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常温核融合第一報(1989)
1989年3月23日、英国の経済誌「ファイナンシャル・タイムズ」は「試験管 内で電気化学的反応により核融合を起こすことに、米国と英国の2科学者が 共同で成功した」と報道しました。 世界を賛否両論の渦に巻き込んだ『常温(低温)核融合騒動』の始まりでした。 実験を行ったのはイギリス・サウサンプトン大学のマルチン・フライシュマ ン教授とアメリカ・ユタ大学のスタン・ポンス教授です。二人は重水を満た した試験管内にパラジウムとプラチナの電極を入れ電流を流した所、核融合 によるとしか考えられない熱が発生し、また核融合の際に生じたと思われる トリチウム、ニュートロン、ガンマ線を検出したと発表しました。 物質は原子から出来ていますが、原子は中心の原子核とその回りを回ってい る電子から成り立ちます。原子核の中にはプラスの電気を持つ陽子と電気を 持たない中性子があり、電子はマイナス電気を持ちます。 核融合というのは、複数の原子がその原子核が合体することによりひとつの 原子に生まれ変わる現象です。太陽の中では4つの水素原子が合体して、1 つのヘリウム原子に変化する反応が起きており、その際に生まれる熱が太陽 の放射する莫大な光と熱のエネルギー源になっています。 一般にそれまで核融合というのはものすごい高温の中でしか起きないものと 考えられていました。太陽の中心部の温度は1500万度という超高温です。通 常の核融合の実験は世界各地の大学などで進められていますが、何百万度と いう高温を実現して、その中で核融合を起こしています。 一般にそういう実験で使っている素材は「重水素」です。通常の水素原子は 陽子1個だけでできていますが重水素の原子は陽子1個と中性子1個ででき ています。太陽の中では普通の水素原子4個でヘリウムに変化しますが、そ こまで高温を実現できない地上では、この重水素を2個融合させてヘリウム 原子を作る方法が取られています。 フライシュマンとポンスが行った実験で使われた「重水」とは重水素と酸素 の結合によって出来ている水です。水 H2O は液体の状態では実際問題として、 H+ と OH- に分かれており、このHが核融合の材料になる訳です。 そして、フライマンとポンスが行った実験の衝撃は、この核融合がそれまで 何百万度という高温の世界でしか起きないと思われていたのに、ごく普通の 温度の下で起きたということでした。 この発表に対するほとんどの物理学者の意見は「そんな馬鹿な」でした。そ してほとんどの人が「何かの間違いに決まっている」あるいは「そんな都合 のいいことが起きる訳がない」とコメントしました。 しかし一部の物理学者は「ほんとうだったら凄いことだ」と考え、追試を試 みました。しかし追試には誰も成功しませんでした。 中には「うちでも出来た」と発表した学者もいましたが、調べてみると実験 装置に問題があったり、その学者がやった方法を他の人が追試しようとして も、うまく行かなかったりというものばかりでした。 この狂想曲は発表後7〜8年も続きました。 そしてちょうど10年たった今。世界の大勢は「やはり間違いだったのだろう」 ということになっています。まだまだ研究を続けている人は多くありますが、 見るべき成果は得られていません。 さて事実はどちらなのでしょうか?
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