変数名の秘密

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 今ではたいていの開発ソフトが変数名は32文字とか256文字とかまで使用  できるようになったので苦労がないのですが、昔の開発ソフトでは変数  名は長く使えるもので8文字以内、多くが6文字以内、どうかすると4文字  以内というものもありました。
 
 そこで、変数名の使い方に暗黙のお約束というものが出てきます。例えば  カウンターに使用する整数は最初 i を使い、複数必要な時は j, k とか  まで使うとか、浮動小数点数を入れる変数としては、一時的なものは  x,y,z などに格納し、比較的持続的なものは a,b,c などに格納するとか、  そういったものです。こういう伝統は、現在の java や perl などの  流通しているソフトでも踏襲されているようです。プログラムの書き手の  世代は完全に入れ替わっているというのに、ものすごい伝統です。

 しかし単純なソフトではこんなもので足りるのですが、複雑なソフトに  なってくると、こんな単純な変数名では足りなくなってきます。そこで  やっていたのは、整数なら i 浮動小数点数なら a を先頭に付けた上で  その変数の意味を『省略して書く』という方式。

 1970年代にプログラムを組んでいた人たちには下記のような変数の元が  何なのか一目で分かると思います。(何の処理をしているプログラムな  のかを知っているという前提で)

 isttm (i-integer, st-start, tm-time)  ictcr (i-integer, ct-count, cr-credit)  iestsm (i-integer, est-estimate, sm-sum)

 だいたいこういうときはまず母音を省略して子音だけにします。言語学  の研究でも、文章の母音を全て「曖昧なア」音に変更して相手に話して  もだいたい相手に意味が伝わるという実験結果があり、基本的に言語と  いうのは、子音だけでも情報を伝えることができるもののようです。
 ヘブライ語のように母音を表す字母を持たない言語もあります。

 子音だけにすることで足りればいいのですが、それで足りない場合は、  音節ごとの先頭子音だけにしてしまいます。ただしその先頭子音が二重  子音の場合はその二重子音までは書きます。chain を c と略すのとch  まで書くのでは情報量がかなり違う訳です。

 そしてそれでも足りない場合は、単語単位の先頭子音にしてしまいます。

 というわけで、cpkztsg なんて変数は computed kazei taisyo gaku で  あったりします(^^;; この時代のプログラマーには一般的にヘボン式で  はなく、文部省推奨の訓令式の使い手が多いです。それはヘボン式でshi  と3文字必要なものが訓令式では si で済んだりして、訓令式を使用した  方が、短く書けるからです。

 私もだいたい1982年頃までは、こういう変数名であふれたプログラムを  書いていました。


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