蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)は七十二候のひとつ(啓蟄初候)で、現在行われている「定気」法では、太陽の視黄経が345度になった時を言います。毎年だいたい3月4日〜3月7日頃に来て、その後約5日間がこの候の時期となります。
宣明暦では「桃始華」、貞享暦では「蟄虫啓戸」、宝暦暦・寛政暦では「蟄虫啓戸」、略本暦では「蟄虫啓戸」と記載されています。
なお、これは初候ですので、啓蟄と同じ日時になります。
前の七十二候は草木萠動、次の七十二候は桃始笑です。
二十四節気でも啓蟄(けいちつ)ですが、七十二候でも蟄虫啓戸。土の中に籠もっていた虫が戸を開けて外に出ようかな?と伺う様です。「蟄」は巣籠もりしているという意味。「蟄居」ということばもありますね。江戸時代だと謹慎処分ですが、元々は家の中に籠もっているということです。秋分次候の蟄虫坏戸と対になっています。
易経の繋辞にこのような文章があります。
日行きて月来たり、月行きて日来たり。日月相推して明を生じるなり。寒行きて暑来たり、暑行きて寒来たり。寒暑相推して歳を成すなり。行くとは屈するなり、来るとは信ぶなり。屈信相感じて利を生じるなり。尺蠖(せきかく:尺取り虫)の屈するは信ぶを求むるなり。龍蛇の蟄するは身を存するなり。義を精して神に入るは用を致すなり。用を利し身を案ずるは徳を崇くするなり。過ぎて此を行くは未だ之を知ることあらず。神を窮め化を知るは徳の盛りなり。
易経の思想な根幹を説いた文章です。万物は流転し、流転する故に発展していきます。太陽が沈み月が昇る。月が沈み太陽が昇る。今は寒くてもやがて暖かくなる。今は暑くて辛くてもやがて涼しくなる。今は功利的に生きていても、それが徳を高める道につながる。今は信仰に生きていても、やがて俗世で活動するようになる。龍や蛇が地中に籠もっているのも、やがて活動するためである。そして啓蟄。その籠もっていた者が動き出します。
今蟄居・雌伏している人も、そろそろ活動を始めましょう。
二十四 節気 | |
雑節 | |
五節句 | |
七十二候 | 初春 東風解凍 黄鶯見完 魚上氷 土脈潤起 霞始靆 草木萠動 仲春 蟄虫啓戸 桃始笑 菜虫化蝶 雀始巣 桜始開 雷乃発声 晩春 玄鳥至 鴻雁北 虹始見 葭始生 霜止出苗 牡丹華 初夏 蛙始鳴 蚯蚓出 竹笋生 蚕起食桑 紅花栄 麦秋至 仲夏 螳螂生 腐草為蛍 梅子黄 乃東枯 菖蒲華 半夏生 晩夏 温風至 蓮始開 鷹乃学習 桐始結花 土潤溽暑 大雨時行 初秋 涼風至 寒蝉鳴 蒙霧升降 綿柎開 天地始粛 禾乃登 仲秋 草露白 鶺鴒鳴 玄鳥去 雷乃収声 蟄虫坏戸 水始涸 晩秋 鴻雁来 菊花開 蟋蟀在戸 霜始降 霎時施 楓蔦黄 初冬 山茶始開 地始凍 金盞香 虹蔵不見 朔風払葉 橘始黄 仲冬 閉塞成冬 熊蟄穴 鮭魚群 乃東生 麋角解 雪下出麦 晩冬 芹乃栄 水泉動 雉始鳴 款冬華 水沢腹堅 鶏始乳 |