羅城門とは、京の都の南端(現在の東寺の近く)にあった門ですが、平安時代初期の頃から、いろいろ怪異談があったようで、ここで鬼に遭遇した人も多数あったようです。
渡辺綱
茨木童子の所でも書いたように、羅城門で渡辺綱が鬼に遭遇した話もあります。
それによると、源頼光が四天王の渡辺綱・坂田金時・碓井貞光・卜部季武と飲んでいた時、近頃羅城門に出没する鬼の話になりました。
一杯入っている故に、みな大胆になっています。そこで一人ずつ羅城門へ行って肝試しをしよう、ということになりました。
一人ずつ行ってきて、渡辺綱の番になった時、羅城門に行って証拠の札を立て、帰ろうとした時のことです。
綱はふいに兜を何者かにつかまれました。身の危険を感じた綱は刀を抜き、斬り掛かります。相手は逃げていきましたが、兜をつかんだままの鬼の腕が残されました。
源博雅
これは岡野玲子「陰陽師」1巻に出てきた話ですが、元々は今昔物語巻24の第24に書かれている物語です。
村上天皇の時代に天皇が大事にしていた玄象という琵琶が何者かに盗まれてしまいました。
数日後、清涼殿で天皇の甥の源博雅がその玄象のことを考えていた時、どこからともなく、その玄象の音が響いてきました。
博雅は驚き、着替えもせずに、供の小童一人を連れて、音のする方向へ行ってみると朱雀門を過ぎ、都の大路をどんどん南下。とうとう羅城門まで来てしまいました。音はその羅城門の二階からしていました。
その音はとても人が弾いているものとは思えませんでした。博雅は楽曲が終わるまで待ってから、音のする所へ向かって言いました。
「その琵琶を弾いているのはどなたですか? それは先日天皇の元から消えたものです。本日清涼殿におりましたら、この音を聞き、尋ねてここまで参りました」
すると上からするすると縄に結ばれた玄象が降ろされてきました。
博雅はそれを受け取って、内裏へ持ち帰りました。
人々は、鬼が取っていった玄象を博雅朝臣が取り戻したといってその働きを讃えました。
この玄象という琵琶はまるで生きているかのようだったとのことです。塵がついていたりすると腹を立てたように鳴らなかったりしたそうです。またある時は内裏で火事があった時、誰も取り出していないのに、いつのまにか庭に出ていたりしたということです。