11月20日は「ピザの日」です。これを定めたのは意外にもトッパン印刷。ピザはイタリアの文化の象徴と考え、これをPRする日として定めたものです。
ピザの日に11月20日が選ばれたのは、イタリアの代表的なピザのひとつである「ピッツァ・マルゲリータ(Pizza Margherita)」の名前の元になったイタリア王妃Margherita di Savoia(1851-1926)の誕生日が11月20日だからです。
マルゲリータはジェノヴァ公フェルディナンドの娘ですが、当時のイタリアはまだ統一前の激動の時期。父が4歳の時に亡くなってからは、かなり厳しい生活をしていたようです。勧められていた別の王族との結婚を蹴って従兄のウンベルト(Umberto,1844-1900)と結婚し、やがてそのウンベルトが統一イタリア第2代の国王になりました。
1889年にマルゲリータがナポリを訪れた時に、ピザが食べたいと所望しました。するとナポリのピザ職人Don Raffaele Espositoがイタリアの国旗をモチーフにして、緑のバジル、白のモッツァレラチーズ、赤いトマトで飾ったピザを作りました。これが「マルゲリータのピザ」と呼ばれて定着したのです。
昨年、イタリアはピザの伝統が失われないようにと農業省がピザの作り方のガイドラインを発表しましたが、そこで定められたのが、マルゲリータ、エクストラ・マルゲリータ、マリナーラ(Marinara)の3種類だそうです。
ピザ的な食べ物はかなり昔からあり、ギリシャ時代にもプランクントスと呼ばれる、パンの上に色々なトッピングをしたものがありました。ピザの重要な食材であるトマトとモッツァレラチーズは、16世紀から18世紀に掛けてイタリアに入ってきたようです。そして1830年にナポリでAntica Pizzeria Port' Albaというピザ屋さんがオープンしています。しかし現代のピザの原型となったのは、やはり1889年のピッツァ・マルゲリータであるとされています。
その直後の1895年、イタリアからアメリカに渡ったGennaro Lombardiがニューヨークでピザ屋さんをオープンさせていますが、当初はそれほど話題にはなりませんでした。しばしば食べ物を普及させるのは戦争です。第二次世界大戦でイタリア戦線に行ったアメリカ兵たちが現地で食べたピザの味が忘れられず、帰国してからピザ屋さんに良く行くようになります。そのためアメリカでは戦後急速にピザが普及し、1954年にSherwood JohnsonがShakey's を創始、1958年にはFrank & Dan Carney兄弟がPizza Hutを創始しました。
今日日本でピザといえば宅配ピザが全盛ですが、こういうシステムを考えたのはアメリカのミシガン州で1960年にピザショップDomiNickを始めたTom & JamesMonaghan兄弟です。彼らは強力なオーブンを使って短時間でピザを焼き上げ、「注文を受けてから30分以内に届ける。遅れたら50セント引き」というシステムを作り上げました。これが現在の「Domino's Pizza」の始まりです。ドミノピザは1985年には日本にも上陸。ドミノは日本の都会の劣悪な交通環境の中で「30分以内」というのを厳守するために、バイクメーカーに協力を求めて、宅配用スクーターの開発もおこない、以降このシステムを真似た宅配ピザの店が全国にまたたく間に広がることとなります。たださすがに最近は本家以外は「30分以内」は返上してしまったところが多いようです。
イタリアの伝統的なピザは35cmサイズですが、アメリカでは40cmサイズが標準的だそうです。生地の厚さもイタリア方式は3mmが標準ですが、アメリカではこういう薄い生地はニューヨークスタイルといい、もっと厚い生地を使用するシカゴスタイルと人気を二分します。
本来ピザの生地は小麦粉を塩・食用油・イースト菌などと一緒に練り発酵させた上で団子状にまとめたものを指の上で回転させて円形に広げていきます。
これを英語ではフライング・ピザ法(Flying Pizza Pattern)といい、柔らかい生地を作るのに最適の方法とされます。私たち素人はそこまでできないので台の上で棒やてのひらで伸ばしていくまでがせいぜいですが、外食産業などでも、フライング製法を採用しているところはそう多くないようです。