近代物理学と微積分学の祖とされるアイザック・ニュートンは1642年の12月25日に生まれました。(旧暦による。この当時新教国のイギリスはまだグレゴリウス暦を採用していない)
ニュートンに関するエピソードで最もよく知られているのは、リンゴの落ちるのを見て、万有引力の法則を発見したというものです。
もっとも、これでは「カラスの声を聞いて悟りを開いた」などといった禅僧のエピソードのようですが、もう少し詳しく説明することができます。
ニュートンはリンゴが落ちるのを見て、これはリンゴと地球が互いに引き合っているから起きた現象ではないかと考えました。とすると、この宇宙にある全てのものにお互いに引き合う力が働くのではないか、と拡大解釈します。
すると、太陽・地球・月などを動かしているのも、実はこの物が互いに引き合う力なのではないか、というところまで考えたのです。要するにリンゴと地球が引き合うのと同様に地球と月も引き合っているのではないかと考えたわけです。
ニュートンの先駆者はケプラーで、彼は惑星の軌道に関する法則を発見していました。いわく
・惑星は太陽を焦点のひとつとする楕円軌道を描いて回っている・惑星の運動の面速度は常に一定である。・惑星の公転周期の二乗と軌道半径の三乗の比は全ての惑星について等しい。
ケプラーはティコ・ブラーエの長年にわたる観測結果をもとに、この経験則を導き出したのです。その頭脳も大したものだというしかありません。
しかしニュートンの発想はまたさらにすごいものでした。
ニュートンは彼が開発した「微積分学」の手法を使い、「全ての物の間に距離の二乗に逆比例した引力が働く」という仮定をするとケプラーの法則が導かれることを発見します。
この計算は今日ではニュートンの法則が分かっているため、高校程度の数学力のある人なら誰でも計算して確かめることができます。しかし、この最初の法則が分かっていない状態で、ケプラーの法則から逆にその原理である、万有引力の法則を導き出すというのは、ものすごい発想力だといえるでしょう。
なお、ニュートンの万有引力の法則から惑星の運動の軌跡を計算すると、実は惑星は、ケプラーが考えていなかった、別の形の軌道を取ることもあることが分かります。
ケプラーは楕円だけを考えたのですが、ニュートンの方程式からは実は双曲線軌道・放物線軌道というものも導かれます。但し、双曲線や放物線の軌道を取る惑星は、一度太陽の近くまで来て、離れていったら、二度と太陽の近くまでは戻ってきません。しかし、彗星などの中にはこういう軌道を取るものもあります。
なおニュートンは晩年は天文台の責任者に任命され、その仕事が忙しすぎてまともに研究ができなかったといわれます。
ニュートンの力学はその後超高速の世界や超微細な世界で例外現象が現れることをアインシュタインやハイゼンベルクが発見するまで、近代科学の基礎として多くの理論のベースになって来ました。