織姫と牽牛の物語

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織女は天帝の娘で雲錦という美しい織物を織る名手でした。しかしあまりに仕事熱心で年頃になってもボーイフレンドも作らずに仕事ばかりしていたため、可哀想に思った父帝は、天の川の向こうに住む牽牛という若者と結婚させました。

ところが結婚すると織女は新しい生活に夢中になってしまい、全く織物を織らなくなったのです。そこで怒った天帝は織女をこちらの岸に連れ戻し、1年に1度、7月7日の晩だけ向こう岸に行ってよいことにしました。

7月7日の晩、空が晴れると白鳥たちが天の川にたくさん舞い降りて自分たちの翼で橋を架けてくれます。すると織り姫はその白鳥たちの橋を渡って牽牛に会いに行くのです。

しかしその晩に雨が降って川を渡ることができないと、その年はもう会えず、翌年を待たなければなりません。ですから皆さんも7月7日の晩は雨が降らないようにお祈りしてあげましょう。


これは中国古代の伝説ですが、夏の空を見上げると織姫・牽牛の星が天の川の両側にその伝説通りに並んでいます。織女の星はベガ(織姫星・琴座α星・落ちる鷲の意)、牽牛の星はアルタイル(彦星・鷲座α星・飛ぶ鷲の意)。これに白鳥座α星のデネブを加えると、夏の大三角形ができます。デネブは天の川のど真ん中にあり、二人の恋のメッセンジャーを務めてくれます。天帝の星はやはり古代中国の北極星コカブ(小熊座β星)でしょうか。

ところでベガという星は秒速19キロほどの速度で地球のある太陽系にどんどん近づいています。現在太陽系とベガの距離は26光年ほどですが、30万年後にはかなり至近距離まで来る計算になり、その時は現在の金星ほどの明るさに輝いているかも知れません。


ところで7月7日は『七夕』と書いて『たなばた』と読みます。しかし本来は『七夕』はやはり文字通り『しちせき』と読むべきで、『たなばた』は『棚機』でしょう。『しちせき』は五節句(人日-1.7, 上巳-3.3, 端午-5.5, 七夕-7.7, 重陽-9.9)のひとつで、中国伝来のお祭りです。これが日本古来の「けがれ」を祓う習俗と合体して日本の「たなばた」が生まれたと言われます。「たなばた」という言葉の起源について秋山一氏は日本古代の神・天棚機姫神ではないかと述べています。

星祭としての七夕は江戸時代に寺小屋が普及し、庶民が中国の風習を知るようになってからのことであるとされます。前日の夕方に竹売りから笹や竹を買い、和歌などを書いた色紙や短冊をつけて奇麗に掃き清めた庭先に立て「かや」や「ちがや」の葉を敷いた上に瓜・茄子などを添えて、容器に水を張って、水に映った星を見て愛でる、というものであったということです。そこに映る星はやはり一等明るいヴェガ・アルタイル・デネブであったことでしょう。

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