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天体計算の基礎(2)
第2章 天球の座標とASC・MCの計算
【天球の座標】
ここでは、概念の復習をすることを目的とする。従って、正確な言葉の定義は
省略する。なお、以下の文章を読む際は自分で図を書きながら読むと理解しやすい
のではなかろうか。
(1)地平座標
基準面として、地平面を考える。ここで地平面とは何かという議論は省略する。
地平面と天球が交わってできる大円が地平線(horizon)である。地平面で切られた
天球の一方の内、天頂(zenith,観測者の真上の点)を含む側が地上に出ており、
天底(nadir,観測者の真下の点)を含む側は隠れていると考えられる。
天頂Zと地平線上の南の点Sを通る大円を子午線(meridian)という。「子午線」
の名の由来は子の方角(北)と午の方角(南)とを結ぶ線ということである。
天体を地上から見上げる角度を高度(altitude,記号h)という。これは天体Xと
天頂Zを含む大円が地平面と交わる点の内Zから見てXと同じ側にある点X0から
Xまでの角距離である。高度は-90゜〜90゜の範囲である。
逆に天頂Zから天体Xまでの角距離を天頂距離(zenith distance,記号z)という。
天頂距離は0〜180゜である。当然、天頂距離(z)=90度−高度(h)。
また、上記の点X0を天球の中心から地平面上で見た方角を、南を見た方角から
時計回りに計った角度をXの方位角(azimuth,記号A)という。方位角は南が0度,
西が90度,北が180度,東が270度になる。
(2)赤道座標
基準面として赤道面(equator plane)を取ってみる。これは地球の赤道を天球
に投影したものである。同様に地球の北極・南極を投影したものを天の北極・
南極(north pole, south pole)という。
この場合も天体Xと天の北極Pを通る大円が赤道面と交わる点のうち、北極P
から見て天体Xと同じ側にある点X0を考え、X0からXへ計った角距離を赤緯
(declination,記号δ)といい、赤道面上で春分点(vernal equinox)からX0へ
反時計回りに計った角距離を赤経(right ascension,記号α)という。赤緯は
-90゜〜+90゜、赤経は0゜〜360゜で表現する。
或は赤経の代りに、赤道面上で南方向から時計回りに計った角距離で表現する
場合もある。これを時角(hour angle,記号t)という。時角は0h〜24hで表現する
が、計算上は角度に直して(15倍して)処理する。
春分点の時角を(地方)恒星時(sidereal time,記号s)という。この定義から
明かに、t=s-α の関係がある。
(3)黄道座標
基準面として黄道面(ecliptic plane)を取ってみる。これは地球の軌道平面と
考えてもよい。
この場合も天体Xと黄道の北極Kを通る大円が黄道面と交わる点のうち、K
から見て天体Xと同じ側にある点X0を考え、X0からXへ計った角距離を黄緯
(celestial latitude,記号β)といい、黄道面上で春分点からX0へ反時計回り
に計った角距離を黄経(celestial longtitude,記号λ)という。
黄緯は-90゜〜+90゜、黄経は0゜〜360゜で表現する。
黄道と赤道の交点が春分点(vernal equinox)と秋分点(autumnal equinox)で
ある。この位置はいわゆる「歳差」によって毎年少しずつ前進している。
又、黄道と赤道が為す角度を黄道傾斜角(obliquity of the ecliptic)という。
この値も一定のものではなく、常に変動している。黄道傾斜角は以降の説明
ではεの記号で表す。
(4)観測点の緯度・経度について
天球上の値ではないが、天体位置の計算をする上では、観測点の緯度(latitude)
・経度(longtitude)が常に関わってくる。ところで一般に緯度と呼ばれるもの
には幾つかの種類がある。
地図で我々が知ることのできるものは地理的緯度(或は測地的緯度)といって、
観測点において地球楕円体(*1)に立てた法線が地球の赤道面と為す角度である。
これに対して我々が必要なものは、例えば北極星の南北における子午線通過位置
を観測するなどして実際に天体観測によって得られる緯度で、天文緯度という。
これは地理的緯度と約0.01度以内程度の差がある。
この他に観測点と地球の中心を結ぶ線が赤道面と為す角度を取る地心緯度という
緯度の測り方もある。
以下使用する記号としては緯度は記号φを使用する。これは厳密には天文緯度で
あるが、実際には我々が問題としている範囲内では地理的緯度と大差無いので、
両者を混用する。
(*1) 地球は球と言うよりも少し潰れた楕円体といった方がよい。この潰れ方を
表す「扁平率」は約300分の1である。実際問題として、地球の赤道半径は
約6378kmだが、極半径は約6357kmしかない。
(5)天体のサインについて
天球上を大円で切られた12の部分に分割したものをサインという。以下で
使用する方法はトロピカルと呼ばれる方法で、これは黄道の北極を中心点に
して、春分点を通る大円を中心に、黄道上での角距離が30度ずつになるように
12等分したもので、春分点を通る大円で区切られた部分から、太陽の進行方向
に順に、牡羊座(Aries)・牡牛座(Taurus)・双子座(Gemini)・蟹座(Cancer)・
獅子座(Leo)・乙女座(Virgo)・天秤座(Libra)・蠍座(Scorpio)・射手座(Sagi
tarius)・山羊座(Capricorn)・水瓶座(Aquarius)・魚座(Pisces)という。(*1)
これは天球上で恒星の区画に与えられた星座(コンスタレーション)とは名前
は同じでも、全く別のものである。しかしサインの名前の由来はそのコンスタ
レーションなので、便宜上サインの事を簡単に星座と呼ぶこともある。
サインとコンスタレーションが現在一致していない最大の理由は歳差、つまり
春分点の進行である。
(*1) 一部の占星家は白羊宮・金牛宮・双児宮・巨蟹宮・獅子宮・処女宮・
天秤宮・天蠍宮・人馬宮・磨羯宮・宝瓶宮・双魚宮と中国訳風に呼ぶ。
(6)垂直座標について
これは、この文書だけの便宜上の用語である。この座標系は地平座標とちょうど
直角の関係にあるもので、地平線上の北の点を極とし、東の点−天頂−西の点−
点底が作る大円を基準面とする。
基準面から北方向に見上げる角度を垂緯、真東の点から天頂方向へ測った回転角
を垂経と仮に呼ぶ。以下では、垂緯は記号μで、垂経は記号νで表す。正確に
言えば、天体Xと北の点Nを通る大円が基準面とXと同じ側で交わる点をX0と
するとき、XとX0の角距離が垂緯μで、東の点EからX0まで基準面にそって
はかった角距離がνである。
【各種座標変換】
この節で無断で使用している記号については、前節を参照されたい。
(1)地平座標から赤道座標への変換
sin(δ) = sin(φ)cos(z) - cos(φ)sin(z)cos(A)
cos(δ)cos(t) = cos(φ)cos(z) + sin(φ)sin(z)cos(A)
cos(δ)sin(t) = sin(z)sin(A)
ここで、cos(δ)>=0 であることに注意すると、時角t は下の2式からatan2
で求めることができる。δ=-90〜90だから一番上の式からδが出る。
赤経を求めたければ、恒星時sから、α=s-t。
[式の根拠:天体Xに対して、北極Pと天頂Zが作る球面三角形△PZXに
おいて、球面三角法の定理を適用する。詳細略。次の項も同様]
(2)赤道座標から地平座標への変換
sin(z)sin(A) = cos(δ)sin(t)
sin(z)cos(A) = -cos(φ)sin(δ) + sin(φ)cos(δ)cos(t)
cos(z) = sin(φ)sin(δ) + cos(φ)cos(δ)cos(t)
ここで、sin(z)>=0 であることに注意すると、方位角A は上の2式からatan2
で求めることができる。z=0〜180だから一番下の式からzが出る。
(3)赤道座標から黄道座標への変換
cos(β)cos(λ) = cos(δ)cos(α)
cos(β)sin(λ) = sin(δ)sin(ε) + cos(δ)sin(α)cos(ε)
sin(β) = sin(δ)cos(ε) - cos(δ)sin(α)sin(ε)
ここで、cos(β)>=0 であることに注意すると、黄経λ は上の2式からatan2
で求めることができる。β=-90〜+90だから一番下の式からβが出る。
[式の根拠:天体Xに対して、赤道の北極Pと黄道の北極Πが作る球面三角形
△PΠXにおいて、球面三角法の定理を適用する。詳細略。次の
項も同様]
(4)黄道座標から赤道座標への変換
cos(δ)cos(α) = cos(β)cos(λ)
cos(δ)sin(α) = -sin(β)sin(ε) + cos(β)sin(λ)cos(ε)
sin(δ) = sin(β)cos(ε) + cos(β)sin(λ)sin(ε)
ここで、cos(δ)>=0 であることに注意すると、赤経α は上の2式からatan2
で求めることができる。δ=-90〜90だから一番下の式からδが出る。
(5)地平座標から垂直座標への変換
sin(μ) = -cos(A)sin(z)
cos(μ)sin(ν) = cos(z)
cos(μ)cos(ν) = -sin(A)sin(z)
ここで、cos(μ)>=0 であることに注意すると、垂経ν は下の2式からatan2
で求めることができる。μ=-90〜90だから一番上の式からμが出る。
[式の根拠:天体Xに対して、XとX0と天頂Zが作る球面三角形△XX0Zに
おいて、球面三角法の定理を適用する。詳細略。次の項も同様]
(6)垂直座標から地平座標への変換
cos(z) = cos(μ)sin(ν)
sin(z)sin(A) = -cos(μ)cos(ν)
sin(z)cos(A) = -sin(μ)
ここで、sin(z)>=0 であることに注意すると、方位角A は下の2式からatan2
で求めることができる。z=0〜180だから一番上の式からzが出る。
【MCの計算】
今回はMC(Mid Cusp)は黄道上で時角=0の点として求める事にした。この方式の
問題は高緯度地方では、MCが地平線より下に来てしまうことである。その場合
地平線より上にある方を取りたければ、その対称な点を取れば良いのだが、今回
散々悩んだあげく、結局どちらがMCとして適切か判断が付かなかったので、この
処理については保留する。なお、MCは南半球では北にあることも注意しておく。
時角=0の点としてしまうと、MCの計算は単純明解である。
(4)より
cos(δ)cos(s) = cos(λ)
cos(δ)sin(s) = sin(λ)cos(ε)
sin(δ) = sin(λ)sin(ε)
上の2式より、λ=atan2( sin(s)/cos(ε), cos(s) )。
【上昇点の計算】
このプログラムでは上昇点(Ascendant)というのを、その時間に地平面を下から上に
通過しつつある黄道上の点と定義している。天体が地平面を下から上に通過できる
のは、南北を結ぶ直線よりも東側に限られるので、その位置は、前節の変換の公式に
おいて、Z=90, A>180, β=0 とおけば求められる。
実際(1)より
sin(δ) = - cos(φ)cos(A)
cos(δ)cos(t) = sin(φ)cos(A)
cos(δ)sin(t) = sin(A)
そこで(3)より、
cos(λ) = cos(δ)cos(s-t)
= cos(δ)cos(s)cos(t) + cos(δ)sin(s)sin(t)
= cos(s)sin(φ)cos(A) + sin(s)sin(A)
sin(λ) = sin(δ)sin(ε) + cos(δ)sin(s-t)cos(ε)
= sin(δ)sin(ε) + cos(δ)cos(ε)sin(s)cos(t)
- cos(δ)cos(ε)cos(s)sin(t)
= - cos(φ)cos(A)sin(ε) + cos(ε)sin(s)sin(φ)cos(A)
- cos(ε)cos(s)sin(A)
0 = sin(δ)cos(ε) - cos(δ)sin(s-t)sin(ε)
= sin(δ)cos(ε) - cos(δ)sin(ε)sin(s)cos(t)
+ cos(δ)sin(ε)cos(s)sin(t)
= - cos(φ)cos(A)cos(ε) - sin(ε)sin(s)sin(φ)cos(A)
+ sin(ε)cos(s)sin(A)
3番目の式から、Arctan により A が求められる。ここで A は2通り出てくるが
A>=180 のものを採用すればよい。A が出れば 上記の cos(λ)=・・・, sin(λ)=・・・
の式から atan2 でλが見つかる。
《式の簡易化》
3番目の式から tan(A) = (sin(ε)sin(s)sin(φ) + cos(φ)cos(ε))
/ (sin(ε)cos(s))
そこでこれを上の2式からλを求める式に代入すると、
λ= atan(- cos(φ)cos(A)sin(ε) + cos(ε)sin(s)sin(φ)cos(A)
- cos(ε)cos(s)sin(A),
cos(s)sin(φ)cos(A) + sin(s)sin(A) )
= atan( cos(φ)sin(ε) - cos(ε)sin(s)sin(φ)
+ cos(ε)cos(s)tan(A),
- cos(s)sin(φ) - sin(s)tan(A) )
= atan( cos(φ)sin(ε) - cos(ε)sin(s)sin(φ)
+ cos(ε)cos(s)tan(A),
- cos(s)sin(φ) - sin(s)tan(A) )
= atan( (sin(ε)^2 + cos(ε)^2)cos(φ)・cos(s),
(- sin(ε)sin(φ) - sin(s)cos(φ)cos(ε)) )
= atan( cos(s),
(- sin(ε)tan(φ) - sin(s)cos(ε)) )
この場合、λはASCとDSCの度数を与えるので、どちらがASCでどちら
がDSCかというのは、MCの度数と比較して検査する必要がある。
【イーストポイントの計算】
イーストポイントは黄道上で時角が真東、つまり赤経270度の点である。
時角が270度であるから、
cos(α)=-sin(s), sin(α)=cos(s)
これを黄経に直すと、
λ=arctan( tan(α)/cos(ε) ) = arctan( -cot(s)/cos(ε) )
となる。arctanは当然東側の解を採用する。
【バーテックスの計算】
バーテックスの定義は、現段階では分からないので、計算式だけをあげておく。
式を見ると地球の同半球裏側のASCという感じだ。(arctanは西側の解を採用する)
λ = arctan(cos(s)/(sin(ε)cot(φ) - cos(ε)sin(s)) )
なお、この式のもう一つの解(東側の解)がアンチ・バーテックス(AV)である。
【パートオブフォーチュンの計算】
パート・オブ・フォーチュン(Part of Fortune)は、ASC+月−太陽 で計算する。
類似の計算で出るものに次のようなものがある。
Part of Spirit = ASC + Sun - Moon
Love to = ASC + Sun - Venus
Love from = ASC + Venus - Sun
このような値はアラビック・パートと呼ばれ、ちょうどヨーロッパが暗黒時代に
突入していた時期に占星術発祥の地であるアラビアで独自に発達した理論の中から
生まれて来たものである。
【小惑星について】
まずは小惑星(アステロイド)がある。最も重要なのは1977年に発見された独特な
軌道を持つ惑星キローンである。この他に昔から知られた大アステロイドのセレス・
パラス・ジュノー・ベスタなどがある。なお、小惑星の数は1992年5月の時点で
軌道要素が判明しているものだけで5215個、不明のものを入れると数万個に達する。
小惑星の位置計算は、今のところ私の手には余る問題である。(少なくとも2体
問題ではとても始末に負えない)
【その他の感受点について】
(1)ドラゴンヘッド・ドラゴンテイル
月の軌道(白道)と太陽の軌道(黄道)の交点。つまり月の昇交点・降交点
である。月が黄道を上に横切る点(昇交点)をドラゴンヘッド(龍頭・正交(*1)
・計都・ノースノード)といい、下に横切る点(降交点)をドラゴンテイル
(龍尾・中交(*1)・羅ゴ(*2)・黄幡・サウスノード)という。
これらは6793.477日(18.6年)を周期に黄道上を逆行する。
太陽と月がドラゴン付近で合になれば(黄緯が近いので)日食が生じる。黄幡
の名前はそれに由来すると言われる。
ドラゴンの計算方法はまだ把握していない。
(*1) 正交と中交の定義は本来逆であったが17世紀頃に混乱が生じて逆転して
しまった。(この手の話は多い。無関係だが豆腐と納豆も逆転組である)
もっと言えば計都は本来は次項に示すリリスのことであった。(?_?)
(*2) 「ゴ」の字は文字セットどころか私が使っている漢和辞典にも中国語辞典
にも無かった。目ヘンに候である。
(2)リリス(その1)
月の軌道の遠地点(地球から最も離れる所)である。古くから闇の月(ダーク
ムーン)と呼ばれていた。中国・日本では孛(ハイ)又は月孛とか、月勃力・豹尾
などと呼ばれていた。前項の注に書いたように計都の名で呼ばれていた時代も
ある。これは白道上を3232.606日(8.85年)を周期に順行する。この計算方法も
まだ把握していない。
リリスがドラゴンテイルと合になる頃に皆既日食が起きると(月が地球に近い
所にあるため見掛け上の月のサイズが大きいので)皆既の継続時間が長くなる。
月勃力の名前は、そこから生じたと言われる。(全く昔の人の天体観察力/
分析力には本当に敬服するものがある。)
(3)リリス(その2)
これについては私もまだよく分からない。こちらもやはり闇の月(ダーク
ムーン)と呼ばれる。とにかく天空を1周約119日(=4朔望月??)で
順行する感受点である。このリリスのことに関しては、秋月さやか氏の「前世を
知るリリト占星術」(学研)が詳しい。計算方法についてはやはり分からない。

