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←→ カード各論(12)吊され人 The Hanged Man, Le Pendu

【一般的な絵柄】
男が片足を曲げ、片足を上から吊されて、逆さまになって いる。男を吊している紐は2本の木の間に渡した棒に結ばれている。通常 右足で吊され、左足を曲げている。この足の曲げ方は世界のカードと同じ である。腕は一般に後ろで組んでいる。一般にこの人物は苦しんでいる風 ではなく、デッキによっては笑っていたり鋭い眼光を発しているものもあ る。一部のデッキでは死刑になった男のように描いているものもあるが、 正統派ではない(通常は男はまだ生きている)。また、足ではなく首を吊っ ているものもあるが、それも正統派ではない。
【一般的な意味】
停止。凍結。冷蔵庫。奉仕。自己犠牲。降伏。処刑。マゾ。 苦しみ。自己完結。同じことの繰り返し。進歩がない。怠惰。挑戦。試験。 努力。まだ見えないゴール。再生。生れ変わり。人生の転換。骨折り損。 辛抱不足。(逆位置の時)進展。無駄死に。
【コメント・象徴探求】
含蓄の深いカードです。その起源についてはキリスト教関係に求める立場 と、それ以前の古い信仰に求める立場があります。

キリスト教関係では、このカード自身がキリストに深く関わっています。 キリストは十字架で磔にされましたので、この人物自体がキリストである と考えることも可能です。またキリストの弟子の筆頭ともいうべきペトロ であるという説もあります。例の「翌日鶏が鳴くまでに私のことを知らな いと3回言うだろう」と師から予言されたペトロです。彼はキリストの死 を嘆き、自分が処刑される時は、師と同じ方法では失礼にあたるので逆さ 磔にされたいと言ったという伝説があります。

古い信仰に関する部分では、まず金枝篇の世界に連想が飛んでいく所です。 王に若き者が挑み、挑戦者が勝てば王は死んで挑戦者が新しい王になる。 そういう伝統をこのカードは連想させます。

また、北欧のオージンの伝説をも連想させます。北欧神話の神々の王であ るオージンは、ユグトラシル(宇宙樹)にぶらさがって更に自分を槍で突い て自分をこの木に捧げました。彼はその代償としてルーン文字の秘密を 学びます。そもそも「ユグドラシル」とは「オージンの絞首台」という 意味なのだそうです。

中世のヨーロッパや中東には、実に厳しい苦行を積む人々がいました。 彼らは何日間も断食したり、相当痛い目にあったりしながら、神の世界 に近づくことを夢見て、苦行に励んでいました。その厳しさは体にカビ が生えたりしても、それも自然の世界に近づいたんだと喜んでそのまま にしておく、などというくらいであったといいます。彼らの中には逆さ 吊りの苦行くらいするものも居たことは想像に難くありません。この カードには、そういう人たちのイメージも含まれているように思います。

この逆さ吊りの苦行というのは、深層心理学的に言えば、死の模倣です。 人は死ねば向こうの世界に行ってしまいますが、それを疑似体験するこ とで何かのヒントを得ようとしている訳です。日本で現代でも行われて いる千日回峰行では、700日を終えた所で堂に籠もって9日間断食すると いう苦行が組み込まれています。ここが千日回峰行の中でも一番きつい ところだそうです。堂の中に籠もっての断食というのも死の模倣に他な りません。これを通り抜けることによって行者は生きたまま仏となるの です。

人を首で吊すと、すぐ死んでしまいますが、足で吊しただけではすぐは 死にません。ですからこれはより苦しませる処刑法としても使われたこ とがありますし、拷問法としても使われたことがあります。遠藤周作の 「沈黙」をお読みになった方は印象深い場面を覚えておられると思いま すが、江戸時代の初期のキリシタン弾圧では逆さ吊りにして身体を少し だけ切るということが行われました。するとそこから血がポタリポタリ と一滴ずつ落ちていき、吊されている人はそのこと自体に恐怖を覚える という仕組みです。

しかし、このカードの人物は恐怖に震えるではなく、むしろ平然として いたり笑っていたりします。これはやはり処刑された人というよりも、 何かを得るために、この状態で修行をしている人と考えた方がよいのだ と思っています。ルーンを得る為にオージンが自ら木に吊られたように。



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