↑ ← → 仮想旅(28)奈良:石上神宮
written by Lumiere on 96/12/14 01:24
南海電鉄で新今宮に戻り、関西本線の快速に乗ります。目指すは奈良。到着は
8:01。ここから桜井線に乗り換えて8:20に天理駅到着。駅前からバスにのり、
やってきたのは石上神宮(いそのかみじんぐう)です。

ここは古代大和朝廷で大きな力を持っていた、物部一族の神社です。御祭神は
布都御魂大神(ふつのみたまのおおかみ)のほか、布留御魂神(ふるのみたま
おおかみ)・布都斯御魂大神(ふつしみたまおおかみ)。拝殿の後方の布留山
(ふるやま)で見つかった神剣を御神体としています。

「ふつ」というのは剣を空中で振り回した時に空気を切って出る音の擬音語で
あると言われています。つまり布都御魂というのは武神です。また、この石上
神宮というところは大和朝廷の武器庫としても利用されており、その管理に当
たっていたのが物部一族でした。

また物部一族は十種神宝(とくさのかんだから)という十個の神宝を持ってい
ましたが、布留御魂神とはこの十種神宝のことなのだそうです。これは物部一
族にとって、天皇家の三種神器(さんしゅのじんぎ)に相当するもので、そも
そもこの石上神宮は天皇家にとっての伊勢神宮のような地位にあったものと思
われます。

この十種神宝を揃えた上で「一二三四五六七八九十」(ひ・ふ・み・よ・い・
む・な・や・ここの・たる)と神宝を数えて「布留部。由良由良止布留部。」
(ふるべ・ゆらゆらとふるべ)と唱えれば死人でも生き返ると伝えられていま
す。もっとも十種神宝は現在は行方不明なのでやってみようがありませんが。

この物部一族が信奉していた宗教は物部神道と呼ばれていますが、魂を奮わせ
ること、活性化させることが重要なポイントであったようです。「ふるべ」と
は「震えろ」という意味ですが、魂を奮わせることにより死人でも再生させる
という訳でしょう。この「奮わせる」という行為は実は戦争の場において兵士
たちを「奮いたたせる」つまり「鼓舞する」するという場面でも重要でした。
ここに戦争と密接に関わる物部神道の性格があります。これに対して平安時代
以降主流となった中臣神道は「禊ぎ」の神道で、伊弉諾神が黄泉の国から戻っ
て禊ぎをしたことを象徴にして、汚れを禊ぎで洗い落として清らかになる、と
いうことがメインテーマになります。

この石上神宮の神圏で近年発生したのが天理教です。天理教の教祖中山みきは
石上神宮の配下のお寺に所属する修験者の祈祷で寄代を務めたのがきっかけで
神のお告げが聞こえる体になってしまったのでした。

参道の階段をのぼり、楼門を通って拝殿で参拝。全体的に朱塗りで落ち着いた
雰囲気。美しい外観ですが、この拝殿がなんと全国最古のものだそうです。建
造されたのが永保元年(1081)。白河天皇の時代です。むろん創建は古く崇神天
皇の時代とされていますが、本当はもっと古いかも知れません。またこの神社
は本殿が無いという古来の神社の形式だったのですが、大正2年に一応造営し
ています。

それからこの石上神宮に伝わる宝物で有名なものとして「七支刀」(ななつさ
やのたち)があります。これは先が7つに枝分かれした

       ̄\   ̄\   ̄\
   −−−−−−−−−−−−−−−
    _/  _/  _/

といった形の刀です。むろん実用性は無いので純粋に儀式用或いは装飾用の刀
でしょう。この刀には61文字の銘文が入っており、その内容から369年に百済で
作られたものであることが分かります。この時期百済・新羅は満州から南下し
た高句麗との戦いに苦しんでおり、日本の支援を求めてきて、その時にプレゼ
ントしたものかも知れません。任那ができたのもこの頃です。

なお、この石上神宮が建っている岡は人工のものではないか、という説もあり
ます。つまり古代天皇家と肩を並べるほどの勢力を持っていた物部氏が古墳を
作るように祭祀場としての石上神宮を作るために土を盛ってここを造成したの
ではないか、ということなのですがどうなのでしょうか。この石上神宮に関し
ては興味が尽きない感じです。

======================================================================
※この七支刀について、「ほんとにあった怖い話」99年1月号の天宮視子さん
 のシリーズで、この刀は鹿の角の形ではないか?という説が出ていました。
 天宮視子さんは出雲で七支刀に出会ったようですが、その場所は須佐神社。
 物部一族とも当然縁のある場所です。(98.12.28)



← →

(C)copyright ffortune.net 1995-2013 produced by ffortune and Lumi.
お問い合わせはこちらから