
カード各論(16)塔, The Tower, La Maison de Dieu
このカードは日本語では一般に「塔」「落雷」「落雷の塔」などと呼ばれ ているが、英語やフランス語では Tower ( Tour ) という「塔」の名称も あるが、Maison de Dieu ( House of God )「神の家」という名称もある。 イタリア語なら Casa di Dio で、この言葉は通常「教会」を表す。
なぜこのカードがこう呼ばれるかについては幾つかの説がある。casa が caso(偶然)の間違いではないかとの説もあるがやや苦しい。落雷のイメー ジに教会の塔が合うからだという説もある。教会の塔というのは昔は通常 その界隈で一番高いものであったため、落雷によくやられたのだというの である。避雷針が発明されたのはほんの200年ほど前のことであるらしい。
このカードから多くの人が連想するのは聖書の『バベルの塔』の物語であ る。これは創世記11章に書かれている。
昔全世界の人々は同じ言葉を話していた。ある時東方から来た人々がシン アルの地に住み着き、煉瓦を焼いた。彼らは天にも届く塔を作って自分達 の名を高めようとした。神は彼らのもとに降りてきて、みんなが同じ言葉 を話すからこういうことをするのだといって、彼らの言葉を混乱させ互い に話が通じないようにしてしまった。このため町の建設は中断し、彼らは バラバラになった。言葉の混乱(バラル,BBL)によって放棄されたこの町は バベル(BBL)と呼ばれる。
この物語は人間が驕りを持って神に至ろうとしたため罰を受けたとものと 通常解釈されている。このカードもあたかも神に近づこうとして塔を作っ た人間に対して神が稲妻を走らせて塔を破壊したというようにも見える。
しかし逆の解釈も存在する。そもそもこのカードは「神の家」つまり教会 と呼ばれている。その神に対抗する存在は光の熾天使にして悪魔の長たる ルシファーである。神聖な教会の塔。それを悪魔の光・稲妻が切り裂く。 そのような連想というのも中世には存在していたようである。
いったいこの稲妻は神聖なものなのであろうか?それとも邪悪なものなの であろうか?
稲妻の出る元が目であるという場合、これは「ホルスの目」と呼ばれる古 くからある護符の形式である。アメリカの1ドル紙幣の裏模様にも登場し ている。ホルスはエジプトの神々の王であり、要するにこれは神の目が世 界中を見ていて、全ての人に神の加護があることを表すものである。しか しこの図形そのものに昔から逆の意味の噂もある。世界征服を企む?ある 団体の陰謀だという説である。