賀茂探求(45)循環する神

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written by Lumi on 00/05/27 03:31.

まずたくさんの神様の名前が出てきましたので、一応系図でまとめてみましょう。

高産霊神――栲幡千々姫 +火明命 ‖――+ 伊邪那岐 +天照大神―天忍穂耳命 +迩迩芸命  +火照命(海幸彦) ‖――+              ‖―――+ 伊邪那美 +――――――大山祇神    ‖   +火遠理命山幸彦) |        ‖――+木花開耶姫   ‖―鵜葺屋葺不合命       +―――――鹿屋野姫神 +木花知流姫  豊玉姫   ‖――神武天皇 |           +石長姫         玉依姫 |   天知迦流美豆比売 |        ‖―――大山咋神(松尾明神・日吉明神) |神大市比売 +大年神       |  ‖―――+ |  ‖   +宇迦之御魂神(お稲荷様) |  ‖                       天若彦       +素戔嗚神―――――田心姫               ‖ ‖  ‖      ‖――味鋤高彦根神(賀茂大神)・下照姫        ‖  ‖………大己貴神だいこく様)       (阿加流姫) ‖  ‖   ‖  ‖――八重事代主神高照姫        ‖  ‖   ‖  ‖    ‖――五十鈴姫(神武天皇皇后) ‖  ‖   ‖ 高降姫  三島溝杭姫        ‖  ‖ ‖―――――建御名方神(諏訪明神) ‖  ‖  沼河姫 ‖ 櫛稲田姫 ‖――――――――葛城一言主神        ○

高皇産霊尊    ‖――+高皇産霊神―天太玉命―天石戸別命―天富命 神皇産霊尊
      +天神玉命―天櫛玉命―天神魂命―櫛玉命―武津之身命(天八咫烏) ‖―――玉依姫 伊賀古夜姫 ‖―賀茂別雷命                                火雷命

まずは大山祇神の位置と、事代主神の位置を確認してください。上記で名前 の出ていない神の中で重要な神をいくつかあげておきます。

大物主神大国主神大己貴神)の幸魂奇魂(さきみたま・くしみたま) 少彦名神神産霊神の子 蛭子神 :伊邪那岐神伊邪那美神の第1子

それから上記では書き切れませんでしたが、神大市比売は大山祇神の娘です。
 従って大山咋神大山祇神の曾孫にあたります。

伊邪那岐神伊邪那美神から始まる系図の内、天神系・地祇系は次のように 区別されます。

天神・・・天照大神高産霊神から始まる系統 地祇・・・素戔嗚神神産霊神から始まる系統

この2つの系統が (1)伊邪那岐神伊邪那美神の子供の姉弟(天照大神素戔嗚神)から 分かれている。
 (2)神武天皇とその皇后五十鈴姫において、両系統が統合されている。

という点にも注意してください。

賀茂神社(系)の御祭神は、

葛城:下鴨神社  事代主神     中鴨神社  大歳神高照姫     高鴨神社  味鋤高彦根神     長柄神社  下照姫     一言主神社 一言主神

京都:木島神社(中) 火明命 上賀茂神社(艮)賀茂別雷命     下鴨神社    玉依姫・賀茂建角身命     日吉神社    大山咋神大物主神     松尾神社(坤) 大山咋神     伏見稲荷神社(巽)宇迦之御魂神     愛宕神社(乾) 迦遇槌命(雷神) この地図は2000.10.3に追加した。

賀茂の神(&民)は宮崎→熊野→葛城→大阪→京都と移動して行っています。
このため賀茂は熊野とも関わっており、熊野の王子には八咫烏が祭られて います。そもそもこの王子神社というのは近年では祇園・熊野信仰の中で 素戔嗚神の御子神たちと考えられていますが、元をたどると日吉神社の八 王子山から来ています。

さて、賀茂建角命と賀茂大神を時々混同している人がいるのですが、賀茂 大神というのはあくまで味鋤高彦根神のことであって、これは分けて考え た方が良いでしょう。また高知ではこの味鋤高彦根神一言主神は同じ神 ではないかとする説もありますが、これも誤解です。恐らくは一言主神は 葛城に最も古くからおられた神のおひとりなのではないかと思われます。
賀茂一族はそのあとでやってきたのでしょう。

この賀茂一族の中核となるのが味鋤高彦根神八重事代主神で、特に事代 主神はその子孫が初期の天皇家の妃になるというたいへん重要な地位を占 めていた一族を代表しています。

この事代主神は葛城を出発点として、奈良盆地北端の岡田、それから淀川 水系を遡って京都の地に至ります。しかしここに安住せず出雲の美保関へ 移られます。しかしここで天孫族の侵入があり、事代主神はお父さんの 大国主神大己貴神)から交渉者の一人に指名され、国譲りに同意。

すると事代主神はここを去り伊豆へ行き、火山島とともに再生。残された 地が「伊豆喪」(出雲)になってしまいます。事代主神は三島明神となら れたわけです。

ここで三島明神と呼ばれる神様としてはもう一人大山祇神もあります。こ ちらは瀬戸内海の大三島に御鎮座しておられ、伊豆の三島にも一度訪問し て来られています。そして、この大山祇神の娘の木花開耶姫神が富士山に 御鎮座しておられます。

「三島明神」というのは、今回見てきた「賀茂の神々」というのと同様に 三島一族が信奉した神々のことと考えた方がいいのかも知れません。伊豆 の三嶋大社の神官家と瀬戸内海大三島の大山祇神社の神官家は同族である ともいわれています。

事代主神と「三島」との関わりは、実は伊豆より以前に、おそらくは岡田 におられたころに出来ていました。大阪の三島、三島鴨神社溝咋神社の 地に奥様の溝咋姫がおられて、そこに通っておられたからです。

つまり「三島」という地名は、元々瀬戸内海・大阪・伊豆にあり、この内 瀬戸内海と大阪の三島は、大山祇神の拠点です。

そして、事代主神はこの大阪の溝咋のところへ通ってきた時に、ちょうど その場所に展開していた三島一族と交流することになります。

このため、大阪の三島鴨神社には大山祇神といっしょに事代主神が祀られ ているのです。つまり、大山祇神事代主神は「お友達関係」ということ ができます。

三島溝咋と大山祇神の関係は不明ですが、三島溝咋もおそらく三島一族の 傍系かも知れません。そこで事代主神は奥様の関係で三島の名前を名乗る 権利を得て、伊豆で三島明神になられたのかも知れません。一方賀茂一族 の方も古くから伊豫国に展開しており、大三島のすぐそばにも賀茂郡がで きています。

さて、この事代主神は元々は農業神のようで、後世には「えびす様」とし て漁業や商売繁盛の神様とみなされるのですが、もうひとの性格として、 託宣の神としてのものがあります。

この託宣神という性格を持つ神としては他に一言主神大物主神もあります。

一言主神は葛城の神、大物主神は三輪山の神です。あるいは事代主神は葛城 で生まれ育った時にこの一言主神の神格の一部を引き継いだのかも知れない という気もします。

この葛城山と三輪山を結ぶ線は寅申線になっており、その線の上に橿原があ ります。大和の耳成山付近に立つと、夏至に三輪山から朝日がのぼり、冬至 に葛城山に夕日が沈みます。

この大物主神大国主神の幸魂奇魂であるともいわれます。そして天智天皇 が大津に都を作った時、比叡山の日吉神社に勧請されて赴き、大比叡の神と もなられました。

この比叡山に元から御鎮座していたのは大山咋神。こちらは比叡山と松尾山 に御鎮座して、このふたつの山がまたまた寅申線で結ばれます。

そして太秦の木島神社の位置に立つと、夏至に比叡山から朝日がのぼり冬至 に松尾山に夕日が沈みます。

そして、三輪山と葛城山を結ぶ線上に藤原宮が作られたのと同様に、比叡山 と松尾山を結ぶ線の上に平安宮が作られました。しかも、松尾山というのは 葛城山の真北に位置しているのです。

この比叡山・松尾山の神が大山咋神。松尾山に関する伝承では、大山咋神が 丹塗の矢になって、乙女を感応させ、生まれた子供がこの一族の先祖になっ たとします。この話は賀茂建角命と賀茂別雷神に関する神話と全く同じパタ ーンになっています。

となってきますと、松尾山には本当は最初は事代主神が祀られていたのでは ないかという気になってきます。そしたら、この京都の寅申線は大物主神事代主神という、いづれも大国主神にゆかりの深い神の組み合わせで守護さ れることになります。が、そのような痕跡は見あたりませんので、その説は そこでSTOP。

しかしかくして神々のエネルギーはこの奈良・京都に関してはうまく回って います。大阪・出雲・瀬戸内海・伊豆を巻き込みながら。このエネルギーの 循環路において、奈良は京都にエネルギーを供給する働きをしています。

京都が1000年の栄華を誇っていた間、奈良も南都として、やはり重視されて いました。南北朝時代というのは、この両者のエネルギーを分断してしまっ たでしょうから、そういう意味では南北朝が戦国時代を引き起こしたという 考え方も成り立つかも知れません。

また明治維新の時、新政府は京都の人たちに配慮して正式の遷都の宣言をし ていません。そのため現在でも日本の首都は京都であるという見解がありま す。これは私はそのままにしておいた方がいいように思います。東京の地は 京都ほど何重もの守護はなさそうな気がします。

この奈良・京都の神々の配置を作ったのは、鴨・秦の一族。その作業は雄略 天皇の時代に始まり、それを聖徳太子の時代の秦河勝や平安時代前半の何人 もの呪術師たちが調整していって、最後の仕上げをしたのがひょっとすると、 安倍晴明あたりなのかも知れません。500年も掛けて作られた壮大な神々の ネットワーク。

そう簡単に同じようなものは作れません。


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