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棋聖降臨編(1-6局)
第1局・棋聖降臨
テストでひどい点を取って、おこづかいを止められた小学6年生進藤ヒカルは幼なじみの藤崎あかりを連れて、祖父進藤平八の家の蔵の中で何か売り飛ばせそうなものはないかと物色していた時、古い碁盤を見つけ、その碁盤に宿っていた、平安時代の囲碁名人藤原佐為の霊に接触。彼を自分の意識の中に宿らせることになります。彼は140年前に本因坊秀策(桑原虎次郎)という人の意識の中に宿っていたこともある人でした。
囲碁名人をバックに付けているからには、平八と囲碁を打てば勝っておこづかいがもらえるぞ、と皮算用するヒカルでしたが、なにせ囲碁なんてしたことも触ったこともないので、佐為の指示がチンプンカンプン。結局ほとんど打てないまま、平八に「半年後に来い」と言われる始末でした。
やはり自分でも少しは囲碁のことを覚えなきゃいけないかな、と思ったヒカルは囲碁教室へ出かけます。そこで指導者の白川七段はヒカルに優しく碁の基本を教えてあげました。この教室でヒカルと佐為は弱い者いじめをしている阿古田に気づきます。ヒカルはとっちめてやろうと思い碁笥を阿古田の頭の上でひっくり返し、さらにそれをずらして、阿古田のカツラを外してしまいました。
慌てて逃げて帰る阿古田さん。彼を嫌っていた人が多かったため、爆笑の渦が起きますが、白川先生はヒカルに「次週、ちゃんと謝るように」と申し渡しました。
ヒカルが帰ったあと、生徒の一人が白川先生に「一番強い棋士って誰ですか?」と聞きます。それに対して先生は雑誌の記事にあったと断ってこう言いました。
現在のトップは三冠の塔矢名人、若手ナンバー1は倉田四段もしくは緒方九段、しかし史上最強の棋士は江戸時代の本因坊秀策でしょう、と。
第2局・はるかな高み
次の週、囲碁教室に行ったヒカルと佐為はテレビで塔矢名人の対局を見ます。その打ちぶりに佐為はただならぬものを感じました。ヒカルは教室の外で阿古田さんに謝ろうと思って待っていたのですが、阿古田さんが先週とは別のカツラをかぶってきたのを見て、つい飲みかけのジュースを阿古田さんの顔に吹いてしまいます。また逃げ出す阿古田。そしてヒカルは怒った白川先生につまみ出されてしまいました。
碁が打てない!と嘆く佐為に、何とかしたいと考えたヒカルは、同じ教室に通っているおばさんに聞いて、近くの碁会所へと囲碁を打ちに行きました。しかし初めて見た碁会所にいるのはおじさんたちばかり。戸惑っていた時、彼はそこに一人の男の子がいるのに気づきます。「なんだ、子供もいるじゃん」といい、ヒカルはその男の子塔矢アキラ(実は塔矢名人の息子)と碁を打ち始めました。ヒカルにとっては初めての対局です。
ヒカルは同世代の男の子だから大したことないだろうと打ち始めたのですが、実はアキラはプロ級の腕前の打ち手でした。アキラはヒカルの全く初心者的な石の持ち方に最初びっくりしますが、その驚きがやがて別の驚きに変化します。ヒカルは手つきこそ初心者ですが、打ち筋はとてもしっかりしていたのです。
しかもよくよく見るとここまで局面をずっとヒカルがリードしていました。初めて焦るアキラにトドメの一発が来ます。ヒカルが打った次の手は「最善の手でもない、最強の手でもない」一手でした。アキラは悟ります。それが「自分の力を試している手だ。はるかな高みから」ということに。
やがてヒカルは「やっぱり俺まだ対局は早かった」と受付の市河さんに照れ笑いしながら出ていきますが、そのあとアキラの回りがギャラリーで騒然としました。アキラが負けたということを知り、市河さんはそんな馬鹿なと言います。「だって、あの子、一度も対局したこと無いって言ったのよ」と。それはショックをうけているアキラを更にもう一段突き落とすものでした。
第3局・死活の急所
碁会所の市河さんからもらったパンフレットを見てヒカルと佐為はこども囲碁大会にやってきました。もちろんヒカルはこんなところに出るはるかな以前のレベルなので参加者ではなく見学です。しかし囲碁の分からないヒカルにも、小さい子供たちの熱気あふれる様子はなにか心を打つものがありました。そんな中佐為が近くの対局の様子に目を留めます。「あそこ、黒は打ちようで死にますね。1二が急所です」。しかし対戦者が打ったのはその一路下でした。思わずヒカルは口ばしってしまいます。「惜しい。そのひとつ上なんだよな」
慌てて口を押さえるヒカル。しかし時既に遅し。慌てて係りの人が飛んで来てヒカルを押さえます。そこへ大会運営に関わっていた緒方九段も来ます。係りの人がヒカルを奥の事務室に連れて行き、緒方九段は対局者に事情を聞きました。そして、その死活の急所の判断が非常に高度なものでプロでもなかなか分かりにくいものであったことに気づきます。しかし緒方九段は対局者の親の言葉に更に驚愕することになります。「何か探すように向こうからやってきて、ここに足を止めるとチラっと見て『惜しい、その上』って言ったんですよ」。プロでも迷うような急所を一目で見抜いた?そいつは一体何者なのだ?
一方のヒカルは事務所でたっぷり叱られてから帰されました。そして廊下で眼光の鋭い初老の紳士とすれ違います。それは塔矢名人でした。塔矢名人が事務所に入ると緒方九段も来ていて、先ほどの難しい局面を検討していました。塔矢名人には一目でその急所が分かります。そして「そんなすごい子を名前も聞かずに帰してしまうなんて」という緒方九段に対して名人は断言します。「それほどの打ち手なら、遅かれ早かれいづれわれわれプロ棋士の前に現れる」と。
第4局・許せない暴言
一方のアキラは碁会所で先日のヒカルとの一局を並べ直していました。するとアキラは奇妙なことに気づきます。まずこれは対局中にも気づいたのですが、妙に定石の型が古いこと。そして、それよりもヒカルの打ち方がまるで指導碁のようであることでした。彼は自分より遙かに上位の腕の持ち主なのだろうか。しかしあの手つきはまさに初心者のもので、対局は初めてだと市河さんに言ったらしい。
その市河さんと会話を交わしていてヒカルが子供囲碁大会に行ってるかも知れないと聞いたアキラは会場に飛んでいきます。そして、ちょうど会場を追い出されて来たばかりのヒカルと遭遇しました。子供囲碁大会に感動したというヒカルにアキラは戸惑いつつも手を見せてもらい、それが碁石を普段さわっているような手ではないことを確認します。そして君はプロを目指すのか?と尋ねますが、そのあとのヒカルの言葉がアキラを怒らせました。
ヒカルはアキラからプロ棋士がタイトルを取ると莫大な賞金をもらえることを聞くと「じゃ、ちょっとプロになって、タイトルの一つや二つ取るのもいいな」などと言ったのです。生真面目なアキラは「それはプロ棋士全員に対する侮辱だ」と怒り、今からすぐ一局打とうと、ヒカルを強引に碁会所に引っ張って行くのでした。
第5局・牙を剥くアキラ
アキラはヒカルを強引に碁会所に連れて行き、その電車の中でぶつぶつと対局のシミュレーションをしています。「進藤ヒカルは初心者ではない。あなどれない。しかし定石が古い。そこに付け入る隙があるはず」一方のヒカルは佐為と会話しています。「でも佐為って大したことないじゃん。こないだも、こんな子供にたった2目差だったし」「あれは指導碁ですよ。それにこの子はただの子供じゃありませんよ。すごい打ち手です。成長したら獅子らなるか竜になるか。その彼が今牙を剥いています」
やっとアキラについて認識しはじめるヒカルに佐為は付け足します。「でも所詮は子供。私の敵ではありません。その牙をさらりとかわしてよしよしと頭をなでてやるべきか、それとも。。。」
やがて碁会所に着き、アキラがヒカルを連れて奥の席に着くと、大勢のギャラリーが集まって来ました。アキラはそのギャラリーをものともせずにヒカルだけを見つめています。その様子にヒカルが「この子ただものじゃないな」というと「だから言ったでしょ」と佐為。アキラは「握る」とか「コミ」とかいう言葉を知らないヒカルにその説明をして、やがて対局開始です。
厳しい顔で盤に向かうアキラに対して佐為はたんたんとヒカルに指示を出します。やがてアキラが仕掛けて来ました。流してもいいのですがアキラは決戦を望んでいるよう。「それもよかろう」佐為はコスんでいきます。
第6局・一刀両断
「ありません」。
アキラがうなだれて声を出します。ヒカルは何が起きたか分かりませんでした。盤面には前回の半分程度の石しか置かれていません。「彼は投了したのです。自分の負けを認めたのです」と佐為が説明します。ヒカルは驚いてフォローしようとしますがアキラには聞こえていません。
「なんて勝ち方したんだよ。上手に何目差とかで勝つんじゃなかったのか?」というヒカルに佐為は「彼はそういう余裕を与えてくれなかったのです。もう胴体と頭を一刀両断する以外にありませんでした」と答えます。ヒカルは今はじめてアキラの実力を思い知ったのです。
翌日ヒカルが碁会所の近くを歩いていると呼び止める人がいました。緒方九段でした。「君に会いたがっている人がいる」といいます。塔矢と聞いたのでアキラかと思ったら、お父さんの塔矢行洋名人でした。名人は「君の実力を知りたい」といい、手合わせを始めます。その時ヒカルはこの名人も、アキラも、そして佐為も碁に夢中になっていて、なんだか自分だけ仲間外れのような気がしてきました。対局は最初の布石が進んで行きます。その中、ヒカルは段々自分も碁をやりたいと本気で思うようになってきました。その時ヒカルの右手がピシッと強い音を立てて碁石を盤に打ち付けていました。