1998年1月28日、惜しくも急逝した石ノ森章太郎は「サイボーグ009」と「仮面ライダー」が代表作として知られていますが、そのほかに「人造人間キカイダー」「さるとびエッちゃん」「変身忍者嵐」「佐武と市捕物控」などの作品があります。また大ヒット映画「空飛ぶ幽霊船」の原作も書いています。
宮城県中田町に生まれ、上京後、藤子不二雄や赤塚不二夫らと同じトキワ荘に住んで漫画家としてスタート。次々とヒット作を世に送り出しました。
「サイボーグ009」は、001=イワン・ウィスキー, 002=ジェット・リンク, 003=フランソワーズ・アルヌール, 004=アルベルト・ハインリヒ, 005=ジェロニモ・ジュニア, 006=張々湖大人, 007=グレート・ブリテン, 008=ピュンマ, 009=島村ジョー という9人のサイボーグ戦士の活躍を描いたもの。このタイトルの00はスパイ映画の「007」から、9は野球の1チームの人数「ナイン」から取ったものです。
初期のブラック・ゴーストとの戦いを描いたもの、ベトナム戦争の悲劇を描いたもの、未来人との戦いを描いたもの、ブラック・ゴーストの正体が判明する恐竜の国の戦いなどのシリーズがあり、最後のシリーズは「神」との戦いでした。
仮面ライダーはしばしば誤解されていますが、原作ではあの顔は正体を隠すための「仮面」でした。つまり「変身」の必要性はなかったのですが、TVシリーズ2号ライダーの一文字隼人(佐々木剛)以来、あの「変身」こそが仮面ライダーのシンボルになりました。
TVで2号ライダーが出てきたのは1号ライダー本郷猛を演じていた藤岡弘が低予算の為ほんとに危険な撮影を繰り返していた最中、怪我をしてしまったことから、早急に代役を立てなければならなくなった為でした。その時、ライダーが死んだことにしてしまうと後で藤岡を復帰させることができないため、苦肉の策で「2号」が登場することになったものです。
石ノ森章太郎氏のこれらの作品は、いわば手塚治虫の「鉄腕アトム」の延長線上にあります。そこに描かれているのは戦争への抗議であり、機械文明に潜む疎外された者の悲哀でもあります。
石ノ森章太郎氏の晩年の力作として「マンガ日本の歴史」シリーズがあります。全部で60巻あまりに及ぶこの作品は、氷河期末期の頃から卑弥呼の時代・聖徳太子の時代・奈良平安・武士の時代から明治・戦後までの日本の歴史を順を追ってマンガでたどったものです。膨大な資料をもとに、一部では大胆な仮説をたてて、物語は描かれており、歴史の参考書として非常に貴重なものに仕上がっています。
これは通常の「やさしくマンガで解説した本」などという領域をはるかに越えた本格的歴史書です。
(1998-01-24)