↑ 赤道とか黄道とか白道
占星術をしていると赤道・黄道・白道などというのが出てきて、どうもさっぱり分からないという方がいます。それについて少し下記にまとめておきましょう。

大雑把な言い方をすると、黄道(こうどう)は太陽の通り道、白道(はくどう)は月の通り道です。赤道は地球の赤道をそのまま天に投影したものです。

地球は太陽の周りを1年掛けて公転(revolution)していますので、地球から見た時に太陽が見える方角も1年掛けて天を1周します。この1周する軌跡のことを黄道(こうどう,ecliptic)と呼んでいます。

また月は地球のまわりを1ヶ月かけて公転していますので、月の見える方角も1ヶ月かけて天を1周します。この軌跡が白道(はくどう,moon's path)です。

太陽の場合は回っているのは地球であり、月は本当に地球のまわりを回っているのですが、どちらも地球を基点にすればまわりを回っているように見えるわけです。黄道と白道は5度8分ほど離れています。

赤道(せきどう,equator)は地球の自転(rotation)が生み出しているものです。地球は北極と南極を軸とする自転運動をしていますが、この軸に垂直な平面が赤道面です。この平面が天球を切り取ってできる大円が天の赤道になります。

そういう幾何学的な言い方をするなら、黄道は地球の公転平面が天球を切り取ってできる大円、白道は月の公転平面が天球を切り取ってできる大円です。

ここで大円(great circle)とは、球面幾何学において直線の役割を果たすもので、球の中心を通過する平面と球面との交線になっているものです。赤道・黄道・白道は全て大円ですし、北極と南極を結ぶ子午線も大円、また地平線も大円になっています。
 
なお地球の自転軸は公転面に対して約23度26分傾いていますので、赤道と黄道の距離も23度26分あることになります。これは地球上の南北回帰線の緯度と一致します。

大円同士は必ず球面上の2ヶ所で交わります。赤道と黄道の公転は春秋分点(Equinox)と呼ばれ、太陽が3月下旬に通過するポイントが春分点、9月下旬に通過するポイントが秋分点です。黄道と白道の交点は昇降点と呼ばれ、占星術の世界では昔からドラゴンと呼ばれていました。現代では月が昇っていく点を龍頭(Dragon Head)と呼び、降りていく点を龍尾(Dragon Tail)と呼んでいますが、この名称は歴史的に常に混乱していました。詳しいことについては感受点概要の龍頭龍尾のところを参照して下さい。

黄道・白道・赤道のほかに、もうひとつ重要なものは地平線です。星が地平線より上に出ているか下に出ているかは常に重要な問題ですので、天体の位置を考える時にこれは無視できません。赤道と地平線のなす角度は緯度と一致します。

このほか、子午線・卯酉線・寅申線・辰戌線についても触れておくべきでしょう。これらの名前は東洋の方位の名前に由来します。東洋の方位について詳しいことはこの付近を参照して下さい。

少し下の図を見て下さい。東洋では西洋と同じ8方位の区分と十二支を当てはめた12方位の区分があります。更に細分した24方位もあるのですがここでは省略します。なぜ12分割が必要なのかについては、少し下の方で書きます。

子午線(しごせん,meridian circle)とは地球上の北と南を結ぶ大円です。北が子(ね)の方位、南が午(うま)の方位なので子午線と書くわけです。これは同じ経度のポイントを結んでできる大円でもあります。これに直交するするのが東西を結ぶ大円で卯酉線(ぼうゆうせん,prime vertical)といいます。東が卯(う)の方位、西が酉(とり)の方位なので、卯酉線といいます。卯酉線は東西を横切り、天頂・天底を通ります。なお、同じ緯度の所を結んだ線は大円にはなりませんのでそれは卯酉線とは一致しません。日本を通る卯酉線は地球の裏側ではアメリカ合衆国付近ではなく、ブラジル付近を通過します。つまり日本の真東のほうにあるのはブラジルです。

北東と南西を結ぶ線は艮坤線(ごんこんせん)、南東と北西を結ぶ線は巽乾線(そんけんせん)と言います。ここでは八方位の名称が使用されています。このふたつの線は子午線と卯酉線を二等分するものですから使い手があるように思えるのですが、実際には中国・日本では卯酉線から30度ずらした寅申線(いんしんせん)・辰戌線(しんじゅつせん)を伝統的に使用してきました。これは↑図に書いている太陽の方位の問題があります。

つまり日本の京都・奈良や中国の西安(昔の長安)などの緯度では、冬至の太陽は辰の方位から昇って申の方位に沈み、夏至の太陽は寅の方位から昇って戌の方位に沈みます。そこでこの方位はひじょうに重視され、古代から寺社の配置などに使用されてきました。中国・日本ではそのために十二等分の方位が普及したというのもあるのでしょう。

【緯度ごとの夏至冬至日出方位】

 
緯度方位北半球南半球
66.5690.00 コラ半島
6570.26 レイキャビク 
6052.71 ストックホルム,アンカレジ 
5543.91 コペンハーゲン南米南端
5038.23 樺太,バンクーバー,フランクフルト 
4534.23 稚内,モントリオール,ミラノニュージーランド南端
4031.28 盛岡,マドリッド,ニューヨーク 
37.330.00 能登半島,ペロポネソス半島,グラナダ,サンノゼオーストラリア南端
3529.05 京都,東京,クレタ島,ロサンゼルスブエノスアイレス,喜望峰,シドニー
3027.34 屋久島,カイロ,ヒューストンレソト
2526.03 宮古島,マイアミ,アスワン 
2025.04 ハワイ,メキシコトンガ,マダガスカル
1524.32 サイパン,ダカール 
1023.82 アジスアベバ 
523.53 コロンビアセイシェル
023.44 シンガポール,ナイロビ
【各種座標系】 coordinate system

 星の位置を表わす座標系には次のようなものがある。

(1)地平座標
    基準面として、地平面を考える。ここで地平面とは何かという議論は省略する。

    地平面と天球が交わってできる大円が地平線(horizon)である。地平面で切られた
    天球の一方の内、天頂(zenith,観測者の真上の点)を含む側が地上に出ており、
    天底(nadir,観測者の真下の点)を含む側は隠れていると考えられる。

    天頂Zと地平線上の南の点Sを通る大円を子午線(meridian)という。「子午線」
    の名の由来は子の方角(北)と午の方角(南)とを結ぶ線ということである。

    天体を地上から見上げる角度を高度(altitude,記号h)という。これは天体Xと
    天頂Zを含む大円が地平面と交わる点の内Zから見てXと同じ側にある点X0から
    Xまでの角距離である。高度は-90゜〜90゜の範囲である。
    
    逆に天頂Zから天体Xまでの角距離を天頂距離(zenith distance,記号z)という。
    天頂距離は0〜180゜である。当然、天頂距離(z)=90度−高度(h)。

    また、上記の点X0を天球の中心から地平面上で見た方角を、南を見た方角から
    時計回りに計った角度をXの方位角(azimuth,記号A)という。方位角は南が0度,
    西が90度,北が180度,東が270度になる。

(2)赤道座標
      基準面として赤道面(equator plane)を取ってみる。これは地球の赤道を天球
      に投影したものである。同様に地球の北極・南極を投影したものを天の北極・
      南極(north pole, south pole)という。

      この場合も天体Xと天の北極Pを通る大円が赤道面と交わる点のうち、北極P
      から見て天体Xと同じ側にある点X0を考え、X0からXへ計った角距離を赤緯
      (declination,記号δ)といい、赤道面上で春分点(vernal equinox)からX0へ
      反時計回りに計った角距離を赤経(right ascension,記号α)という。赤緯は
      -90゜〜+90゜、赤経は0゜〜360゜で表現する。

      或は赤経の代りに、赤道面上で南方向から時計回りに計った角距離で表現する
      場合もある。これを時角(hour angle,記号t)という。時角は0h〜24hで表現する
      が、計算上は角度に直して(15倍して)処理する。

      春分点の時角を(地方)恒星時(sidereal time,記号s)という。この定義から
      明かに、t=s-α の関係がある。

(3)黄道座標
      基準面として黄道面(ecliptic plane)を取ってみる。これは地球の軌道平面と
      考えてもよい。

      この場合も天体Xと黄道の北極Kを通る大円が黄道面と交わる点のうち、K
      から見て天体Xと同じ側にある点X0を考え、X0からXへ計った角距離を黄緯
      (celestial latitude,記号β)といい、黄道面上で春分点からX0へ反時計回り
      に計った角距離を黄経(celestial longtitude,記号λ)という。
      黄緯は-90゜〜+90゜、黄経は0゜〜360゜で表現する。

      黄道と赤道の交点が春分点(vernal equinox)と秋分点(autumnal equinox)で
      ある。この位置はいわゆる「歳差」によって毎年少しずつ前進している。

      又、黄道と赤道が為す角度を黄道傾斜角(obliquity of the ecliptic)という。
      この値も一定のものではなく、常に変動している。黄道傾斜角は以降の説明
      ではεの記号で表す。

(4)観測点の緯度・経度について

      天球上の値ではないが、天体位置の計算をする上では、観測点の緯度(latitude)
      ・経度(longtitude)が常に関わってくる。ところで一般に緯度と呼ばれるもの
      には幾つかの種類がある。
      
      地図で我々が知ることのできるものは地理的緯度(或は測地的緯度)といって、
      観測点において地球楕円体(*1)に立てた法線が地球の赤道面と為す角度である。
      
      これに対して我々が必要なものは、例えば北極星の南北における子午線通過位置
      を観測するなどして実際に天体観測によって得られる緯度で、天文緯度という。
      これは地理的緯度と約0.01度以内程度の差がある。
      
      この他に観測点と地球の中心を結ぶ線が赤道面と為す角度を取る地心緯度という
      緯度の測り方もある。

      以下使用する記号としては緯度は記号φを使用する。これは厳密には天文緯度で
      あるが、実際には我々が問題としている範囲内では地理的緯度と大差無いので、
      両者を混用する。

      (*1) 地球は球と言うよりも少し潰れた楕円体といった方がよい。この潰れ方を
           表す「扁平率」は約300分の1である。実際問題として、地球の赤道半径は
           約6378kmだが、極半径は約6357kmしかない。

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