コーヒーがいつ頃から飲み始められたかははっきりしませんが、9世紀に ペルシャの医師ラーゼス(850-922)が、コーヒーの医学的効用を自著の中で 述べているのが、文献上の初見になります。
人類がコーヒーを知ったきっかけについては、アラビアとエチオピアにそれ ぞれ伝説があります。
【アラビアの伝説】(イスラム教説) アラビアのイスラム僧シェーク・オマールは領主の誤解のために追われる 身となって、山中をさまよっていました。その時、一羽の鳥が赤い木の実 をついばみ陽気にさえずるのを見ました。試しにオマールがその実をなめ てみた所、不思議と空腹感が癒やされ、疲れが取れて気分壮快になるのを 感じました。
一方オマールを追放した領主の町では病気が流行して多くの人が苦しんで いました。そこでオマールが町に戻って、人々にその赤い実を煎じた汁を 飲ませたところ、みな良くなり、領主もオマールの罪を解きました。この 町がコーヒー豆の集荷地として有名なモカの町です。
【エチオピアの伝説】(キリスト教説) エチオピアの山羊飼いの少年カルディはある日、放し飼いにしている山羊 の一部が夜になっても元気に動き回っているのを不思議に思いました。ど うしたのかと見張っていると、その山羊たちはみな赤い木の実を食べてい ることが分かりました。カルディも試しにその実を口にしてみると全身に 活力がみなぎってきます。
カルディからその話を聞いたキリスト僧の修行僧たちが夜通し続ける長い 祈りの時にこの実を使って眠気を払うことを考えました。そして、この実 は睡魔に勝つ秘薬として、修行僧の間で広まったのです。
このアラビアまたはエチオピアを起源とするコーヒー豆がアラビカ種で現在 全世界のコーヒーの70〜80%を占めています。もうひとつの勢力は1895年に コンゴで見つかったロブスタ種。そして更に小勢力ですがリベリア原産の リベリカ種というのもあって、この3つをコーヒーの3原種と呼んでいます。
アラビカ種の代表は上記にも出てきたモカ。アラビア系にモカ・マタリ、 エチオピア系にモカ・ハラリがあることはコーヒー好きの方でしたらご存じ のところですね。ロブスタ系ではジャワ・ロブスタなどは日本国内でも入手 容易なものです。リベリカ種は日本にはほとんど入ってきてないそうです。
コーヒーはヨーロッパでは10世紀に前述ラーゼスの著書の翻訳で知られてい ましたが、実物が入ってくるようになるのは16世紀からです。この飲み物は どんどん人気が出て、バルザック(1799-1850)などは執筆にコーヒーが欠かせ なかったことが有名です。
日本には江戸時代初期に伝わっていますが、実際に少しずつ飲まれ始めたの は18世紀末あたりから。そしてやはり本格的な普及は明治以降になります。
日本で最初のコーヒー店は1888(明治21)年4月13日、東京下谷区上野西黒門町 2番地に開業した「可否茶館」。オーナーは鄭永慶。豪華なヨーロッパ風の お店でコーヒーは1杯1銭5厘でした。今の物価に直せば500〜600円の計算に なりますので、決して高くもなかったと思うのですが、あまりはやらず4年 で閉鎖に追い込まれました。
なお、可否茶館に先行して1886年に日本橋の洗愁亭がコーヒーを出していま すが、コーヒー専門店は可否茶館が最初になります。可否茶館の次は1890年 浅草のダイヤモンドコーヒー店。その後、この手の店は続々と出来ていった ようで、1910年には有名なメイゾン鴻の巣や、不二家洋菓子店などがオープ ンしています。
現在ではコーヒーの漢字は「珈琲」で定着していますが、初期の頃は上記の
「可否」とか「可非」「骨非」「骨喜」「加非」などといった文字も使われ
ています。また、唐茶、香湯、などといった意味から構成したもの。そして
コーヒーの古い名称を音訳した「波旡(ばん)」などというものもありました。
この「バン」という名前は現代でも喫茶店の名前によく使われています。
【コーヒーの主な銘柄】
モカ アラビア半島のモカ港からかつて出荷されていたもの(現在はホディダ やアデン)で、主にイエメン産のコーヒーである。アラビカ種のルーツ であり、ブラジルと並ぶ非水洗式アラビカ種の代表的存在。コーヒー の代名詞として「ホットモカ」などの用法もある。
コロンビア コロンビアで生産されている上質でマイルドな水洗式コーヒー。
特にメデリン産は有名。
キリマンジャロ タンザニアのキリマンジャロ中腹で生産される上質のマイ
ルドな水洗式コーヒー。
グァテマラ グァテマラの特にシェラマドレ山脈で生産されているもの。
ジャマイカ ジャマイカで生産されるコーヒーで、特にブルーマウンテン山
系の高地で栽培される『ブルーマウンテン』はコーヒーの最高級品種
とされている。なお日本国内で「ジャマイカ」名で流通している中級
コーヒーはジャマイカの低地で生産されたもの。
ブラジル 世界のコーヒーの生産量の30%を占める。モカと並ぶ非水洗式 アラビカ種の代表的存在。主力はアフリカのブルボン島原産のアラビ カ系ブルボン種とインドネシアのスマトラ島で育てられていた品種と を配合したムンド・ノーボ。積出港の名前から『サントス』とも。
ハワイ 特にハワイ島のコナで生産されるものが有名。
ジャワ・ロブスタ ジャワ島及びスマトラ島で生産されるロブスタ種。
マンデリン スマトラ島のマンデリン地方で生産されるアラビカ種。
トアルコ・トラジャ 上記2つと同じインドネシアのスラウェシ島で生産さ れるアラビカ種。ブルーマウンテンと並ぶ最高級のコーヒーである。
【初心者の為のブレンド】
コーヒーのブレンドをする場合、初心者の方はマイルドな味のコロンビアを ベースにすると、失敗が少ないでしょう。私が昔よくやっていたのはこうい う比率です。
コロンビア 40% ブラジル 30% モカ 20% グァテマラ又はマンデリン 10%
個人でブレンドをやり始めた場合、問題点は豆の鮮度がいい内に飲むことを 考えると、毎日かなり大量のコーヒーを飲むことになる、という問題で、私 がいちばんブレンドに凝っていた時期は1日に20杯くらいコーヒーを飲ん でいました。しかしさすがに飲み過ぎたのか、ある日突然からだがコーヒー を拒絶してしまい、そのあと半年、全くコーヒーが飲めない状態が続きました。