初期の作品の代表は「空騒ぎ」・「じゃじゃ馬ならし」辺りでしょうが、その路線上でひとつの完成を見るのが「真夏の夜の夢」と「お気に召すまま」でしょう。そして彼は一転して悲劇を書き始めます。単に面白おかしいだけではいけない、そう思ったのでしょうか。
「ロミオとジュリエット」をはじめ四大悲劇の「ハムレット」「リア王」・「マクベス」・「オセロ」。また数々の歴史劇も書き、彼は深刻な世界を表現します。
しかしその緊張はやがて開放されます。そしてこの「冬物語」や最後の作品「テンペスト」で、魂の救いが表現されるのです。
そしてハーマイオニの言葉で、ポリクサニーズが逗留を伸ばすことを約束してくれた時、突然レオンティーズの心の中に妻とポリクサニーズの仲を疑う心が芽生えたのです。
王は部下のカミロにポリクサニーズを殺害しハーマイオニを捕らえるよう命じますが、王の言葉の狂気を感じた彼はポリクサニーズを国外に脱出させます。
ハーマイオニは獄中で女児を出産しますが、王はそれはポリクサニーズの子に違いないといい、部下のアンティゴナスに捨てて来るよう命じ、ハーマイオニを裁判に掛けます。
裁判において王は一方的にハーマイオニを糾弾しますが、そこへアポロン宮殿からの神託が到着。ハーマイオニは無罪であると告げます。嘘だと叫んで裁判を続けようとする王の所へ、この事件に心を痛めていた最愛の王子マミリアスが心配のあまり亡くなったという知らせが入り、王は呆然とします。
それと共に王妃はその知らせのショックで失神、やがて侍女ポーライナにより彼女の死が知らされた時、突然王の心の中でハーマイオニへの疑いは消えてしまいました。しかしあまりにも遅いことでした。
そして彼の命で女児を捨てに行ったアンティゴナスは熊に襲われて亡くなってしまいます。彼は自分の愚かな嫉妬心の為、妻と二人の子供を永遠に失ってしまったのです。
果して王子は羊飼いの娘パーディタと密会をしておりました。ポリクサニーズは怒って変装をとき、パーディタに、もしこれ以上つきあったりしたら死刑にするぞと宣告して宮に戻ります。
カミロはその場に残って事後処理をしようとしますが、そのカミロに王子は自分は王子の地位を捨て、パーディタとともに駆け落ちしようと思うと告げます。その時あることを思い付いたカミロは、二人にシシリアに行きレオンティーズ王に面会することを勧めます。
一方レオンティーズ王はこの16年間、ずっとポーライナに責められながらも自分のしたことの後悔の念に悩まされ続けていました。そこへかつてその事件で自分が殺そうとしたポリクサニーズの王子フロリゼルが美しい妃を伴って訪ねてきたという知らせが入ります。
前触れもない訪問にレオンティーズは驚きますが、ともかくも面会した上で、あんな仕打をしたのに息子を挨拶によこしてくれるなんて、彼はなんと立派な男だとレオンティーズは感激します。しかしそこへ本当のポリクサニーズからの使者が到着。フロリゼルと妃を捕らえてくれるようにとのこと。
王子はもはやこれまでかと、自分たちは実は駆け落ちしてきたのだということを告白します。落胆しているフロリゼルにふとある事を思い付いたレオンティーズは、自分がポリクサニーズと掛け合ってみようと言い出します。
その頃、カミロは羊飼いが持っていた包みを発見します。開けてみるとその中にはカミロやレオンティーズが、ふと思い付いたことを裏付けるものが入っていました。思い付いたこと、それはパーディタがあまりにもハーマイオニに似ていたということです。
包みの中から出て来たものは、ハーマイオニのマント、アンティゴナスの手紙、ハーマイオニが付けていた宝石、....事情を聞くと、アンティゴナスが熊に襲われたとき、抱えていた女児が羊飼いに託されたということだったのです。
パーディタは実はレオンティーズとハーマイオニの、死んだと思われていた娘でした。レオンティーズ、カミロ、ポリクサニーズ、そして当のパーディタとフロリゼルも驚くべき展開に感激と涙の嵐となります。
むろんパーディタはレオンティーズ王の王女として、ポリクサニーズ王の王子と正式に婚約、喜びあふれる一同はポーライナが作らせたというハーマイオニの像の前で食事をして、今までのこと、これからのことを語ろうということになります。
そして大団円へ。
ポーライナが作らせた像はわざわざ名人をイタリアから呼んで作らせたというだけあって、とてもよく出来た美しいものでした。
王はハーマイオニの像の前にひざまずき、王妃に許しを乞います。パーディタも初めて見る実の母の姿に、王への許しと自分たちへの祝福を乞うて像の手にキスしようとしますが、ポーライナに、まだ絵の具が乾き切ってないからと、止められます。
王の言葉は続き、自分の後悔の念とともに、王妃への変わらぬ愛を告白します。そして、笑われるかも知れないが自分はこの像に口付けするといいます。今度はポーライナも止めません。代りに楽人たちに音楽を命じます。
ハーマイオニは微笑んで台から降り、自分から王を抱擁します。
その夜の食卓はこの上ない喜びに満ちたものとなったことでしょう。