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return 最強初段編(149-158局)


第149局・最強初段

ヒカルとアキラは塔矢の碁会所でこの所毎日打っていた。局後の検討をする二人だが、周りで見ていたギャラリーが「そろそろ始まるぞ」と言って逃げ出す。この検討が必ずケンカになるのがこの二人の常である。

さて、ヒカルの今日の対局は本因坊戦一次予選の三回戦で相手は川崎三段。ヒカルは同じく今日対局がある和谷に「早く高段者と打ちたい」ともらすのであった。その対局相手の川崎は、相手は今年入段した初段で、強い奴ならもう二段に昇段しているはずだからそれほどでもない奴だろうと考えていた。やがてヒカルが席に付き、隣に和谷も座ってお互い頑張ろうと声を掛け合ってから対局が始まる。和谷の方は名人戦の一次予選二回戦である。

昼休み。ヒカルが昼食に立ったあと川崎三段は、思わずヒカルの知り合いらしいその和谷に尋ねてしまった。「なんで彼はまだ初段なの?こんなに強いのに」と。和谷はヒカルが春から夏にかけて手合いをサボッていたので当面はまだ初段ですと笑って答える。川崎は「彼は最強の初段だ」とつぶやいた。

和谷は控え室で盤面から見て取れたヒカルの厳しい打ちっぷりを考えていたが、その時日中韓Jr杯(北斗杯)の噂を聞く。すごい。自分たちにも活躍の場がと喜びそれをヒカルにも伝えようとするが、ヒカルが手にしていた扇子を見て言葉を呑み込んでしまった。

「何だそれ」「売店で買った」といって扇子を高く掲げて見せるヒカル。そうそれはヒカルにとっては夢の中で佐為から渡された扇子の代わりなのだ。和谷はそんなことは知らないがヒカルのその堂々とした雰囲気に圧倒されてしまい、日中韓Jr杯の事は結局言えなかった。そして「さぁ今日の対局一気にカタつけてやる」というヒカルの姿に、Jr杯の代表枠に自分が入るのは、ヒカルがいる限りかなり大変なことであることを認識するのであった。

第150局・新しい舞台

本因坊リーグ。アキラは今日は一柳棋聖と戦っていた。そこに乃木と芹澤が見学に来る。彼等はアキラがどのくらいの力を持っているのか知りたかった。盤面は一柳の優勢な情勢で進んでいる。そこにヒカルも見学に訪れる。塔矢君の友達だろうか?と眺める芹澤。

ヒカルは記録係のそばで棋譜を眺めていた。アキラが難しい局面に追い込まれているが、そこで彼は相手のシマリにツケて黒の勢力範囲を分断する手を思いついた。その時アキラも白石を持って盤面に打ち込む。

一方、韓国から日本に戻る飛行機の中で、三星火災杯で破れた倉田七段が機内食をヤケ食いしていた。近くに座ってその感想をパソコンに打ち込んでいるのは突然異動になった天野記者の後任として入ってきた若い古瀬村と渉外部の土井である。彼等の話題はいつしか日中韓Jr杯(北斗杯)のことになっていた。日本に勝ち目はないだろう。頼れるのは塔矢アキラくらいだしという土井。そして誰かが進藤初段の名前をあげていたが実績もない彼の名前がなぜ.....と言ったところで後の席で寝ていた通訳の人が割り込んでくる。「韓国で洪秀英(ホンスヨン)君に聞かれたんですよ。日本語で」「進藤ヒカルはプロになってますか?と」と。

さて本因坊リーグ。アキラが打ち込んだ場所はヒカルが考えついたのと同じ場所だった。思わず顔面硬直する一柳棋聖。驚愕したのは乃木と芹澤も同様であった。二人ともそんな手は思いもよらなかったのである。一柳も今までののんびりしたムードから一転し、激しい闘志を剥き出しにした表情で強い調子で石を打ってくる。白の連絡を兼ねたツケに一柳はそれを強引に分断するハネを瞬時に打ってきてヒカルを「ノータイムでこれを打つのか!?」と驚かせる。

やがて終局。感想戦を見ずに部屋を出たヒカルだが、そこに一柳棋聖が彼を押しのけるようにして部屋から飛び出して来た。無言でエレベータに飛び込む。それをあぁあと言って見送る記者。そこに芹澤も出てきて「読み負けたのがよほど悔しかったんだろう」と言う。そして「だけどあの一手は一柳先生だけじゃなく、私も乃木先生も、あそこにいた誰もが気付かなかった」と言った。その言葉を既に階段を降り始めていたヒカルは聞いていない。

次の手合日。ヒカルの相手はまたあのおばちゃん棋士。アキラの時と同様「なんでこんな強い子が低段にいるのよ。勝てるわけないわ」と心中つぶやいている。そしてヒカルが扇子を碁笥に打ち付けた音でビクっとして投了。礼をして席を立つがヒカルは詰まらない対局だなと、先日のアキラと一柳の対局を回想していた。

対局室(洗心)を出たヒカルに古瀬村が「韓国の洪秀英プロを知ってる?」と声を掛けてきた。ヒカルは洪がプロになっていることを知り素直に喜ぶ。そして以前日本で彼と対局して勝っていることを告げる。すると古瀬村はなんだ日本にも期待できる棋士がいるじゃないかと言い、日中韓Jr杯の話をヒカルに教えた。

※先週和谷君が聞き込んでヒカルに言えなかった北斗杯の話が古瀬村からヒカルに告げられます。このあたりの話の運びは巧妙ですね。さすがほったさん。天野さんは退場。彼はヒカルの理解者になってしまいましたので、こういうキャラは退場させるのが王道です。さて本因坊リーグの棋士たちで、乃木元名人はどうもやられ役の臭いがプンプンです。先日は緒方に負けてますし、この先生今後も負けているところばかり出てきたりしないでしょうか。芹澤さんはネット上で見ていると、けっこう人気が高いようですね。

第151局・オレだって!

和谷のアパートの研究会。日中韓Jr杯の話を聞き乗り気になる伊角だが、18歳以下と聞き、がっかり。この場で今回のプロ試験の合格者が伊角と門脇ともう一人は本田であったことが語られる。その本田も今回のJr杯の出場資格がある。中国韓国は強いぞと言う伊角。日本も塔矢がいるけどという言葉にヒカルは「オレだって」という。次は本因坊戦一次予選決勝。これに勝てばいよいよ次は二次予選で高段者と当たる。いつまでも塔矢の背中ばかりは見ていないと宣言。すると和谷も「オレだって」と言う。今は進藤に比べたら少し足踏みしているかも知れないがまだまだ自分は行くとこちらも強気の宣言。そこに小宮たちもやってきて場がなごむ。

さてその本因坊戦一次予選の決勝。ヒカル劣勢。しかし正確に寄せの手順を読んだヒカルに対して相手は微妙なミスが出る「よしいける」と思うヒカル。そしてヒカルの読みの正確さに驚嘆する対局者。ヒカルの逆転勝ち。その対局を碁会所で検討していたヒカルとアキラ。ひどい碁だなと正直に言うアキラ。アキラはこれはヒカルがうまくて勝ったのではなく相手が下手で負けたのだと本当の事を指摘し、自分ならこう打って逆転はさせないと手順を示す。そしてこの付近から毎度のように喧嘩。

この喧嘩の最中にアキラの口から北斗杯の代表三名のうち一人は本因坊リーグにいることでアキラが既に代表として決定していることが語られた。ずるいぞと言うヒカルだが、そんなこと言っても仕方ない。ヒカルは北斗杯の予選が終わるまではここに来ないと言って碁会所を出た。そして去り際「神の一手はオレが極めるんだ」と宣言した。

※こう来なくちゃいけません。ヒカルとアキラが仲良くしていたらこの漫画の興味は半減。二人はライバルなのですから、対立があってこそです。ここまでが第二部の導入部分という感じですね。次回からやっと本編が本格的にスタートという感じになります。

第152局・相手は七段

年が明け塔矢の碁会所の客はアキラが中国語と韓国語を習っているという話から、Jr杯のこと、そして進藤のことと話題が展開していた。その進藤は今週七段の棋士と対局があるはず。お手並み拝見だと一人の客。

そして木曜日。ヒカルは初めての高段者の対局日である。白川七段、篠田院生師範などにも声を掛けられ、森下九段が別室で対局しているのも見て気持ちを引き締める。アキラの姿もあった。あいつはもう木曜日の常連だな。今日やっとオレは五段以上の人と打つと考えるヒカル。しかしその相手がまさかあんたとは、と声に出して言うヒカル。

それはあの御器曽であった。「七段とは思わなかったぜ」「お前――プロだったのか」とこちらも驚く御器曽七段。二人は1年前新初段シリーズの後の地方での囲碁大会の時のことから鋭い前哨戦を始める。そして対局が始まる。

一方北斗通信社。そこでは今回のJr杯を取り仕切る室長に若い女性社員が、なんで囲碁などという地味なものをと尋ねていた。室長はこれはこの会社のアジア進出を念頭においたものだと答える。中国や韓国では棋戦のことが大きくマスコミに取り上げられる。同時に北斗通信の名前も知れ渡ることになると。だから今回日本は別に勝つ必要などないのだと。

一方ヒカルと御器曽の対局。御器曽はパワーは衰えてもテクニックでは負けないぞと思いながら、まだヒカルと口論もしていた。御器曽が巧みに地を稼いでいこうとしているのに対しヒカルは中央を重視して展開を進めていたが「ケンカなら盤上で売れ。買うぜ」と相手を挑発した。

※基本的に日本棋院では水曜と木曜にプロ棋士の対局がありますが、水曜日が六段以下、木曜日が七段以上です。なぜここで切れているかというと、つまり七段以上の棋士が大量にいるからで、それはつまりヒカルが言っているように段位は一度上がると負け続けても下がりませんので、どうしても段位の高い人がたまってしまうためです。七段以上と六段以下が打つ場合は高段者に合わせて木曜日に手合いがあります。アキラはどんどん勝って高段者とじゃんじゃん当たっているので木曜日の常連になっているわけですね。

※日本棋院の棋士のマナー集にも、目上を敬うようにという条項があります(^^;

※ケンカは盤上で売れ、と言ってますが.....最初に売ったのはヒカルだと思うのですが(^^;;

第153局・一歩前へ!

盤上でケンカしようと言った割にヒカルは手厚く対局を進めていた。御器曽もさすがにヒカルが中央に模様を広げてきたのを嫌って左辺の黒の勢力を分断しようとするがヒカルは冷静に中央の領域の境界線固めに専念する。そこを真ん中から突破しようとする御器曽。ヒカルも応戦するが、御器曽の白石は中央できれいにしのいだかに見えた。「華麗な打ち回しだろ。ギャラリーがいれば歓声があがるぞ」と自画自賛する御器曽。しかしヒカルは自分に話しかけているヒマがあったらもっとよく盤上を見ろよとだけ答える。

一方北斗通信の室長と先日の女性社員は会場となるセブンスターホテルの下見とホテル担当者との打ち合わせに訪れていた。私、塔矢アキラ君応援してますよ、と昨日聞いたばかりの棋士の名前を語る彼女だが室長はもう一人関西棋院にも強い子がいるらしいと語った。

一方ヒカルと御器曽の対局。御器曽の「勝利宣言」から数手しか進んでいなかったが、もう決着は付いていた。言葉を失っている御器曽。その敗因を指摘するヒカル。御器曽は投了し負けを認めながらも「秀策に詳しいようだな。よく並べるのか」と尋ねる。「ああ毎日ね」と答えるヒカル。しかしケンカの続きで「あんたは碁の勉強してないだろ」とよけいな一言を付け加える。フンと言って去る御器曽。そして、その様子を少しだけ早く対局が終わってどうなったかなと眺めていたアキラ。

進藤勝ったようだなと安心して微笑むアキラ。無言で立ち上がるヒカル。二人が前後して対局室を出る姿の向こうに光が射していた。

※地と厚みの問題はしばしば碁で話題になるのですが、ヒカ碁の初期のほうでヒカルの「宇宙を作る」という言葉がありましたし、越智に対するアキラの指導碁でも「君は地を気にしすぎている」という発言がありましたし、ほったさんはどうも後者重視なのではないかという意見がネットでも見られるようです。すると武宮の棋譜なども今後結構登場してくるかも知れないですね。

※佐為がいなくなったあとでヒカルがどういう碁の勉強をしていたのかが不明でしたが今回初めて、秀策の棋譜を並べていることが語られました。彼にはこのあと呉清源などもぜひ並べてもらいたいですし、現代の中国や韓国の強い人の棋譜も研究して欲しいですね。あとはやはりネット碁をして欲しいな。

※今回の展開については2chではヒカルが負ける展開の「第153局・油断」などというウソバレが出ていました。プロ試験の時に、負けるもんかと気合いが入りすぎても手が乱れるなどとヒカルが越智に言うシーンもありましたし、ちょっと心配したのですが、やはり「御器曽プロなんかこいつの敵じゃない(c)-Kurata」でしたね。

第154局・上島見参!

葉瀬中の1月末。三谷は数学や英語の勉強を金子に教えてもらっていた。その金子が教室に近づいてきたあかりを認めて「進藤は今日はお休みよ」と言う。別にヒカルを探している訳ではない、などと言い訳するあかりだが、金子は進藤は忙しいこともあるだろうし、まわりが受験受験で来ても面白くないのではと言った。そして、家が近くなんでしょ。きっと時々会える、と言われてつい赤くなるあかりであった。

一方理科室。小池は手持ちぶさたに雑誌を読んでいる岡村に一局打とうよと言うが岡村はやる気がない。実は岡村と矢部を囲碁部に入れたのが筒井ではなく将棋部のOB加賀であることはバレてしまっていたのだが、逆にそれが加賀と知れると将棋部の先輩達が「加賀には逆らうな!!」と焦った表情で言い、結果的に岡村はここに来ているのであった。

岡村はそのうち矢部が来るから部長は矢部と打って下さいよと言って帰ろうとするが、そこに矢部が新入部員を連れてくる。上島というその子はいつも父親と打っているという。矢部はこれで自分と上島と小池で出れば大会は少しは希望が見えて来る、と言うがすると岡村は「待て。三将はオレだ」と言って、上島と勝負してどちらが出るか決めようと言う。勝負を受けて碁盤の前に座った上島は、安っぽい石だねなどと言いながら、手慣れた手つきで石を盤上に打ち付けた。

しかし。。。。。。数十分後、そこには岡村が「大勝利!」と言って喜ぶ姿があった。矢部は「上島って....弱い〜〜〜」と嘆く。小池は「お父さんと、五目並べじゃなくて囲碁やってるの」と聞く。「うん」と答える上島。「そっか。打っても打っても強くない人だっているもんね」と小池は納得することにした。「もうヤダ」と失意の矢部。

さて夕方遅くまで塾で津田と一緒に勉強したあかりは家に帰る途中、なんとなく足がヒカルの家に向いた。金子から「時々は会える」と言われた言葉を思い出したのである。ヒカルの部屋に電気がついている。「もう勉強しなくていいなんてうらやましい」とつぶやいていたあかりに、ちょうど家に戻ってきたヒカルの母が声を掛けた。

急ぎの買物だというヒカルの母に「そんなのヒカルに行かせれば」というあかりだが、ヒカルの母は「いつもあの子の部屋からは遅くまで碁石の音が聞こえてくるから、とても頼めない」と言う。気を付けて帰るように言って家の中に入るヒカルの母。あかりはあらためてヒカルの部屋を仰ぎ見た。

そこに自分の母から携帯に着信があった。「久美子とおしゃべりしてて遅くなって」と言い訳するあかり。しかしあかりは「私がんばる」と言う。母が、え?なんのこと?と聞くのに慌てて「何でもない」と答えると、すぐ帰るといって携帯を切り、またヒカルの部屋を見上げて「ファイト!ファイト!」と自分に声を掛けて走って自宅に向かった。

※いい話でした。普段なら「こんな話いいから、早く北斗杯始めろ〜!」と言いたいところですが、今回のあかりは健気で、ほんとに良かった。それだけだと少女漫画の世界になっちゃうから、そのために上島君がいるんですね。今回矢部君の相棒の名前が岡村君であったことが判明しました。ということで、これはナインティナイン。上島はダチョウ倶楽部ということで、このあと果たして寺門とか肥後とかもでてくるのでしょうか??

※時間的な描写はないのですが、あかりが携帯で「おしゃべりして遅くなった」と言い訳したということは、あかりは随分長時間、ヒカルの部屋の下で、そこを見上げていたんでしょうね。ひとつ間違えばストーカーですが、純粋な乙女心ということで、今回は良いでしょう。

第155局・来ない2人

伊角の新初段シリーズ。相手は桑原本因坊で、棋院前での写真撮影の段階から桑原は伊角にセクハラまがいのちゃっかいを入れている。この桑原の口から伊角がプロ試験は全勝で通過していたことが語られた。

そのころ棋院のそばの市ヶ谷の駅を出た門脇は棋院に昇る坂の所を曲がろうとしているヒカルの姿を認め「進藤君!」と声を掛けた。ヒカルも振り返って「門脇さん」と返事する。ヒカルは週刊碁で今回のプロ試験合格者の一人が彼であったことを見ていたのである。「驚きました。院生の時一度だけ打ったあの人がって」と語るヒカル。それに対して門脇は、本当は君と同じ年に試験を受けるつもりだったが、君の圧倒的な力に驚き、合格はできても、君のような棋士と戦うにはもっと力を付けなきゃだめだと思い1年受験を伸ばしたんだと語った。

しかし門脇は続ける。「そんな君がプロ試験で三敗もした。そしてプロになってからは不戦敗の連続」

「なぁ、おい」「どうなってんだ」

その頃、幽玄の間の記者室では、進藤と門脇がまだ来ないことを気にしながら和谷・本田・越智が対局の開始を待っていた。ここで北斗杯の話題になり、越智が関西棋院にも強いのがいるらしいという話をする。やがて対局が始まるが、まだ二人は来ない。まさか二人で遊んでるんじゃ、といった和谷の言葉をとがめて本田が「あれ、進藤のことだ」と言う。

それはプロ試験の大詰めの頃。門脇が「大島。福井。本田。あいつが負けたのはこの3人。信じられん」と言っていたというのである。和谷がその3人というのは進藤が負けた相手だと指摘する。そして和谷も思い出していた。門脇が昨年受験を延期した理由が、子供に大敗したことだと言っていたということである。まさか、その子供というのが進藤か?といぶかる3人。

一方棋院の前にいるヒカルと門脇。門脇はどうなってんだという言葉を繰り返した後なごんだ顔になり、3敗は実力に波が出たのかとも思おうとしたが、しかし君はそんな波が出たからといって、あの程度の3人に負けるようなレベルでは無かったと言う。そして自分はあの時、遙かに年下の君に尊敬と憧れを抱いたんだ。笑うか?という門脇。「ううん」とまじめな顔で打ち消すヒカル。そして「あの時の期待を自分はまだ君に持っていていいのか?」と問う門脇にヒカルは言った。

「門脇さん、オレと打ってみます?今から」と。

第156局・ヒカルvs門協

ヒカルは門脇と一緒に棋院の2階の一般対局室に行き、係の人に「ちょっと打たせてもらうね」と声を掛けて隅の方の席に行った。「1年半前の自分と比べられるから大変な対局だ」と謎のような言葉を言うヒカル。それに対して「自分を1年半前と比べてくれ。絶対強くなってるから」という門脇。「君ともう一度対局するのが夢だった。こんなに早く叶うなんて」と言うが、彼と1年半前に打ったのは佐為。実はもう二度と対局が叶わないことを門脇は知らない。ヒカルはその言葉を胸に受け止めながら右上隅星から右下隅星、右辺星と三連星の布石を打ってきた。

前回は完璧にもてあそばれてしまった。自分にはとても追いつける相手に思えない相手。自分はその相手に今回ももてあそばれたいのかも知れないと門脇は思う。そして早めに仕掛けていったがヒカルは戦いを受けない。あくまで冷静に石を広げていく。門脇は自分のパンチが効いているのか実はかわされているのか疑心暗鬼になり始めていた。しかしそこにヒカルの黒石が割り込んできた。

一方幽玄の間。桑原は打ちながら相手の石運びに手応えを感じ始めていた。名前は何と言ったかと尋ねるが、集中している伊角の耳には入らない。立会人が「伊角慎一郎君ですよ」と代わりに答える。桑原は、しばらく新人が不作だったが塔矢アキラ以降ほんとに面白いのが現れ始めたと口にする。そしてあいつの真価はまだ見てないし、とヒカルの顔を思い浮かべた。そこに入ってきた伊角の強手。桑原はかなり真剣な表情になって応手を打った。

第157局・思い出

ヒカルの強烈なカウンターパンチの連続に門脇は「だめだ、やられる」と負けを覚悟する。少し進んだ所で投了。感想戦をする二人だが、門脇は何か割り切れないものを感じていた。やがてそろそろ行かなければ伊角の対局が終わってしまうと思い出した二人。先にヒカルが席を立つ。門脇は「キミのような棋士がいると思うとプロの道を選んだ甲斐がある」と正直な感想を言うが、ヒカルは門脇の表情から別の気持ちを読みとり本当はどうなのかと尋ねる。その言葉に虚を突かれてつい「以前のキミのほうが、それでも強かったような」と漏らしてしまう門脇。それに対してヒカルは

「オレもそう思う」

と満面の笑みを見せて言うと、幽玄の間の方へ走り去った。残された門脇は、そんな昔の自分の方が強かったなんて笑って言ってちゃだめだろ、あいつが本当にすごい奴なのかどうか、また分からなくなってしまった、とつぶやく。

ヒカルが記者室に来た時、対局はちょうど終わった所だった。伊角の勝ちである。遅かったことをとがめる和谷だが、ヒカルは門脇と打っていたとだけ告げて幽玄の間に行った。そこに入れ替わりで門脇が記者室に入ってくる。

和谷が門脇に進藤と知り合いなんですかと尋ねると門脇は、彼が院生の時に一度だけ対局したことを語る。やはり、あの「子供」は進藤だったのかと確信する和谷・本田・越智。しかし門脇が更に「しかし以前の彼の方が強かった」と語ると、院生時代にたくさん手合いを打っている3人はまた訳が分からなくなってしまうのであった。

夕方。本田は自分の師匠・船村の家を尋ねた。そこに船村の知り合いで関西棋院の吉川八段が、今年関西棋院でプロ試験に合格した社清春という中学生を連れてきていた。本田と一局打とうということになり社が先手を取るが、社は本田をチラっと見ると「あれ、やってみよう」と言って初手を天元に打ってきた。

思わず硬直する本田。彼はやや不愉快な気分がするのを抑えながら「どんな一局だって受けてやる」と白石を取った。

第158局・初手天元

対局は本田の完敗であった。社と吉川八段が帰ったあと一同はその対局を検討する。天元は地とは無縁の手。しかし盤全体を睨んでいる。これが働けば勝ち、働かなければ負け。船村が自分は打ったことがないが相手に打たれたことはあると語る。まるで綱渡りのような碁。その綱渡りきれるか渡りきれないかという厳しい戦いを続け最後相手は綱から落ちたと。

船村の家を出た本田は焼き芋屋さんに遭遇する。「学生さん?」「高三です」「じゃ受験かい。大変だね」「いえ大学へは行きません」「就職かい。どんな仕事をするの?」「囲碁の棋士です」「碁を打つんかい。変わった仕事だね」と微笑んで言う焼き芋屋のおじさん。その笑顔に本田はあらためて、自分はプロの棋士になることを強く認識した。

北斗杯の一次予選。東京本院は18歳以下が8人おり、予選で4人に減らすことになっていた。越智は山田。和谷は女性の棋士。そして本田はヒカルとであった。組み合わせを見て「望むところだ」と気合いの入る本田。その本田が先手を取った。本田の頭の中に強いプロとしての自覚がわき上がってくる。本田は初手を天元に打ち込んだ。

驚くヒカル。しかしヒカルは「本田さん面白い所に打って来たな」と言って思わず笑みが出て白石を右上隅に打ち込む。

対局が進む。ヒカルの狙いは天元の石の封じ込めである。それが緩手になってしまえば本田の負け。だから周囲では目一杯戦って黒に楽をさせない。中央付近で本田がハネを打つ。するとヒカルは「そんな手じゃオレには物足りないぜ」と心中で言って厳しい応手を返した。

越智の相手、和谷の相手が投了する。もう一組稲垣の所の対局も終わった。そして本田も投了した。黒は盤上で全滅に近い惨状。完敗であった。


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