金神

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金神
金神 こんじん
大将軍神社


以下はniftyの会議室に1996/05/02 05:04のタイムスタンプで書いた物です。

金神(こんじん)は陰陽道から生まれた神です。これは山海経に蓐収の名前で出てくる神であるともいわれ、中国では六朝の頃には知られていたもので、唐の呂才による「百忌暦」に詳しく述べられています。日本では平安時代の後半から登場しており、その流布につとめたのは正統な陰陽家からは外れる清原家で、定俊の時に初めて白河天皇にその忌みが認められました。

「百忌暦」によれば、金神は金気の神で10年周期で方位を巡ります。

年の十干方角
甲・己午・未・申・酉
乙・庚辰・巳
丙・辛寅・卯・午・未・子・丑
丁・壬寅・卯・戌・亥
戊・癸申・酉・子・丑

この金神の方角を犯すと金神はその家のものを7人殺し、もし家に7人いなければ隣の家のものまで殺す、とされます。ただし、金神が一白・六白・八白・九紫の方位にある場合は害はないとされます。

さて、この金神の忌避に対して、その概念が清原家から出てきたことに反発した陰陽道宗家の賀茂・安倍両家は、そのようなものは陰陽道の正統なテキストには出てこない。単なる俗信に過ぎないと言って巻き返しを図り、天皇の判断も何度も揺れ、最終的には金神は忌避するに及ばずとの結論に達します。

しかしこの金神に関する信仰は民間では気にする人が多く、金神は上記の年単位の巡回に加えて、季節によって動くとか、いつからいつまでは遊行する、などといった話まで入ってきます。更にはこの本来の金神(現代の暦に書かれる巡り金神)の他に大金神・姫金神などというものまで出たりして、金神は全部で八百八いる、などという恐ろしい話にまで発展してしまいます。

ところが、ここにこの金神の意味付けを大転換させる思想が起こりました。最初に唱えたのは金光教(こんこうきょう)の教祖川手文治郎(1814-1883)です。

なお、この創始者の名前は色々書かれていますが、それは彼が何度も改名しているからです。一応たどると、香取源七→川手文治郎→赤沢国太郎→赤沢文治→金光文治→金光大神となります。

彼は安政年間にまさに「金神七殺」的な不幸に見舞われ、次々に家族を失い、自らも大病になります。このとき、親類の修験者が神懸かりになり、文治郎が先年移築の際に金神に対して無礼を働いたということを指摘します。文治郎はそれを謝罪し、今後は金神に帰順すると誓うと、病は快方に向いました。

そして5年後、文治郎は天啓を受けます。「世間には難儀をしている氏子がたくさんいる。その取次をしてくれ。そうすれば神も人間も助かる」ここに彼は宗教活動を始めるのです。

そして彼は「如何なる所、如何なる時、如何なる方も人間に宜しき所は吉所、吉日、吉方なり。日柄方位等は神が氏子を苦しめることではない」と従来の金神に対する俗信を全面的に否定し、金神は恐れて忌避するから崇り神として現れるのであって、一心に祈れば、大いなる恵みを与える神となる、という思想に到達。更に金神を「天地金乃神」と呼び、いざなぎ・いざなみ以下の神々と人類全体の氏神であり、神の中の神、一段高いレベルの神ととらえます。

つまり彼は現代の宗教学者が唱える「神は粗末にすれば悪神となるが、祀れば恵みの神になる」という思想に達したとも言えます。

この金神に対する考え方は大本教(おおもときょう)の教祖出口なお(1836-1918)・出口王仁三郎(1871-1948)にも受け継がれ、彼らにおいては、金神は実は封印された創造神・国常立神であるという思想に至ります。

出口なおのお筆先によればこの神が彼女に発した第一声は「三千世界一度に開く梅の花、艮(うしとら)の金神の世に成りたぞよ。天理・金光・黒住・妙霊先走り、とどめに艮の金神が現れて、世の立替えを致すぞよ」でした。明治25年のことです。大本によればこの神は世界を始めた神であるが非常に強力な神であるが故に新しい世代の神に押し込められていたのであるとします。

そしてその3000年間眠っていた神が理解者を得て、再び力を取戻し、新たな時代を作って行くのだというのが彼らの思想でした。これは大正年間の不安定な世相の中で急速に人々に受け入れられますが、この思想を危険視した政府が強引な弾圧を加え、王仁三郎を投獄したりします。彼は「大本を潰せば国が潰れる」と言い放ちますが、その言葉通り日本はその後絶望的な太平洋戦争に突入していきます。そして王仁三郎が獄中にあった期間とマッカーサーが日本に君臨した期間とは見事に一致しました。

金神のようにその価値・評価がドラマチックに揺れ動き、今でも評価の分かれる神はまた珍しいでしょう。



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