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論理回路とIC
論理演算と四則
論理学(logic)はギリシャ哲学の時代から様々な人々によって考察が行わ
れて来ました。その考え方はGeorge Boole(1815-1864),Augustus DeMorgan
(1806-1871)らによって整備され、一般にBertrand Russel(1872-1970)と
Alfred Whitehead(1861-1947)のPrincipia Mathematica(1910)で大成さ
れたとされています。
その中身は具体的な事象に関する論理を扱う「命題論理」と抽象的な概念
まで取り扱う「述語論理」に別れます。このうちコンピュータに直接結び
つくのは「命題論理」の方で、これは古典論理の元では、0と1という2個の
要素のみを持つBoole代数に還元されます。これは真と偽しか存在しない
という、まさに神の世界の論理です。
このBoole代数には下記のような演算が定義できます。
a b a and b a or b a xor b not a a nand b a nor b
0 0 0 0 0 1 1 1
0 1 0 1 1 1 1 0
1 0 0 1 1 0 1 0
1 1 1 1 0 0 0 0
ここで a と b に対して、a and b と、a xor b を並べると次のようにな
ります。
a b a and b a xor b
0 0 0 0
0 1 0 1
1 0 0 1
1 1 1 0
これは実は a + b になっています。つまり、andを実行する回路とxorを
実行する回路を作ることができれば、足し算を実行する回路が作れること
になります。しかし実は、全ての回路を nand 回路から作り上げること
ができます。これを指摘したのはシェーファーという人です。(シェー
ファーはこれをストロークと呼びましたが、現代ではnandの名前で統一
されています)
not a = (a nand a)
a and b = not (a nand b)
a or b = (not a) nand (not b) [DeMorganの法則!]
a nor b = not (a or b)
a xor b = (a or b) and (a nand b)
つまりnand回路が作れれば全ての論理回路を作ることができ、論理回路か
ら上記のようにして and と xor の組み合わせで足し算の回路が作れます。
足し算とnot回路があれば実は引き算の回路を作ることができ、足し算の
繰り返しで掛け算、引き算の繰り返しで割り算が実現できるので、これで
全ての演算ができるようになります。
ICの作り方
さて、現代のコンピュータを支えているのは半導体の技術です。 半導体というのは、銅のような導体と陶磁器のような不導体の中間に位置 するもので、電気をやや通します。 現在多く使われている半導体はシリコン(Si)に微量にアルミニウム(Al)や 燐(P)を混ぜたものです。この作り方は、混ぜるアルミニウムや燐の量を 加減することで、電流がよく流れるものからあまり流れないものまで色々 なレベルの半導体を作ることができます。これが半導体を使う利点です。 この半導体にはN型とP型という二種類が存在します。ここでP型とN型 を並べると「ダイオード」が作れます。そしてP型−N型−P型、或いは N型−P型−N型の順に並べると「トランジスタ」が作れます。(とても 大雑把なことを言っています) 先日述べた論理回路はこのトランジスタやダイオードをうまく配列するこ とによって作ることができます。 IC(集積回路)というのは、シリコンの板の上にアルミニウムや燐など を塗り付け、その上に多数のトランジスタやダイオードを作り付けてしま うというものです。最初から単品のトランジスタやダイオードを1個ずつ 作って配置するより工程が単純化されますし、ミスも少なくなります。 この過程は、シリコンを紙、アルミニウムや燐などをインクに置きかえれ ば、印刷と同じです。つまりICを製造する技術というの精度の高い印刷 技術と共通するものがあり、この為、その関係の技術の高い日本でICの 製造は先行しました。 (初期の頃はこの「印刷」の原版作成を日本で陶磁器の絵付けの経験のあ る、手先の器用な女性の手に頼っていた。今はむろん人間の手に負えない ような細かい配置になっているので機械で原版を作る。むろん機械で原版 を作れるようになったのは、IC技術のおかげでコンピュータが発達した からである) (更に関係ない話まですれば、液晶ディスプレイが普及し始めた頃、どこ かのメーカーが鹿児島に液晶ディスプレイの工場を建てた。それは鹿児島 でイカがたくさん獲れて、当時は液晶の原料はイカのスミだった為である。 現在は液晶は化学的に合成されているので、イカの産地でなくてもよくな っている) (更に更に関係話をすると、少なくとも10年くらい前までは日本のロケッ トのハンダ付けは手作業であったとか。それは機械では手に負えないよう な微妙なハンダの付け方をする必要があったからで、機械で精度が出なく ても手作業だと100回に1回くらい、偶然ものすごくうまく行くことがあり、 ロケットの場合費用をあまり気にしなくていいので、そういう方法で品質 のいいシステムを構築していたのだとか....今もそうだったりして??)
電流の流れないトランジスタ
私が中学生の頃に授業で習ったトランジスタは P-N-P, あるいは N-P-Nの 真ん中に挟まった「ベース」と呼ばれる部分が非常に薄いものでした。こ れは現在バイポーラ型と呼ばれているものです。 これに対して現在のコンピュータで主力になっているのはFET(電界効果 トランジスタ)と呼ばれるもので、中間の層(チャンネル)は薄くありません。 薄くないので、ここには電流は流れない!!のですが、このチャンネルに沿 って、金属(導体)と酸化膜(絶縁体)の薄膜を張ると、電圧に反応する素子 ができます。これを金属(Metal)と酸化膜(Oxide)と半導体(Semiconductor) が並んでいるというので、一般にMOSと呼んでいます。 MOSは電流が(ほとんど)流れないため、熱を(あまり)発生しません。その ため、バイポーラ型よりもICの集積度を上げることができることから、 主流の座を勝ち取りました。バベジの「動くコンピュータ」からENIACと いう「動かず電気だけが流れる」コンピュータに発展した歴史が、更に 「電気も流れない」コンピュータへと発展してきたことになります。 MOSは、チャンネルがN型半導体なのかP型半導体なのかによりN型とP型に 分けられますが、実は現在主流になっているのはC型というNとPを有機的 に結合させた面白いトランジスタです。これは絵で説明しないと分かりづ らいので、詳しい説明は省略させてもらいますが、CMOSによって集積度は 更に上がり、消費電力も更に小さくなります。