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竜虎激突編(141-148局)
第141局・復帰初戦村上二段は1年前の若獅子戦の時の対局のことを思い出しながら席に付く。「寄せの甘い奴だった。地に辛い碁を打とう」と。同じ日同じ部屋で対局のある塔矢は、碁盤の前に座るヒカルを一瞥したまま無言で自分の席に付いた。
一方葉瀬中の囲碁部では三谷・金子も含めた囲碁部員達が先日の囲碁大会のことを話していた。男子は決勝まで行って海王に敗れたこと。女子は一回戦を勝ったこと。そして、あかりによりこの囲碁部が筒井一人から始まったことが小池に語られ、3年生の5人が卒業して一人になる小池に今後の部の運営が託される。
一方アキラの対局者は「なんでこんな強い子が低段にいるのよ」と関係ない方面に思考が行きつつあった。どうにも話にならない状況。アキラが鋭い視線を送ると気合い負けして投了してしまった。ちょうどその頃、次回ヒカルと当たる辻岡二段も相手の投了で対局が終わる。彼は1年半前の新初段シリーズの時、和谷たちから「ヒカルはアキラのライバル」と聞いていた。
辻岡は『ライバルというのなら、塔矢君は進藤君の対局を見に行くだろう』と思うが、意に反してアキラは進藤の方をチラっと見ただけで、そのまま帰ってしまう。どうして?と疑問に思う辻岡だが、次の瞬間、進藤の前にいるのが村上であることに気づいて考え直す。
『低段者との対局など見る必要がないということか?』
そして辻岡はまもなく行われる名人戦の一次予選で、アキラとヒカルが直接対決することに気づいた。そして対局室を去るアキラもその直接対決のことを考えていた。『彼の力は、もうボク自身でしか計れない』
第142局・走り出した二人
村上二段とヒカルの対局は進んでいたが、村上の打ち方はうまくやっているようで全てヒカルがその上を読んでいて、地合いで大差が付き始めていた。それに気づいた村上は戦意喪失して投了する。
対局が終わった進藤を棋院の坂巻が、ちょっと来るように言う。そして長期間手合いに無断で出て来なかったことについて厳しく注意する。素直に謝り、二度とこんなことはしませんと誓うヒカル。そんなヒカルに坂巻は、キミに期待している人もいる。頑張るようにと諭して帰す。
(坂巻はヒカルが院生試験の願書をもらいに行った時、ヒカルが棋譜を知らないと聞き、そんな子は帰ってもらえよ、と言った人である)
一方今年もプロ試験がまず予選から始まった。去年とは明らかに違う顔の伊角を見て、篠田院生師範は天野記者に言う「囲碁界では才能の開花は早くないといけない言うが、成長のペースは様々だと思う。人生遠回りは悪くない」と。
そして次の大手合。辻岡がヒカルと対局していた。少ない手数で効率よく黒石を優勢にしていくヒカルに対して辻岡は打ちにくい中を何とかしのいでいこうとしていたが、展開は次第に一方的に。やがて投了。自分の勝星を記録して帰るヒカルを優しい目で見送った天野は、新しい波の予感を実感し始める。
そしてアキラは王座戦二次予選2回戦、天元戦二次予選1回戦で、次々と高段者を破っていた。
第143局・碁界鳴動
碁聖戦本戦。塔矢行洋引退により空いたタイトルを、緒方十段が乃木九段を破って取得した。感想戦の場で緒方に揺さぶりを掛ける桑原本因坊だったが、緒方はそれを軽くいなした。桑原は相手が手強くなってきていることを感じる。
一方アキラは座間九段と本因坊リーグで対局していた。1年半前に新初段シリーズで対局した相手。その時は座間が後番の上逆コミのハンデを背負っていたが今回は互先。座間はアキラの成長に驚きながらも強い牽制を与えて対局を始める。
その頃、棋院の出版部に驚くべき報せが入っていた。引退した塔矢行洋が、中国の団体戦リーグの北京チームと契約したというのである。「引退して日本の棋戦に縛られない今、先生には強い人の中で打てることが魅力なんだ」と天野はつぶやく。
一方その同じ報せを聞いて、中国棋院の楊海と友人も騒いでいた。その楊海は囲碁のコンピュータソフトの制作に夢中である。スポンサーを得て開発資金のメドがたち、膨大なデータの入力を始めさせていた。一般に囲碁のソフトがトッププロといい勝負になるにはまだ100年かかるというが、楊海は数年で追いつかせるつもりでいた。
第144局・漸くこの日が
森下研究会に出るのに棋院に来たヒカルは1階で偶然倉田六段とすれ違う。アキラと対局できるのは倉田が名人戦2回戦で彼を倒してくれたお陰だと言うヒカル。倉田はアキラに勝てたら、こないだの「倉」だけ書いたサインの続きを書いてやるよと言う。しかしそのサインをどこにやったかと焦るヒカル。
森下研究会。ヒカルは冴木に圧勝していた。驚く面々。その調子でガンガン飛ばせとハッパを掛ける森下。そしてヒカルのことを頼もしそうに見る白川七段が「今度はボクと打とう」と言った。白川としても初めての本気でのヒカルとの対局である。
ヒカルは最近のアキラの対局の棋譜を入手して研究していた。『お前が追っていた佐為はもういないけど、オレの碁の中に佐為はいる。そしてオレはもっともっと強くなって、お前とずっと打つから、それでいいだろう』と碁盤の向こうに見えるアキラの姿に呼びかけていた。
ヒカルとアキラの対決の前日。緊張してるね、とヒカルに声を掛けるあかり。そんなあかりにヒカルは「時間があったら一局打たないか」と誘う。お前と打てば心が静まるだろうからと言うヒカルに、あかりは彼が大人になってきたことを感じる。
第145局・ヒカルvsアキラ
当日。この日は冴木が芦原と、和谷は真柴との対局があった。それぞれ思う所のある対局である。ヒカルが来たところで和谷は、伊角からプロ試験に合格したという連絡を受けたことを報せる。「あの人プロに来たら上がって行くの早いだろうな」と素直につぶやく真柴。
そこにアキラと越智が一緒にエレベータで上がってきた。最近高段者をどんどん破っているアキラだけに、越智はエレベータの中で進藤が相手なら楽勝でしょ?と聞くが、アキラは越智に「やってみなければ分からない」と言う。その話を聞いた和谷は「本当に進藤は塔矢のライバルだったのかな」と独り言のようにいう。
アキラとヒカルは約3年ぶりにまともな会話を交わしていた。「長かったな」「三将戦以来2年4ヶ月ぶりだ」「萩原九段や座間元王座との棋譜は見た。今日はオレの力を見せる番だ」
開始の合図が響く。冴木vs芦原、和谷vs真柴、越智vs辻岡の対局が始まる。ヒカルとアキラは大手合ではなく名人戦予選なのでニギリから始まる。先手はヒカル。ヒカルは佐為風に右上隅小目から打ち始めた。アキラはすぐに(自分から見て)右下隅小目に応じる。「早い」と思うヒカル。そしてヒカルが左下隅小目に打つとアキラはすぐに(自分から見て)左上隅星に応じた。
「持ち時間5時間の打ち方じゃない。早碁だ」と思うヒカル。そしてヒカルがアキラの石に掛かると、アキラはそれを受けずにヒカルの他の隅の石に掛かり返して来た。乱戦突入の意志である。ヒカルは「いいとも」とそれに応じる姿勢をとる。
第146局・ヒカルの碁
ヒカルは思っていた。確かにまともに対局したのは、あの三将戦以来2年4ヶ月ぶりかも知れない。しかしあの時は途中まで佐為が打ったものだ。最初からお前と対局するのは本当はこれが初めてなんだと。
アキラが難しいハサミ方をしてきた。ヒカルはそれに普通に応じた場合の20〜30手先を一瞬で読んで、それでは自分の一手負けになると判断。上の方にスベル手を打つ。そのスピードのある的確な判断を見てアキラは「高段者と変わらない手応えだ」と感じる。そして、彼は思いだしていた。
尹先生が見せてくれた洪とヒカルの一局の棋譜に驚いた時、天野記者にくっついて行ってプロ試験でヒカルが合格した第一報を聞いた時、倉田六段が塔矢邸を訪問した時に「進藤は要注意だ」と言っていた時のこと。そして、アキラがヒカルをやはり自分の思っていた通りの実力だと思った時、ヒカルが打った一手に、今まで早碁で打っていたアキラの手が一瞬止まる。
その頃、週刊碁の編集部では、今度創設されそうな日中韓Jr杯の話題が上がっていた。韓国からは新鋭の洪秀英(ホンスヨン)という子と、連勝を続けている高永夏(コヨンハ)あたりが出てきそうだと天野はいう。18歳以下という話を聞き、日本にそんな年齢で中国や韓国に対抗できる子がいるかな、と編集部の中には暗い空気が流れ掛ける。一人は塔矢アキラで行ける。しかし一人だけでは、と言っていた時天野は言った。「進藤君がいる」と。
アキラはそのヒカルの一手にsaiを見ていた。インターネットでの父とsaiとの対局が思い起こされる。「君の中に見え隠れする、もう一人の...」と思いつつ、アキラは対局を進める。
第147局・ボクだけがわかる
「進藤」という名前を聞いて、他の記者たちは「あの手合いをサボっていた子ですか?」と意外だという風な反応をする。しかし天野は塔矢行洋元名人・桑原本因坊・緒方十段らがずっと彼を気に掛けていたことを話す。新初段シリーズはひどい碁と思えたが、それで元名人も本因坊も彼の評価を下げなかったこと、そして塔矢アキラがハッキリ彼をライバル視していることを知って天野も進藤に期待するようになったこと。
他の記者が倉田六段も進藤のことを気にしていたようだと発言する。そして復帰後のヒカルが8戦全勝の成績であることが語られると、編集部のムードは一気に明るくなった。その雰囲気に、あまり夢を語りすぎてもと自制の言葉を言う天野であった。
一方対局は昼休みの打ち掛けとなる。大きく肩で息をするヒカル。二人がまだ碁盤の前から動けずにいる間に越智・和谷・辻岡・冴木が二人の対局の様子を見に来た。物凄く速い進行・複雑な戦い・競り負けていない進藤、と彼等は盤面から読みとる。しかしその緊張は底抜けに明るい芦原の声で中断され、芦原に引っ張られる形で皆昼食に行く。
アキラが動こうとしないので先に昼食に行こうとするヒカル。その時アキラが衝撃の単語を口にした。「sai」と。
アキラは言う。君と対局していてネットのsaiを思い出した。君がsaiだ。キミを1番知っているボクだからわかる。君の中にもう一人いるんだ。出会った頃の君。碁会所で2度ボクと打った、あの君がsaiなんだと。ヒカルは戸惑いながらも、アキラが自分以外誰も知らなかった佐為を見つけてくれたことを嬉しく思っていた。アキラもさすがにとっぴなことを言い過ぎているかも知れないと思い「ボクは変なこと言ってるな」と発言を取り消す。
第148局・なつかしい笑顔
「いや」アキラは自分の言葉を否定するように、そして自分を納得させようとするように言い直す「キミの打つ碁がキミのすべてだ」「それは変わらない。それでもういい」
(アキラの言葉は以前ネットのsaiに絡んで「葉瀬中との対戦。あれが彼のすべてじゃないか」(36局)との対比になっています)
ヒカルはそういうアキラの言葉に満足するようにその場を後にしますが、去り際に「おまえには、そうだな。いつか話すかもしれない」と言います。
するとその言葉を聞き逃さなかったアキラが対局室を出たヒカルを追いかけて来ました。謎があるのなら話せと言うアキラに対してヒカルは「オレの打つ碁がオレのすべてだ。それでいい」って言ったじゃないかと答え、アキラも「それはそうだが」「でも今ボクには話すって」「いつかだよ、いつか。ずっと先だ。バカ!」と応酬。生まれてこの方誰からも言われたことが無かったかも知れない「バカ」という言葉にアキラが絶句した所で二人が乗ったエレベータのドアは閉まり、読者の視線からは遮られました。
夕方。ヒカルは帰宅するなりお風呂も夕飯もパスして自室に入りました。今日の対局はさすがに疲れ切ったようです。対局自体は速碁で早めに終わったものの、検討を長時間していたのでした。
そしてヒカルはふと変な感覚に気づきます。そうか夢を見ているんだということに気づきますが、夢なら何かいいことが起きてくれればいいのに、と思ったとき。
そこに懐かしい顔がありました。
佐為。
5ヶ月半前に消えてしまった佐為が夢の中に出てきてくれたのでした。
ヒカルは夢中になって佐為に報告します。今日の対局はいい勝負だったがアキラに負けたこと。しかしこれから何百局も何千局も彼と打つであろうこと。森下先生には内緒だが、これから時々塔矢の碁会所で打つ約束をしたこと。伊角がプロ試験に合格したこと。三谷が葉瀬中の団体戦に出てくれたこと。
しかしずっと微笑んだままの佐為。
ヒカルは問います。なんで消えたんだ?わかんねえょオレ。しかしそう問うヒカルの顔はもう泣き顔ではありませんでした。そして佐為を心配して聞きます。消える時、悲しかった?それとも今みたいに笑ってた?
答えない佐為に対してヒカルは「笑ってたらいいな」と付け加えます。
更にヒカルが今日アキラが自分の中の佐為の存在に気づいたことを報告しかけると、佐為は左上の方から射してくる光を見つめました。ヒカルが思わず「行くな」「消えるな」と声を掛けると、佐為はだまってずっと持っていた扇子をヒカルの方に差し出しました。それをヒカルが受け取った時、目が覚めました。
やがて階下から母の声がします。「もう7時すぎよ。学校は?」「行くよ」と答えて起きあがるヒカル。
そしてまた新しい日常が始まったのでした。
「帰りは碁会所寄ってくるから」と言って出かけるヒカル。その遠景で「ヒカルの碁・佐為編」完結。
その後、塔矢パパが中国に行ってしまって一人になったアキラがヒカルと一緒に住み始める、ついには結婚しちゃうなんてストーリーを書いておられた方もありましたが.....(ふう)。
しかしみんな言っていました。「一体いつから『佐為編』だったんだー?」
やはり第1局からこの148局までが「佐為編」だったようです。いきなりな終わり方ですが、多くのファンが冷静なのは、やはり数個番外編をやってからゴールデンウィーク前後の合併号から?新シリーズ149局から開始、というのがちゃんと掲示されたからでしょう。スラムダンクの時とはショックの度合いが全然違いますね、やはり。
ということで、ヒカルの碁の本編は4月の中旬くらいまでお休みで、その間に番外編を5〜6本程度やることになっているようです。アキラ編・加賀編のほか、三谷・奈瀬・佐為の名前が出ていますが、これにもう少し足されるとしたら、和谷や緒方あたりでしょうか。
