ブラックホールの研究で有名なホーキング(Stephan William Hawking)は1942年1月8日に生まれました。
今世紀初頭に、アインシュタインという巨人が出て、相対性理論を提出。私たちの宇宙に関する認識は大きく変化を遂げました。
しかし同時期に、ミクロの世界ではハイゼンベルグやシュレディンガーといった人たちが量子力学を確立しました。
この量子力学と相対性理論というのは、いわば対極にある理論であり、この両方を理解し、それを矛盾無く頭の中で絵を描ける人というのは、皆無でした。アインシュタインも「神はサイコロを振らない」と言って最後まで量子力学に反対していました。
このふたつの今世紀初頭の大きな発見を踏まえて、その両方から導かれる宇宙の姿を初めて描いたのが、ホーキングでした。とりわけブラックホールの仕組みに関してかなり深い研究をしています。
ホーキングは学生時代から筋ジストロフィーに犯され、体が動かなくなり、声も出なくなっていますが、その病気と戦いながら第一線の研究を続けています。ノーベル賞を受けるにふさわしいレベルの研究ですが、彼の理論を実証するにはまだ何十年もかかるのではないかともいわれます。ノーベル賞は(一度事故があって以降)確実に検証された研究にしか贈られない主義になっていますので、彼がノーベル賞を受賞するのは難しいかも知れません。
アインシュタインでさえ、相対性理論は彼の存命中には検証できそうになかったため、苦肉の策として全く別の研究を名目にして物理学賞を授与しています。
ホーキングによれば全てを吸い込むはずのブラックホールが実は光を出していることが分かります。これは言われてみると、ごく当然のことです。
ブラックホールの事象の地平付近でも量子力学の不確定性原理により、常に量子対の生成と消滅がおこなわれています。この時、生成した量子は反対方向に飛び出しますので、その内一方だけがブラックホールに捉えられ、他方はブラックホールから遠ざかってしまいます。結果的にはこの遠ざかった粒子は、外から見ていると、あたかもブラックホールから出てきたように見えます。
彼の理論によるとこのような現象を経て、長い間にはブラックホールは蒸発してしまうとされ、その際に放出されるエネルギーは莫大なものになるようです。彼は数秒程度で蒸発してしまうような超小型のブラックホールが宇宙にはたくさんあるのではないかと主張し、それは人類にとってエネルギー源にもなりうる存在ではないか、と予言しています。