↑ ← → 仮想旅(26)和歌山:熊野大社
written by Lumiere on 96/12/13 08:11
珍しくゆっくり起きて朝風呂に入った後、旅館の朝御飯を食べます。旅館を出
たのはなんと9:30。こんなに遅い出発は初めてかも知れません。

さて、今日12月11日の行き先は1ヶ所だけです。

というとすごく楽なスケジュールに思えるかも知れませんが、これが実はとて
も大変(^^; 今日は熊野三山巡りです。

多賀大社のところで熊野の話も出てきましたが、お伊勢参りと同様熊野詣でと
いうのも古来から人気のある神仏詣ででした。伊勢神宮の場合は神道の中心地
ですが、熊野は補陀落浄土信仰と関わる修験道の霊場です。歴代の天皇では後
白河天皇の多数の行幸が有名ですが平安時代以降多くの皇族・武家がお参りを
しています。

熊野大社は熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社の三つの神社で構成さ
れています。それぞれの御祭神は、

  熊野本宮大社 家津美御子大神 =素戔嗚尊 =阿弥陀如来
  熊野速玉大社 速玉之男神   =伊弉諾尊 =薬師如来
  熊野那智大社 熊野夫須美大神 =伊弉冉尊 =十一面観音菩薩

ということになっており、合わせて熊野三所権現といいます。ここは全国の熊
野神社の総本社でその分社の数は3000社と言われます。ただし出雲の熊野大社
は全く別系統です。

さて、まず最初に行くのはホテルを十分歩いて行ける距離にある熊野速玉神社
です。ここは山奥にある熊野本宮大社に対して「新宮」と呼ばれており、この
町の名前もこの神社から起こったものです。

緑の森の中の朱塗りの神殿は朝日の中に美しく映えます。拝殿に当たる速玉殿
でご挨拶をし、合わせて今日1日のご加護をお祈りしました。

さて歩いて駅まで戻り、10:45発の本宮行きのバスに乗りました。山道を揺られ
ること約1時間。バスは寒い寒い山の中の熊野本宮前に止まります。

ここの本殿は第一殿・第二殿・第三殿・証誠殿と、檜皮葺きの趣のある4つの
社殿が横に並んでいます。うち、第一殿と第二殿はひと続きの建物で、伊弉諾
・伊弉冉の夫婦神が祭られています。第3殿がこの本宮の主神家津美御子大神、
そして証誠殿は素戔嗚尊等々です。

ところで熊野という地は古来より死のイメージとつながっていました。日本書
紀の「一書」で伊弉冉神が亡くなった時、紀伊の熊野の有馬村に葬ったとして
いるものがあります。実際熊野市の南の「花の窟」というところが伊弉冉神の
墓であるという伝説があります。そして毎年2月2日と10月2日にはここで「御綱
渡の神事」というものがありますが、これは伊弉冉神の死霊を祀り再生を願う
ものとも言われています。

また、中世熊野では多くの補陀落渡海が行われました。これは僧が小さな船に
幾ばくかの食料を詰め込み、海の彼方へと補陀落浄土へと渡って行くというも
のです。むろん物理的にいえばそういった船は沈むか、沈まなかったとしても
食料が無くなったところで餓死するしかないわけですが、死を悟った僧が洞窟
に入って入定するのと同様に補陀落渡海による入定は行われたといいます。

ここ熊野は奈良・京都から見て南の果ての地で、いわばこの世の果てですから、
そこが死の世界への入り口でもあったというのは、ある意味で当然のことでし
ょう。

そのようなことに思いをはせながら渡しは各拝殿にお参りをし、それから少し
参道を歩き、川辺まで行ってみました。もともとこの熊野本宮は音無川の中の
三角州の上に立っていたのですが、明治22年の洪水で流されてしまったのです。
そこで現在の社殿は水を避けて高台に建てられたわけです。なお三角州にあっ
たころの本宮の第4殿=証誠殿は一遍上人ゆかりのところで、一遍上人はここ
に100日間参籠して熊野権現の霊告を受け念仏を開顕したのです。

道ばたに座って持ってきたお弁当を食べます。帰りのバスまではゆっくりと時
間があります。しかし寒い。そして乗ったバスは13:05発。新宮に戻ったのは
14:24でした。

さて、今度は汽車での移動です。14:39のスーパーくろしお26号で紀伊勝浦へ。
14:55の到着。15:00の那智山見晴台行きバスにのり、那智神社へ。所要時間は
約25分。那智の大滝のあるところです。

熊野那智神社は熊野速玉神社と同様の朱塗りの建物。形の方は熊野本宮神社と
同様の横並びの構成で6棟13殿あります。各拝殿にお参りします。そして、
左手の方に那智の滝。高さ133m。ちなみに日光の華厳の滝でも97mです。この
滝自体は別宮の飛瀧神社になっています。ここは熊野の最大の聖域であり、こ
の滝は大日如来そのものであるとみなされています。むろんそちらにもお参り
します。熊野の信仰はひょっとしたらこの大滝から始まったのかも知れない。
そんな思いを感じてしまう瞬間でした。

再びバスに乗って紀伊勝浦に戻ったのは4時半でした。これで熊野三社は回っ
たのですが、ぜひとも行きたいところがありました。船にのって勝浦温泉に渡
ります。そして行き先はホテル浦島の忘帰洞。海が見える洞窟風呂です。外は
寒いですが、湯の中は熱いくらい。この気分は最高。ここは勝浦半島。半島で
すから陸地を歩いても行けるはずですが、なぜか船で渡るということになって
いるようです。海の向こうをながめながらぼーっとしていると旅の疲れが全部
海の向こうに飛んで行ってしまったような気がしました。旅はちょうど中間く
らい。さぁ、また元気に行きましょう(^_^)

お風呂から上がり、このままここに泊まりたい気分ですが、そうすると明日の
予定がうまく行かなくなります。ここは涙を呑んでまた船で勝浦桟橋に戻り、
17:40のスーパーくろしおオーシャンアロー32号で大阪へ。天王寺到着が21:10。
今日は大阪泊まりです。

#やっとUPが追いついた\(^0^)/ これからは1日に行った分ずつUPできる(^^)


※上記文中で出雲の熊野大社は別系統と書いていますが、この時は知らなかっ  たのですが、元々この熊野神社は出雲の熊野大社を勧請したものです。即ち  熊野信仰は出雲にそのルーツがあった訳です。(98.12.28)
新宮は熊野本宮大社に対して「新宮」なのではありません。これはよくある 誤解です。元々この町の別の場所にお宮があったのが移転して現在地に来て いるのでその時新しいお宮を「新宮」と呼んだだけのことです。(2003.12.30)


← →

(C)copyright ffortune.net 1995-2013 produced by ffortune and Lumi.
お問い合わせはこちらから