占星術では天空を12等分して星座としますが、実はその等分の基準点につい て2つの考え方があります。 西洋占星術をやる人のほとんどは、トロピカルという方式を取ります。これは 春分点を規準に12等分する方法です。 春生まれた人と秋生まれた人はどうしても性格に差が出てくることが予想され ます。そこで、つまりトロピカルというのはこういう季節感覚を大事にした 分割方法です。 これに対して、サイドリアルというのは春分点ではなく、バックの星空に対して 固定された基準点を使用します。 春分点は25800年周期で天空を一周します。その移動する春分点ではなく、固定 された星空の方向で把握しようという立場です。 結果的には、トロピカルでは星座の名称と天空の星座の位置はずれてしまい ますが、サイドリアルでは常に一致します。この点でこちらのほうが合理的 ではないかと考える人もあるようです。 サイドリアルの泣き所は、バックの星空に固定しようとしても、実は各恒星が 固有の運動をしているため、どの星に合わせればいいかが不明確であること です。このため、サイドリアルの場合、流派によって基準点が異なり、当然 ホロスコープも変わってくるという事態が生じます。トロピカルの場合は こういうことはありません。 インド占星術はサイドリアルを使用しています。これはインドでは生まれに よって職業などが完全に決定され、自由な生き方ができないため、「宿命」 (生まれ持ったもの)の部分が大きな要素を持つためといわれます。これに 対して西洋では個人の生き方は自由なので、その人の「運命」(動かせるもの) の部分が大きな要素を持ち、トロピカルが有効になるのだといわれています。 近年インド占星術(ジョーティッシュ)が人気ですが、その背景には、通常 の自分の運命だけでなく、自分の本来の出発点の部分の宿命を一度見直して みたいという願望があるのかも知れません。