青くなった瞬間

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壊した?  昔のパソコンはメモリーの取り付けがすごく大変だった。

 私が最初に個人で買ったパソコンはMacintosh II-cx である。68030 MMU付き。
 (初期のII-cxにはMMUが付いていない)クロックは16MHz。出荷時のメモリー  は2MBで、2組(各4個)のメモリースロットに256KBのSIMMが4枚ずつ計8枚ささ  っていた。(つまり全部埋まっているという非常に不親切な構成)  
 これを買った当時、うちの会社にはこのマシンより高速なコンピュータが  無かった(^^; プリンタやソフトまで入れて150万円。その後8年ほど掛けて  ローンを払った代物である。

 当時色々なソフトのカタログを見ているとメモリー3MB必須と書かれているも  のがよくあった。そこでメモリーを増設しようと思い、1MBのSIMMを2個買った。
 これを256KBのSIMMの内2枚と交換しようと思った。それで3.5MBの予定。
 
 「ところが」.....ひとつのメモリースロットには同じタイプのメモリーを  差してください、と書いてある。
 
 仕方ないので、片方のメモリースロットの256KBのSIMMを4個外し、1MのSIMM  を2枚差す。
 
 これで3MBだが、まぁなんとかなるだろう。
 
 起動しない。
 
 なぜ?  
 マニュアルを熟読して「ガーン」。
 
 「メモリースロットには同じタイプのメモリーを4枚差して下さい」と書い  てある。私は天を仰いだ。
 
 急いで1MBのSIMMを追加で2枚買う。当時この1MBのSIMMは1個45,000円ほど  した(1GBではない)。つまり9万円の予定外出費だが、動いてくれないのでは  どうにもならない。(ちなみに当時の私の月給は18万円くらい ^^;;)

 そしてそれを差して電源を入れる。今度こそ。
 
 起動しない。
 
 なぜ?  
 半日ほど悩んだ末、自分のメモリーの差し方が弱すぎたのではないかと判断  した。そこでもっと力を込めて押し込むことにした。
 
 その時であった。
 
 小さく「ポキッ」という音がした。
 
 なんとメモリースロットの、ICを押さえるプラスチックの板が折れてしまっ  たのである。壊れた?  
 青くなった瞬間であった。
 
 しかし冷静に考えてみるとこの板は押さえているだけ。とにかく金属部分さえ  しっかり接触していれば、板は別になくたって構わないはず。

 そこで折れたのは忘れることにして(^^; 更に強くメモリーを押し込む。
 今度は何かグググっと入っていく感触があった。

 電源を入れる。

 起動した!! 思わず自分で拍手をしてしまった。

 (しかし今度メモリーを増やしたくなった時はどうしよう)

 そのことは考えないことにした。そして実際、このマシンはその後10年間  にわたって、わずか5MBのメモリーで頑張って動いてくれたのである。こ  のマシンでは「原則としてLC-II以上のマシンで」と書かれているソフトも  頑張って動いてくれていた。すさまじく遅い動きではあったが。

(II-cxはまだマシな方である。史上最高に中を扱いたくなかったマシン  はQuadraである。そのうちこの話も書くかも)

消した?  これはそろそろ時効でしょう。このクライアントとも縁が切れてから10年  以上たちますし。

 その日、私はオフコンのソフトウェアのグレードアップの作業に赴くこと  になっていた。別件の緊急呼び出しがあったため、準備作業だけ別の人に  やってもらうことにし、3年くらいの経験のある中堅のSEに作業手順書  を渡して、先に行ってもらった。

 緊急の用件を片づけてからそちらへ行った時、彼女の様子がおかしい。
 何かあったなと思ったので、ちょっと事務所から外に連れ出してから聞い  てみると「誤って伝票データを消してしまいました」という。

 伝票データのファイル形式を変換する必要があったため、元の伝票データ  を入力側、新しくアロケーションしたファイルを出力側に指定して変換処  理を行ない、変換内容を確認した上で元のデータを削除し、その上で新し  いファイルをRENAMEして元の名前に戻す、というのが作業の流れである。

 ところが一方を削除して一方をRENAMEするはずが、その時何を思ったのか  誤って両方消してしまったというのである。
 
 私の指示書の書き方が少し雑すぎたのかも知れないが、これは確かに困った。
 
 伝票のデータは数万件ある。この客先の場合日常的なデータのバックアッ  プ作業をしてくれている確率はひじょうに低かった。
 
 さすがの私も青くなった瞬間である。
 
 しかしオフコンはMSDOSなどのアスキー形式のファイルシステムとは違って  ディスクの連続領域を「アロケーション」して使用する固定長方式のファ  イルシステムを使っている。私は復旧できるはずだと思った。(MSDOSパソ  コンのように自動拡張もできたが、うちの会社のシステムでは使用しない  方針で組んでいた)

 その頃まで私は多機能パソコンN5200のシステムを多く手がけていてオフ  コンの経験は浅かったので、何を使って復旧すればいいのか皆目見当が  付かなかったが、まずはハードディスクの空き領域のマップを出してみる  と、ちょうど蒸発してしまった伝票ファイルのサイズと同じ大きさの空隙  があった。

 ここにファイルがあったんだ。私は確信してその場所に手動で領域を指定  してファイルをアロケートする。そしてEOD(End of Data)の値を強引に  最大サイズ(つまり領域の最後)に設定した。
 
 するとN5200の場合はノーチェックでEODを変更させてくれるのだがオフコ  ンの場合はほんとうにデータがあるかどうかをチェックしているようであ  った。かなりの時間待たされたが、そのうち「この領域にはデータが無い。
 本当にEODをセットしていいのか?」とマシンが聞いて来た。
 
 私はここがデータの終わりだと判断してそこで処理を止めた。
 
 そうやって「復旧」されたデータを検査してみると、本来あったはずの件  数より若干多い。内容を検討してみると、既に処理が終わっていたり誤入力  などで論理的に削除されたデータがまじっていることが分かった。そこで  ファイルの複写ソフトを使用して、複写条件で削除フラグの付いていない  データのみと指定して、別ファイルにコピーする。件数が本来あったはずの  件数と一致した。

 約20分ほど、緊張の時間であった。


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