私は DDX-TP のコマンドを確認しながら、COBOLの通信プログラムを組み 立てていっていた。そしてほぼシステムが両方とも仕上がって、テストも 半ばまで行ったころ、私の上司が青い顔して飛んできた。
『おい。セールス・マニュアルを何気なく見ていたら、オフコンのこの 機種では DDX-TP は使えない、と書いてあるぞ』
そりゃ、今更ダメだなんて話になったら、マシンをこちらの責任でバージ ョンアップしたりして、数千万円の損害が出る。
私は思わず天を仰ぎ、セールスマニュアルのいわんとするところを上司に 説明するのに、苦労した。
「それはつまり、DDX-TP を制御するモジュールがメーカーからは提供され
ていない、ということなんです。ですから、勝手にこちらで作るのは全然
構わないんですよ。
「そもそも、いま組んでるプログラムは公衆回線のDDX-TPを使って相手ホ
ストと通信するという組み方はしてないんです。専用回線(RS232C)でつな
がったモデムという名前のホスト・コンピュータと通信しているんです。」
それにしてもこの上司はコンピュータ業界に10年以上かかわってきた人で あった。そんな人でも誤解してしまうほど、コンピュータ関係の文書とい うのは読みづらいものである。