ポール・モーリア(1925-)

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今日はこの項は長年のファンとして書かせて頂きます。

「恋はみずいろ」「エーゲ海の真珠」「オリーブの首飾り」などのヒット曲で知られるイージー・リスニングの大御所ポール・モーリアは1925年3月4日フランスのマルセイユに生まれました。

10歳から16歳までマルセイユの国立音楽院で音楽全般を学び、18歳の時からプロのミュージッシャンとしてクラブ等で活動をはじめました。この頃からすでにトレードマークの髭を伸ばしていたようです。

27歳の時にフランク・プウルセルの世話もあってバークレーレコードと契約、スタジオ・ミュージッシャンとして活動します。クラブで演奏をし、更にスタジオで色々な歌手のバックを勤めたことが、後のオール・ラウンド・プレーヤーとしてのポール・モーリアを作ったのでしょう。

ポール・モーリア・グランド・オーケストラ(*1)の結成は1966年です。そして1968年には「恋はみずいろ」が世界的にヒットし、彼はやっと一流の音楽家の仲間入りをしました。43歳、非常に遅いデビューです。この曲は全米ヒットチャートで連続5週トップを取りました。

その翌年の1969年に初来日。その後一時期は毎年1回来日して全国ツアーをやり、当時は日本に来る海外アーチストの中で来日最大回数のアーチストでした。この毎年の来日も1987年で止まりましたが、最近でも年齢を押して数年に一度のペースで日本に来てくれています。

彼のグランドオーケストラとしての活動をファンとして個人的に分類させてもらえば、4期に分類できます。

第一期 1968-1974頃 初期。素朴なイージーリスニングの演奏をしていた時代。「恋はみずいろ」、「エーゲ海の真珠」、「天使のセレナード」「涙のトッカータ」などといった名演奏が世界中の人々の耳を楽しませてくれ、これらの曲は彼自身の作曲でないにも関わらず「ポール・モーリア・サウンド」と呼ばれています。

第二期 1974-1981頃 挑戦期。彼が色々なものに挑戦した時代です。ディスコブームを先取りした「オリーブの首飾り」に始まり、「ペガサスの涙」のようなロック色の強い曲、「カリオカの碧い風」のようなラテン系の曲、デジタルサウンドの魅力たっぷりの「ロマンティック・レーザー」などがありますが、この時代の曲は「オリーブの首飾り」など幾つかを除いては最近はあまり聞かれることはなくなりました。

第三期 1981-1987頃 円熟期。これは1981年の「再会」という曲で突然訪れました。初期の頃のファンには嬉しい「ポール・モーリア・サウンド」と再会した記念すべき作品です。この時期の作品は美しいサウンドにポップさが加わり、いわば「大衆サウンドの芸術品」の域に達しています。

    「窓からローマが見える」「恋人たちのバラード」などの名曲のほかミュージカルのヒットに随分先行して取り上げた「メモリー(CATS)」、そして「フラッシュダンス」「アイライクショパン」「ケアレスウィスパー」「スリラー」「セーラ」など多くのワールドヒットのカバーを出しています。しかしこの時期、1983年に長年コンビを組んできた楽団のピアニスト、ジェラール・ギャンバスが退団、そして1987年の記念碑的作品「Nagekidori(嘆き鳥)」以降は活動のペースを落とすことになります。

第四期 1985年以降。名前はまだ付けられません。1985年以降、彼はポップクラシックのアルバムを何枚か出しています。これは私の好みで言えばあまり出して欲しくなかったものでした。多くのイージーリスニングの演奏家が事実上の引退直前頃の時期にポップクラシックをやっていましたし、ポップクラシックは非常に少ない例外(真珠取りのタンゴ、キッスは目にして、など)を除けば、どうしてもクラシックのオリジナル演奏には勝てません。しかしそれでも「運命」などはシンセサイザをバリバリ効かせた相当面白い作品に仕上がっていました。

----------------(*1)グランドオーケストラというのはバイオリンなどの弦楽セクションとトランペットなどの管楽器セクションを中心にして、ポップスでは重要な役割を果たすドラムス、ラテンパーカッション、ギターとエレキベース、それにピアノとシンセサイザーを加えたポップス演奏用のオーケストラです。

  1980年代のイージーリスニング・ブームの頃には、リチャード・クレイダーマン、フランク・プウルセル、レイモン・ルフェーブル、フランシス・レイ、ピエール・ポルト、ジェームス・ラスト、カラベリ、などの楽団が活動していましたし、老舗のパーシーフェイス、マントバーニー楽団もありました。

  日本でも一時期、前田憲男がグランドオーケストラを編成したようですが、あまり長くは活動しなかったようです。日本ではむしろジャズ演奏用のビッグバンド(シャープス&フラッツや東京ユニオンなど)が多く結成されました。


(2001-03-03)

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