|
|
|
|

カード各論(6)恋人, The Lovers, L'amoureux
【一般的な絵柄】 男女の恋人(裸の場合も多い)が立っている。天には愛の
天使またはキューピッド(しばしば目隠しをしている)がいて、矢で彼
らを狙っていることも多い。そこにもう一人の女性がいる場合もある。
その場合、普通、男を真ん中にして、恋人は右側、もう一人の女性は左
側にいることが多い。彼らは分かれ道に立っていることもある。
【一般的な意味】 恋愛,結婚,完全,調和,信頼,デート,セックス,魅力,誘惑,
恋の始まり,選択,試験,三角関係,愛人問題,嫁姑問題,恋愛上のストレス
【コメント・象徴探求】
今日は少し長いです。
恋人というのなら男女二人が描かれていれば十分なはずなのに、何故か
第三の人物が描かれているものがあります。これはだいたい17〜18世紀
頃からこの3人版というものが出てきているようです。
この第3の人物については、結婚式をあげている司祭(巫女)である、と
いう説と、愛人或いは男の母親である、という説があります。後者では
男がどちらの女を取るか迷っている、あるいは母の元を去って恋人と一
緒になるというのを表しているのだといいます。しかし私は前者の解釈
が正しいのではないかと思います。
さて、この結婚式をあげている司祭(巫女)と解釈する場合、その位置が
問題になります。なぜ左側にいるのでしょう?真ん中になるのが自然な
気がしますね。そういうイメージ通りに描かれているデッキもあります。
ご存じ、18世紀エッティラのタロットです。このカードでは中央に司祭
がいて、男女のカップルを結婚させています。
では、なぜそこから現在の構図に変わってしまったか、なのですが、こ
れについては、U.S.Gamesのタロット百科事典vol.2の説が当たっている
ように私も思います。(この説に関して詳しくは同書をごらん下さい。
同書では、天上に描かれている天使のルーツについても触れています。)
すなわち、本来恋人のカードの3人版というのはエッティラのカードの
場合のように、司祭は真ん中だったのではないかと思われます。従って、
このカードの中央にいるのが司祭で、両側にいるのが結婚式をあげるカ
ップルです。それでは女同士の結婚になってしまうではないか?と思う
かも知れませんが、私はこの3人版というのが粗雑な木版印刷であるマ
ルセイユ版により普及していることに注目しています。
昔の騎士の時代の物語などを見ていますと、騎士や王子たちの衣装とい
うのは、上着の裾が広がっていて、一見ミニスカートを履いているかの
ようです。ここでまだ3人版が登場していない時代の代表デッキ、ビス
コンチ・スフォルザの「恋人」などをご覧ください。結婚する男性の服
は.....やはりスカートに見えますね? ということで、マルセイユ版
がコピーにコピーを重ねて製造されていく過程で、いつの間にか本来は
男女であった二人が、女性二人と勘違いされて印刷されるようになった
のではないか、これが「恋人3人版」の誕生の秘密ではないか、と私は
考えています。
マルセイユ版にはしばしばカード名称の綴りのミスなどもありましたし、
結婚式のための華麗な衣装に身を包んだ男性が女性と間違われるくらい
は十分起きそうに思います。マルセイユ版より少し早い時代に日本に伝
わってきた同じ系列の天正かるたなどでは、スート・シンボルの形が崩
れるくらいは普通。上下を間違えて印刷してしまった例などもあります。
そういう訳で、左右にいるのが女二人であるとしたら、真ん中の司祭が
男なので、「これが結婚する男の方だろう」と思われてしまい、ますま
すそういう絵柄になっていったのではないか。そういう気がしています。
17世紀末〜18世紀初頃と思われるPiedmontese Tarotあたりが、その形
式で定着した初期のものではないかと思われます。
さて、私はこのカードは「双子座」と関連していると思っています。と
ころで「恋人」は男女ですが、「双子座」はカストルとポルックスで男
同士ですね。で、このカードのタロット成立以前のルーツとしては、こ
こに描かれるのは、本当は男同士でも男女でも構わないのではないか。
実は「二人」であるというのが大事なのではないかと思います。(司祭
は描かれていても、背景にすぎないから構わない)
要するに、このカードの根元的象徴は「2」であって、そこから「恋人」
という意味と「選択」という意味が派生したのではないかと考えます。
同性愛系のカードでは同性同士の「恋人」がありますが、普通のカード
でも例えば「アリスのタロット」はトイードルダムとトイードルディー
で男同志です。これは意外と真理を突いているかも知れません。
なお、この「恋人」のカードもセックスを表しますが、セックスを表す
カードも幾つかあります。女帝・恋人・戦車・悪魔などですが、それぞれ
のカードにふさわしいセックスの側面を表しています。恋人は精神的な面,
女帝は肉体的な面,戦車は性技的な面(通常激しいもの),悪魔は愛欲的な面
です。SMは悪魔(縛るから)、カーセックスは戦車(車だから)。個人授業
みたいなものは女帝ですし、ニューハーフも女帝です。一般に女性原理に
支配された性行動・性現象は女帝の範囲です。男性原理に支配されたもの
は今度は戦車の範疇でしょう。恋人や悪魔の場合は陰陽のバランスが取れ
ています。
妊娠は本来女帝が表しますが、受胎の瞬間というのは恋人です。ここから
先は魔術の世界の話になりますが、二人のオーラが融合して絶頂を迎えた
瞬間、陰陽の気が作り出す螺旋が高く舞い上がってアストラル界にまで
到達し、そこから新たな魂を迎え入れます。生命の創造は魂の創造(招待)
を伴っているのです。これは精神世界の出来事ですから、受胎は「恋人」
のカードの担当。ただし、そのあと妊娠の維持は女帝の担当になります。
なお、この受胎を起こす瞬間の螺旋は、宇宙樹(ユグドラシル)とか生命の
樹と呼ばれるものの一部と考えられます。この辺りは魔術と密教とのクロ
スポイント。諸星大二郎氏がこの付近のシンボリズムをテーマに一時期
かなり巨木伝説と天の邪鬼の話を描いていますね。
「恋人」のカードも実は非常に奥の深いカードです。
「恋人」のモデルとしては、多くの人たちがまずアダムとイブ(エヴァ)を
あげます。少し新しい時代になると、トリスタンとイゾルデなどという
ものもあります。「真ん中の男を二人の女が取り合う」イメージでは、
アダムを中央にして、右のエヴァと左のリリス、ということになります。
中世的言い方では「美徳と悪徳」ということになります。いづれの場合も
二人の女性を色分けして描く場合があります。前述Piedmontese Tarotで
は左の女性のみが冠をかぶっています。これは裕福な女を取るか、恋しい
女を取るか、という選択になっているものと思われます。
(C)copyright ffortune.net 1995-2007 produced by ffortune and Lumi.
お問い合わせはこちらから
|