return ■ヒカルの悪手
今週の「ヒカルの碁」で、ヒカルは若獅子戦の一回戦、プロ二段の人を相手
に佐為が思わず目を覆いたくなるような悪手を打ってしまいます。ところが、
その少し後、いつの間にかその悪手が他の石とのからみで好手に化けていて、
観戦していた緒方九段を驚かせます。

こういう場面は以前にも何度か出てきました。塔矢名人との対局で打ったま
まヒカルが逃げ出してしまった、最後の一手に名人は「悪手にも見えるが面
白い」とつぶやきます。息子の塔矢アキラとの3度目の対局の時「それでは
あまりにも」とアキラがつぶやく手を打ちますが、それを佐為は「面白い。
でも今のヒカルには、まだその先が打てない」と評します。

私は将棋の世界で、悪手を指す名人を知っています。羽生四冠です。最近は
棋風も安定してきたようでなかなかやってくれないようですが、十代のころ
彼は劣勢からしばしば「悪手」で逆転勝ちしています。

定石からは考えられないような所にせめて来るので、対局している相手も、
普通の人とやっているのなら冷静に対処して、なんとかなるのですが、相手
が羽生だという意識があるのでこれは何か深い意味があるのでは?と考え、
考えても分からないので混乱している内に、ペースをつかまれて逆転負けと
いうのがよくありました。無論他人の何倍もの棋譜を研究している羽生には、
そういう考えられないような変化からでも、どう指していけばいいのかが、
ちゃんと見えている訳です。

ひょっとしたら、この悪手の利用というパターンを作者は今後も、ひとつの
スタイルとして使うつもりでは?と、ふと思わせた一局でした。

2000.03.08

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