タロットの歴史(6)江戸時代のかるた
江戸時代のかるたについて
さて、今日は江戸時代のかるたについて簡単に触れておきます。 日本に残っている最古のかるたは三池(現在の福岡県大牟田市)で作られたもので、1枚だけ芦屋の滴翠美術館に保存されています。なお、この三池にも、かるたの美術館があります。 ここのかるたやタロットの収蔵点数はすごいものです。

この当時の天正かるたは先に述べたように48枚ですが、これは4つのスート (聖杯・棒・剣・硬貨)に各々12枚のカードがありました。12枚とは1〜9と女従者・騎士・王で、女従者をソータ、騎士をウマ、王をキリと称しました。また、1はピンと呼び、ここから「ピンからキリまで」という言葉が生まれています。 この構成は元になったポルトガルのタロットをベースにしたものです。

さて、これから発展して「うんすんかるた」が作られたのですが、これはスートを1個(クル:巴紋)増やすとともに、各スートに2枚のカード「うん」と「すん」を加えたものです。「うん」と「すん」があるから「うんすん」という訳です。結果75枚になります。「うん」は福の神又は達磨で、「すん」は唐の人物のようです。なお、現代の言い回しで「うんとか、すんとか、言えよ」 或いは「うんともすんとも言わない」というのがありますが、これはここから来たものでしょう。

なお、実際には「うんすんかるた」よりも元の形の「天正かるた」の形式の方が当時はより多く使われたようです。

さて、このかるたの文化を背景に、古くからある「もの合わせ」の中の「花合わせ」の遊びを母体にした、もうひとつ新しいカードが江戸時代には生まれています。これが「花札」で、花札の枚数の48枚は、天正かるたと枚数を合わせたものだとされます。まあ、天正かるたは12枚のカード4セットに対して 花札は4枚のカード12セットではありますが。また、花札の12月の花が 「桐」であるのは、天正かるたの一番上のカード「キリ」と掛けたのではないかと言われています。

いろはかるたについて
さて、今回のシリーズの最後に「いろはかるた」について述べておきましょう。 「いろはかるた」について最も詳しく研究されている本は下記の本であるそうです。残念ながら未入手(~_~)

  森田誠吾「昔・いろはかるた」求龍堂 1970

さて、森田氏の研究によれば「いろはかるた」に歌われている「いろはたとえ」の発祥の地は上方で、天明年間(1781-1789)頃に出来たものの当時は色々なバージョンが乱立していたようです。この中には「いやいや三杯」で始まる「いやいや版」などもあり、これは明治時代にかるたに作られたものが滴翠美術館にも保管されています。なお「いろはたとえ」の前に元禄年間(1688-1704)には「いろは短歌」というのもあったそうです。

さて、この上方で成立した「いろはたとえ」がやがて京都・尾張・江戸と流れ て来て、文化年間(1804-1818)頃までには江戸で現在のいろはかるたとほぼ同じ「いろはたとえ」のセットが成立していることが葛飾北斎(1760-1849)により記録されているとのことです。

この時点ではまだ「いろはたとえ」であり、かるたの形になっていないのです が、かるたとして成立したのは嘉永年間(1848-1854)頃のようで、既にこの当時はもう現在の「いろはかるた」と完全に同じものになっています。

なお、元々の上方版いろはたとえでは、「豆腐にかすがい」と「糠に釘」のような同じ意味のことわざが含まれていたりしたのに、江戸いろはかるたはその界隈をすっきりさせ、洗練されたものとしてまとめられています。

ということで、「いろはかるた」というのは、古い伝統文化のように思われて、実は嘉永年間から昭和中期までのわずか100年間のつかの間の文化であったものと思われます。更にこれが全国に普及したのは、何と日露戦争(1904-1905) 後の好景気をバックに東京の出版社が全国に流し始めてからとのことです。このつかの間の文化・江戸いろはかるたのセットを民俗学的資料としてそのまま 下記にあげます。これは以前書いた理由でもうこのセットでは出版することは不可能になっているものです。但し便宜上歴史的仮名遣いは現代仮名遣いに改めました。

  い・犬も歩けば棒にあたる       ゐ・芋の煮えたも御存知無い
  ろ・論より証拠            の・喉元過ぐれば熱さ忘るる
  は・花より団子            お・鬼に金棒
  に・憎まれっ子世にはばかる      く・臭いものに蓋
  ほ・骨折り損のくたびれ儲け      や・安物買いの銭失い
  へ・屁をひって尻つぼめ        ま・負けるは勝ち
  と・年寄の冷や水           け・芸は身を助ける
  ち・塵も積って山となる        ふ・文は遣りたし書く手は持たぬ
  り・律儀者の子沢山          こ・子は三界の首っかせ
  ぬ・盗人の昼寝            え・得手に帆を上げ
  る・瑠璃も玻璃も照らせば光る     て・亭主の好きな赤烏帽子
  を・老いては子に従う         あ・頭隠して尻隠さず
  わ・割れ鍋に閉じ蓋          さ・三遍回って煙草にしょう
  か・かったいのかさ恨み        き・聞いて極楽見て地獄
  よ・よしの髄から天井を見る      ゆ・油断大敵
  た・旅は道連れ            め・目の上のこぶ
  れ・良薬(れうやく)は口に苦し     み・身から出た錆
  そ・総領の甚六            し・知らぬが仏
  つ・月夜に釜を抜く          ゑ・縁は異なもの
  ね・念には念を入れ          ひ・貧乏暇無し
  な・泣く面を蜂が刺す         も・門前の小僧習わぬ経を読む
  ら・楽あれば苦あり          せ・背に腹は変えられぬ
  む・無理が通れば道理引っ込む     す・粋は身を食う
  う・嘘から出た真           京・京の夢大阪の夢


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