囚人のジレンマ

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囚人のジレンマというのは次のようなケースです。

何かの重大事件で二人組の犯人が捕まった。それぞれ別室で取り調べを受け ている。この時、Aは迷う。自白すれば、かなり長い刑期が待っていそう。
なんとかごまかしてシラを切り通すことはできないだろうか。しかし自分が 犯行を否認している間にBの奴が自白し、自分も共犯であると言ったら自分 の心証が悪くなる。それよりは先に自白して、反省の念を示し、情状酌量さ れる道を模索したほうが良いのではないか。しかし向こうも頑張っているの に自分が罪を認めてしまうと、もしかしたら証拠不十分で釈放される道を 自らつぶしてしまうかも知れない。

当然Bの方も同じように悩み、この精神的圧迫から結局両者とも崩れていき 自白に至ってしまいます。このように自分と相手の行動の組合せで良いこと と悪いことが極端に転換するケースを「囚人のジレンマ」といいます。

上記の場合では

・自分が頑張って相手も頑張ればとても良いことがある。
 ・自分が頑張って相手が挫折すると、こちらが手痛い目に遭う。
 ・自分が挫折して相手が頑張っていたら良いことを逃す。
 ・自分が挫折して相手も挫折したら、あまり好ましくない方向に行く。

といったものです。少し書き直すと

・自分が頑張り続けた場合 相手も頑張ってくれたらとても良いが、 相手が挫折すると、とても悪い。

・自分が挫折した場合 相手が頑張っていたら、けっこう悪い 相手が挫折していたら、まぁまぁ。

つまり 100点か0点になる道を選ぶべきか、70点か30点になる道を選ぶべきか 相手の行動によって自分の行動の意味が逆転してしまうのが苦しい所です。

似たようなのでは、麻薬取引問題というのもあります。

AとBが麻薬取引をすることになった。しかし、二人は直接は接触しない。
ある場所を決めておいて、Aが現金の入ったスーツケースを持ってその場所 に置いてきて、そのあとBが麻薬の入ったスーツケースを持ってその場所に 行きスーツケースを交換して持ち帰る。そのあと又Aがその場所に行き麻薬 のスーツケースを持ち帰る。

しかしAからすると現金を渡したのに相手はもしかしたら小麦粉を渡される かも知れない。また、こちらが新聞紙を詰めたのを渡して、まんまと麻薬を せしめられたら大もうけ。Bも同様のことを考えます。

これはよく心理学実験で行われます。これを実際実験で繰り返しやらせて、 統計を取ってみると、初期の段階ではけっこう相互裏切りがあるのに対して 次第に減少していき、逆に相互協調が増えていく傾向があると言われます。

つまりなかなかお互いに最初は相手を信用できずに疑心暗鬼になり、裏切ら れると次はこちらも裏切るということが続くので、取引が成立しないのです が、やがて落ち着くときちんと協調関係が築かれてくる、という訳です。

こういう心理は全く逆の環境の中でも起きることがあります。

ベトナム戦争の時、米軍は前線のグループをだいたい2週間程度で交替させ なければならなかったそうです。それはなぜかというと2週間も前線で戦闘 をやっていると、そのうち兵士たちがベトコン側の前線の兵士と気が通じ合 うようになってしまい、あまり積極的に戦闘しなくなったからだと言います。

こういう話を聞くと、私は人間の性善説を信用したくなります。


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