手元に地図帳をお持ちの方はヨーロッパのページを開いてみてください。
ヨーロッパとアフリカの間に横に細長く地中海がありますが、その左端は スペインとモロッコの間のジブラルタル海峡です。これを古代には 「ヘラクレスの柱(Hercule's Pillars)」と呼んでいました。これはヘラクレ スがここにあった山を二つに裂いて海峡にしてしまったという伝説があった ためです。(ヘラクレスの柱と呼ばれる物は実はもうひとつペロポネソス 半島の先端にもある。多分そちらが古い)
右端は大陸に阻まれていて、レバノンやイスラエルがあります。このレバノン はフェニキア人が作った国のひとつです。
ヨーロッパ側から地中海にふたつの大きな半島がせり出しています。左側が 長靴の形のイタリア(イタリア半島)、右側がギリシャ(バルカン半島)で、 地中海の古代文明は初めギリシャで起き、その後イタリアが中心になりました。
イタリアの左側にはふたつの大きな島が縦に並んでいます。北側がコルシカ。
ナポレオンの出身地ですね。南側がサルディニア。現在はコルシカはコルス
と呼ばれてフランス領になっており、サルディニアはイタリア領です。よく
地図を見るとイタリア半島の先端も島になっています。ここがシチリア。
マフィアの故郷ですね。元々マフィアというのはこのシチリアの独立運動の
組織だったわけです。
ギリシャの先端もほとんど島のようになっていますが、実は地続きです。これ
がペロポネソス半島。その半島の先端からトルコ方面に向かって弧のように
幾つかの島が並んでいますが、その中央最大の島がクレタ島。地中海最古の
ミノア文明が起きた場所です。その左側トルコの近くにあるのがロードス島。
それからもうひとつ大きな島としてはトルコの南、レバノンの西に浮かぶ
キプロス島があります。ここも昔から領有争いの激しい所です。
少し小さな島を見ていきますと、まずコルシカ・サルディニアの西側フランス 寄りに幾つか小さな島が点在しています。マジョルカ、イビザ、ミノルカなど です。コルシカの北東にはエルバ島があります。ナポレオンが流された島です ね。またシチリア島の南にはマルタ島があります。
なおシチリアの南西にはアフリカ側から少し北にせり出した地形があり、その 先端(現在チェニジア共和国)にフェニキア人の最大の拠点・カルタゴがありま した。
それからギリシャとトルコにはさまれた区域(エーゲ海)にはたくさんの島が あります。北方にはタソス島・リムノス島など、中部にはレスビアンの語源と なったレスボス島、スキロス島、キオス島など、南部にはサモス島、ナクソス 島、ミロのビーナスが出土したミロス島、アトランティスがあったと言われる ティラ島(*1)などがあります。
なお、ギリシャとトルコの間がエーゲ海ですが、ギリシャとイタリアの間は 北をアドリア海、南をイオニア海といいます。この境はオトラント海峡になり ます。またイタリアの左、コルシカ・サルディニアの右の海域をティレニア海 といいます。
エーゲ海の奥は黒海につながっていますが、実は地図をよく見ると間に小さな 海があり、これをマルマラ海といいます。エーゲ海とマルマラ海をつなぐのが ダーダネルス海峡、マルマラ海と黒海をつなぐのがボスボラス海峡です。この ボスボラス海峡が現在アジアとヨーロッパの境界線とされています。
ギリシャ神話にアルゴー船の物語が出てきますが、アルゴー船が行った先は この黒海の沿岸でした。暖かいギリシャに比べると黒海は冬になるとかなり 寒くなります。古代のギリシャ人にとって黒海までの航海は確かにかなり危険 なものであったでしょう。
------------ (*1)プラトンはアトランティスは「ヘラクレスの柱の先で、リビアとアジアを 合わせた」サイズと書いていて、ヘラクレスの柱というと現代ではジブラルタル 海峡のことなので、大西洋上に巨大な大陸があったと思われたのですが、この ヘラクレスの柱をペロポネソス半島とすると、ティラ島はちょうどその先に あります。また「リビアとアジアを合わせた」というところの「合わせた」と いう前置詞が実は「間」という前置詞と似ていて元々は「リビアとアジアの間」 と書かれていた可能性があると指摘されています。
ティラ島(サントリニ島とも)はBC15世紀頃に大爆発を起こし、現在のように 真ん中がえぐれた形になってしまいました。この爆発により近くのクレタ島に も大量の火山灰が降り、これがクレタ島を中心としてこの多島域で栄えていた ミノア文明(BC20〜14世紀頃)の衰退の原因のひとつとも言われています。
ミノア文明はその後ギリシャ文明の中核となったミュケナイ文明とは全く違う 系統に属する文明で、アジア的な女系社会であったといわれています。