派な存在 で、トロイ戦争などに登場する英雄たちはこれに属するとします。彼等は死後 冥界に行くのではなく、ゼウスから許されたクロノスが管理する至福者の島に 行きます。そこは年に3度も作物が取れる楽園なのです。 最後に私達が属するのが鉄の種族です。この種族についてある説は次のような 創成神話を伝えています。 青銅の種族があまりに乱暴でどうしようもなかった為、ゼウスは彼等を大洪 水で滅ぼそうと思った。この時、プロメテウスの子供のデウカリオンとパン ドラの子供のピュラの夫婦だけは神の指示によって箱船を作り乗り込んで、 この難を逃れることができた。洪水が終って箱船から降りた二人はその寒々 として誰もいない大地を嘆いた。するとゼウスが「汝らの母の骨を背中越し に投げよ」と言った。二人は何のことか最初理解できなかったが、やがて母 とは、母なる大地のことと思い当った。大地の骨とは石のことに違いない。 そこで二人は地面の石を拾っては背中越しに投げた。デウカリオンの投げた 石は男たちになり、ピュラの投げた石は女たちになった。 さて、ここで少し時間を戻してこの二人の一世代前のプロメテウスやパンドラ の話をしましょう。 プロメテウスには弟のエピメテウスがいました。「プロメテウス」という名前 は「前もって知る者」の意味で、「エピメテウス」という名前は「事が起きて から知る者」という意味です。さて二人は神々から地上に満ちあふれた生き物 たちに色々な贈物を与える仕事を任せられました。 この時エピメテウスが自分に全部やらせてくれと言ったのでプロメテウスは彼 に任せることにしました。エピメテウスは鳥に翼を、獣に牙を、と与えて行き ましたが、うっかり人間のことを忘れていて、いざ人間に何か贈物をしようと 思ったらもう何も残っていませんでした。 困ったエピメテウスは兄のプロメテウスに相談しますが、何も残ってないので はどうしようもありません。しかし人間は弱々しいので放っておくとすぐ他の 獣の餌食になってしまいそうです。そこでプロメテウスは人間たちに神だけが 持っている火を与えようと思いました。これはゼウスが許すとは思えないこと でしたので、彼はそれをこっそりとヘパイストスの鍛治の仕事場から盗んで来 ました。この時アテナがプロメテウスを助けたという説もあります。 しかし人間たちが火を持っているということはすぐにゼウスの知るところとな りました。彼はどうして人間が火を獲得したのか調べ、やがてプロメテウスが それを与えたことを知ると、プロメテウスを捕らえ、彼に罰を与えました。そ れは永遠の苦しみを与えるものでした。 プロメテウスは不死でしたので、どうやっても死なないのですが、ゼウスは彼 を崖の大岩にしばりつけ、毎日鷲に襲わせるようにしました。鷲はプロメテウ スの腹をくちばしで裂き、肝臓を食べてしまいます。彼は不死なので夜の間に 肝臓は復元するのですが、また翌日には鷲に食べられるのです。この痛みと苦 しみは毎日毎日続きました。アイスキュロスによればこれは三万年間も続いた と言われます。 しかしその苦しみもやがて終る時がやって来ました。ケンタウルスの長老ケイ ローン(ローマ神話のキローン)が彼の身代りになって苦しみ続けることにし た為です。ヘラクレスが誤ってケイローンを毒矢で射てしまい、ケイローンが 不治の傷を負ってしまった為、彼はこの機会にプロメテウスの苦しみも一緒に 引き受けることを申し出たのです。 そこでゼウスはヘラクレスに命じてプロメテウスを苦しめている鷲を殺させ、 プロメテウスを解放してやりました。この解放の理由について一説ではプロメ テウスがゼウスがやがて倒されて新しい王が立つことを大地母神ガイアから聞 かされて知り、そのことを黙っているからとゼウスと取り引きして解放された とも言います。 さて、再び少し時間を戻してプロメテウスがまだ永遠の罰を受けていた時のこ とです。ゼウスの怒りは彼に罰を与えただけでは収まりませんでした。そこで ゼウスは更に仕返しをする為、美しき乙女パンドラを創造し、エピメテウスの 所に送りました。パンドラは女神たちに似せて作られ、アテナが知恵を、アフ ロディーテが美しさを、アポロンが歌声を、アルテミスが月の神秘を与えまし た。そしてヘルメスは彼女に一つの箱を渡し、決して開けないようにと言った 上で好奇心を与えたのです。 プロメテウスは罰を受けることになった時エピメテウスに、神が何か贈物をし て来ても決して受け取らないように、といっていたのですが、彼は美しいパン ドラを見るとそんなことなどすっかり忘れて彼女に一目惚れしてしまい、彼女 と結婚してしまいます。 二人は幸せに暮らしていましたが、エピメテウスが留守の時手持ち無沙汰の彼 女はついついヘルメスがくれた箱が気になってしまいました。ヘルメスが決し て開けないようにと言っていたのですが、それで余計気になってしまいます。 でも開けてはいけないのだから、と我慢に我慢を重ねていたのですが、ある日 どうにも我慢できなくなってとうとう箱を開けてしまいました。 すると箱の中からは病・貧困・犯罪などといった、ありとあらゆる災難が飛び 出して行ったのです。彼女は慌てて蓋を閉めますが、箱の中に残っていたのは 「前兆」だけでした。もしこれも飛び出していたら人間は何か悪いことが起き る場合にそれを予め正確に知ってしまうようになり、希望を持って生きること ができなくなるところでした。 彼女は箱を開けてしまったことを後悔し、さむざむと泣きますが、やがて帰宅 して事情を聞いたエピメテウスは箱を二度とパンドラが開けないように取り上 げた上で、彼女の肩を優しく抱いてなぐさめてやったのです。