return ヒカル放浪編(129-140局)
第129局・もどって来い!

棋院の人に連れて行ってもらった部屋は古い棋譜が置かれている部屋であった。何か見るかといわれて「秀策」と答えるヒカル。そしとて彼は初めて秀策の棋譜を読む。それは実際には佐為が打ったもののはず。。。

そしてその時ヒカルは初めて知った。佐為の偉大さを。そして「だから秀策は佐為に打たせたんだ。自分が打つよりずっとその方がいいから。秀策には佐為の大きさが理解できたのだ」と。そしてヒカルは更にいう「オレなんかいらねェ」。

次の手合いの日。アキラはいよいよヒカルの対局を見れると思って見学に来ていた。しかしヒカルは来なかった。更に3日後の若獅子戦。ヒカルは来ない。アキラは怒りでこぶしを壁にぶつける。

ヒカルは学校の教室で「もうオレは打たない。全部おまえに打たせてやるから戻って来い」とつぶやいていた。

第130局・もう打たない

ヒカルは社会の先生に平安時代の囲碁指南役について調べてもらったが、藤原佐為という人物は見つからなかったという。沈むヒカル。そのヒカルをアキラが訪ねて来た。

「なぜ手合いを休んだ」「オレなんかが打ってもしょうがない」「ボクはそう思わない」「オレはもう打たない」そういってヒカルはその場を逃げ出す。

一方和谷の一人暮らし始めたアパートに小宮・本田・奈瀬が集まっていた。進藤の話にもなるが森下先生も怒って「放っとけ」と言っていると和谷は言う。そして奈瀬は伊角が中国への研修に参加したことを語る。その伊角はその頃中国棋院で碁盤に向かっていた。

第131局・中国棋院

伊角は桜野プロに「伊角君は十分プロ並みだし今年こそはプロ試験に受かる」と言われていた。中国棋院に着いて最初に対戦したのは趙(チャオ)石という12歳くらいの子。しかし伊角は負けた。みんなは「悪くない対局だ」というが伊角は納得しない。

一方ヒカルはいつか佐為に石の持ち方・打ち方を習った公園に来て佐為の思い出にふけっていた。そこに現れたのは和谷。ヒカルを心配して自宅まで訪ねて来たのであった。和谷は自分のこと、越智のこと、そして伊角は中国棋院で修行しているということを告げる。そしてその場で盤無し碁を仕掛けるが、ヒカルは逃げ出してしまう。

一方中国では桜野たち研修者の一行は帰国の日程が来ていたが、伊角は最初の趙との対局が気に掛かっていた。滞在を延ばして彼ともういちど対局したいと希望するが、趙はちょうど田舎に帰っていた。すると中国棋院の李先生が「彼の帰京を待ちながら他の者と対局して勉強していては」と提案。伊角はその話に乗る。

第132局・楽平

中国棋院に残った伊角は棋院に寄宿している若いプロの中に和谷そっくりの子がいるのに気づき驚く。彼はまだ10歳くらいであったが、伊角が日本の友人に似ているというと、その楽平(レェピン)と対局することになる。伊角はこんな小さな子に負ける訳にはと思うが、結果は力負け。伊角はレベルの差を身にしみて感じた。そして自分はここで力を付けるどころか、ただ単に自信喪失するだけで終わるのではという不安感が心をよぎる。

第133局・試される伊角

伊角は自分と同年代の人に早碁を申し込まれるが、完敗する。ところが投了した後の検討で、まだ逆転を狙う手が残っていたことを指摘されてしまった。投了は早すぎたのである。ますます自信喪失する伊角。そこに楊海(ヤンハイ)という青年が声を掛けてくる。彼はどうせなら自分の部屋に泊まり込まないかと提案する。本当は外国人は棋院での宿泊は禁じられているのだが、どうせ分からないさと言われ、一度は断ったものの思い直して楊海の好意に甘えることにする。

ホテルをチェックアウトし楊海の部屋に来た伊角だったが、彼が楽平に負けたことをいうと「あいつに負けた?そんな弱い奴はここには置けない」といい、楊海は君の実力を調べるといって置き碁で自分と打つよう伊角に言った。

第134局・楊海の助言

楊海との対局は一流棋士による指導碁という感じであった。しかし出て行けとは言われなかったので、一応合格ということなのだろうと伊角は思った。翌日は中国棋院のトップ棋士の王星(ワンシン)が伊角と打ってくれて、検討には別のトップ棋士・華松力(ホアソンリィ)まで加わってくれた。

楊海は、中国では30を過ぎた棋士は体力的にまさる若い棋士に引きずり降ろされてしまうよと言って中国のトップ棋士の平均年齢が若い理由を告げた。

翌日やっと趙石が戻ってきた。伊角はもういちど対局したいと伝えようとするが、言葉の壁でなかなか伝わらない。そこに楽平が来て、伊角は弱いから対局する意味ない、それより自分と遊びに行こうと趙を誘う。しかし今度はそこに楊海がやってきて楽平に「もう一度伊角と対局しろ。それで負けたら、もっとまじめにやれ」と言う。二人の対局は一週間後に行われることになった。楊海は楽平と同郷の出身で、都会の北京が面白くて遊んでばかりいる楽平を気にしていたのである。

その時伊角は楽平に負けた時の自分の心理状態を話す。小さい子が相手で力みすぎたこと。そして昨年のプロ試験でも他人の言葉に惑わされて心が乱れてミスを犯し、そこから立ち直るのに時間がかかったこと。それに対して楊海は、周りを気にせず碁石だけを見れるように自分を訓練しろと言う。それは性格の問題ではなく「修得できる技術なんだ」と。その言葉に伊角は目が覚める思いがした。

第135局・伊角vs楽平

伊角と楽平の対局の日、楊海はわざと伊角に遅い時間を告げていた。伊角の勝利をより確実にしようとした楊海の作戦だったが、伊角はそのことに怒る。しかしそのお陰で逆に盤面に冷静に没入することができた。結果は伊角の2目半勝ち。楊海は伊角が壁をひとつ越えたことを感じ取った。

その後楽平は伊角を離さず、早碁を何局も何局も打つことになった。そしてその次の趙石戦には趙の深田恭子のストラップと楊海のMDプレーヤーが懸かっているらしかった。

伊角の熱心さによって楽平が変わったことをみんなが噂している。李先生も満足げだったが、寄宿生の一人が李先生のそばで伊角が楊海の部屋に泊まり込んでいることを話してしまう。しかし李先生は聞かなかったことにしてその場を離れた。一方伊角は日本の父に電話していた。「プロ試験の申し込みをしておいてくれ」と。そして「プロ試験に堂々と乗り込む自信をつけて」と付け加えた。

一方ヒカルの母は学校に行き、担任の先生に相談していた。担任の先生が驚いたような声を出す。「プロをやめる?進藤君がですか?」

第136局・不戦敗、不戦敗...

ヒカルの母は別にヒカルからプロをやめると聞いたわけではなかったが、このままプロをやめるのなら高校進学について相談しなければならないのではないかと思い、学校に出てきたのである。しかし担任の先生は困った顔をする。「進藤君が進学?今からですか?」母はギクッとする。

いっぽうヒカルはアカリに「どうしてずっと不戦敗なのか」と聞かれていた。囲碁をやめるかもと言うヒカルに「勝手な奴だな」と声をかけたのは三谷だった。そして三谷はヒカルとの応酬で、今度の囲碁大会に参加すると言ってしまう。

『囲碁大会』という言葉に2年前、2年半前の大会を思い出すヒカル。そして自分が囲碁に夢中だったことを彼は思いだしていた。

ヒカルの不戦敗の記事を見て荒れている男がいた。ヒカルに「プロになるのは任せた」といった椿、そしてヒカルに1万円の貸しがあるんだからと言う河合。

第137局・最後の大会

ヒカルはさすがにアカリたちの最後の囲碁大会を見に行った。「佐為、見るだけなんだからな」と言いながら。アカリの後に立って『簡単な死活だ。慌てるな。....うん』と心の中でつぶやくヒカル。そして三谷が打っている所を見る。自分が出た時の記憶がフラッシュバックする。しかしヒカルは自分に言い聞かせる。「打ちたいと思ってはいけない。それでは佐為が戻って来れない」と。尹先生がヒカルに気づいて声を掛けるがヒカルはまたそこから逃げ出した。

そして伊角が帰国してくる。そしてキオスクで週刊碁を買い日本のプロ棋戦の結果を見る。越智は勝っている。和谷は手合い無しと見て、進藤の所でえ?と声を出してしまう。「不戦敗?」

第138局・訪問者

伊角は棋院のそばのマクドナルドで久しぶりに和谷と会った。中国でのことを報告する伊角。趙との再戦は結局伊角の負けでMDプレーヤーを取られてしまったこと。しかしかなり向こうで実力と自信を付けたことを語る。そして伊角は進藤の不戦敗について和谷に尋ねる。そして和谷の「進藤は5月以来ずっと手合いを休んでいる」という答えに伊角はもっと驚く。

伊角が進藤の家を訪問すると進藤はまだ学校から帰ってなかった。先に部屋に通されるが、ホコリのつもった碁盤を見て、本当にずっと打ってないんだとつぶやく。ヒカルは部屋に人の気配があるので佐為が戻ってきたのかと思い慌ててあがってくるが伊角であったことにがっかりする。そして伊角に不戦敗のことをきかれるが、さすがに久しぶりにあった伊角を放って逃げだす訳にはいかない。困っている内に伊角はアキラが「とんでもない所で打ってるぞ」と語る。

そのアキラは実は本因坊の決勝リーグ入りを掛けて中堅の棋士・萩原九段と三次予選決勝を打っていた。観戦していた天野記者が控え室に行くと、桑原本因坊が休憩に来ていた。二人はアキラのことから更にヒカルのことに話が及ぶ。しかし桑原は言う「自分は何も心配していない。塔矢アキラが全力で上を目指している限り」と。

アキラの思わぬ状況に思わず「どこまで力をつけてるんだ、アイツ」とつぶやくヒカル。それを聞いた伊角は「情熱は残っているようだな」と言い、自分と一局打とうと言う。ヒカルは自分のことを心配なんかしないでくれというが、伊角はヒカルを心配して言っているのではないという。「進藤、覚えてるか、去年のプロ試験。オレとおまえの一局」

第139局・この一局から

「去年のプロ試験。投了をためらった長い時間...反則をごまかせないかと考えた自分」その苦い記憶を振り払うために、自分と打って欲しい。自分をそこからスタートさせてくれ、と伊角は言った。

ヒカルは心の中で言う。「伊角さんのためなんだよ、これは。オレが打ちたいわけじゃないから」。ヒカルは約2ヶ月ぶりに碁石を持った。

その頃アキラは萩原九段と対局しながら心の中で呼びかけていた。「進藤、来い!ボクはここにいる!」と。

一方の伊角とヒカルの対局。二人とも相手がかなり強くなっていることを認識していた。伊角の白模様に切り込んでいくヒカル。その時彼はハッとした。『佐為がこんな打ち方をしていた』と。

彼はやっと佐為を見付けることができた。

第140局・決心

『どこにもいなかった佐為が、オレが向かう盤の中にこっそり隠れていた。おまえに会うただひとつの方法は打つことだったんだ』ヒカルはやっと悟ることができた。そして言う『佐為、オレ打ってもいいのかな』

2ヶ月間苦しみ続けた結果であった。「伊角さん、オレ打ってもいいのかも知れない」ヒカルは伊角にこれから何局でも何十局でも何百局でも打つことを誓う。そして伊角も「オレも同じ道を歩きたい」と決意を述べる。二人はうち続けた。

ヒカルが棋院に駆けつけた時、棋院の人(坂巻)が桑原本因坊と出てくる所だった。棋院の人が「君は何してたんだ」ととがめようとするが、本因坊は遮って「もういい」と言い「おまえのライバルなら5階におるぞ」と言う。

5階では対局が終わっていた。アキラが勝った。「さすがは塔矢先生の息子ですね」という計時係の若い棋士に萩原九段が咎めて言った。「君、その言い方は失礼だ。『さすがは塔矢アキラ』なんだよ。塔矢先生は関係ない」と。そしてそこにヒカルが駆けつけてくる。

天野がヒカルを叱ろうとするがその前にヒカルは棋譜を奪い取って「勝ったのか」と言う。「何しに来た?」というアキラにヒカルは言う。「オレ碁をやめない。ずっとこの道を歩く。これだけ言いに来たんだ」と。そしてアキラは「追って来い」と言い切った。今までお互いに追いかけては逃げての関係だった二人がこの時、初めてしっかりとお互いのライバルを見つめ合ったのであった。

その頃本因坊は坂巻に言っていた。「碁は一人では打てんのじゃ。二人要るんじゃよ」と。坂巻がそんなこと分かってますよというと本因坊はもっと言う。「一人の天才だけでは名局は生まれんのじゃ。等しく才たけた者が二人要るんじゃよ。2人揃ってはじめて、神の一手に一歩近づく」と。

しかし桑原は更に付け加えた。「このワシがおるうちはラクはさせんぞ小僧共」

そして次の手合いの日。村上二段が「今日勝てば三段だけど、今日の相手は手合いサボってる奴だから不戦勝でラクラク昇段」と言っている。そこに気合いの入った目をしたヒカルが「おはようございます」と大きな声で言って入ってきた。村上は「進藤、来たのか」とつぶやいた。


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