その大半はバラ科の軟質果実です。この系統に属するものが下記です。
ストロベリー(オランダ苺)
ラズベリー(ヨーロッパ木苺)
ブラックベリー
デューベリー
クサイチゴ(ナベイチゴ)
ヘビイチゴ(これは普通食べない)
ラスベリーなどの系統は「木苺」といいバラ科の中でも「キイチゴ属」を構成し ています。ラスベリー以外のキイチゴ属としてはベニバナイチゴ、カジイチゴ、 モミジイチゴ(アワイチゴ)、サツキイチゴ、フユイチゴ、トックリイチゴ、、 などもあります。ラズベリーに似たものでヤナギイチゴというのもありますが これはイラクサ科です。
ストロベリーに次ぐ人気があるブルーベリーはツツジ科のコケモモ属の植物
です。この系統に属するものが下記です。
ブルーベリー
クランベリー
コケモモ(苔桃)
ほかにイチゴの親戚のようものとしてヤマモモ(山桃)もありますが、これは 独立したヤマモモ科です。
いちご類の中でも最も人気があり国内の栽培量・消費量がダントツなのは ストロベリーで、単にイチゴといえば、通常ストロベリーを意味します。日本 国内の生産量は約20万トンで市場での取扱金額は国内トップの果物です。
ストロベリーは18世紀にオランダで開発された品種で、日本にも江戸時代に オランダ人により伝えられ「和蘭苺」と呼ばれました。オランダ人が持って きたからオランダイチゴと呼んだのでしょうが、実は作ったのもオランダ人 だったのです。
ストロベリーは元々初夏の食べ物です。だいたい秋に花芽が出て春に花が咲き 4〜5月に実がなります。ですから昔はスーパーなどにも、生のイチゴはこの 時期にしか並んでいませんでした。しかし現在は温室栽培により、一年中いつ でもイチゴはあって、それどころかクリスマスからお正月にかけて集中的に 出荷されるため、あたかも12〜1月が旬であるかのように誤解している人もある かも知れません。
最近はイチゴのブランド化もすすんでおり、その双璧は「豊の香」と「女峰」 でしょう。そのほか栃木の「とちおとめ」、静岡の「章姫」、佐賀や愛媛の 「さちのか」などといった新興ブランドも出てきています。
「豊の香(とよのか)」は福岡県の農水省野菜試験場久留米支場が「ひみこ」 と「春の香」を掛け合わせて作り1984年に登録されました。実が大粒なのが 最大の特徴。果汁も多く甘味と酸味に富んでいます。
「女峰(にょほう)」は栃木県農業試験場が「春の香」「麗紅」に「ダナー」を
掛け合わせて作られ1985年に登録されたもので、糖度の高さが最大の特徴。
酸味も適度にあり色鮮やかです。
ここ10年ほどは、東日本では女峰、西日本では豊の香、という感じで生産する 農家が増加しました。しかしやはり豊の香を生み出した福岡県、女峰を生み出 した栃木県のイチゴの出荷量は、他県を圧倒しています。なお豊の香・女峰の 双方の先祖である「春の香」は1970年代の人気早生品種ですが、日持ちがせず 病気に弱い欠点がありました。
「栃乙女(とちおとめ)」は栃木県農業試験場で「こちらも豊の香並みの大きな
品種を」という声に応えて開発されたもので7〜8年前から栽培が広がっています。
地元の栃木では女峰よりも既に出荷量が多くなっています。
「章姫(あきひめ)」は「女峰」と「久能早生」を掛け合わせて静岡県で生まれ たもので、大ぶりな割りに実の形が揃いやすい性質があり、酸味を抑えた味が 特徴です。
「幸の香(さちのか)」は野菜試験場久留米支場が「豊の香」と「アイベリー」 を掛け合わせて作り1996年に登録したもので輸送性に優れており、佐賀県と 愛媛県で産地が広がっています。
イチゴの食べ方としては、そのまま食べる、おやつの素材、ジャムにする、と いうのに大別できるでしょう。おやつの素材にするという場合、何といっても ストロベリーショトケーキはいちごを使うケーキの代表です。20年ほど前でし たでしょうか、イチゴが超不作な年があり、どこのお菓子屋さんにもイチゴ ショートがなくて、代わりに何種類かの果物を乗せたショートケーキが出てい ましたが、その中で最も人気があったのはメロンショートで、これは現在でも 生き残っています。
話が横道に外れすぎるのですがこの「ショートケーキ」の語源が実は謎になっ ています。有力な説としては (1)すぐに作れるケーキだから(short time cake) (2)ショートニングを使っているケーキだから (3)崩れやすいケーキだから (4)日持ちのしないケーキだから
などというものがあります。欧米のStrawberry Shortcake はミルフィーユの ような感じのものや、もっと堅いビスケット生地のものが多いようですが、 日本のストロベリーショートは、このケーキを日本に持ち込んだ不二家創業者 の藤井林右衛門が日本人の好みに合うように、スポンジを使用することを考案 したものだそうです。
なお苺を使った和菓子としては「イチゴ大福」が代表的です。これは1986年に 津市のとらやが考案したもので、最初は多くの人が一時的なブームと思ったで しょうが、イチゴの酸味と餡の甘さとのハーモニーは絶妙で、現在では和菓子 の定番のひとつとなりました。
ところで「苺」という漢字ですが、これは常用漢字・人名漢字に入っていませ ん。「岡」「菱」「庵」などと同様に入っていないのが不思議な漢字で、子供 の名前に「苺」と付けようとして、役所の戸籍係の窓口で断られる人が多くあ ります。そこで政府でも、現在「苺」などいくつかの漢字は追加する方向で 検討されています。一部には、JIS第一水準くらいの字は全部使えるように してもいいのではという意見もあるようです。
(2004-01-14)